すっかり春ですね。春といえば新緑の季節ということで、イタリアンやフレンチで修業をしたシェフから教わった、春らしい野菜を使ったパスタソースの作り方を紹介します。
クタクタに煮込む菜の花のパスタソースに驚いた
私の目から鱗が落ちまくったレシピを教示してくれたのは、五反田で「kitchen g3」のオーナーシェフをしている、ぐっさんこと山口さん。教わったのは2年前なのですが、読者の方に「今まで隠していてすみませんでした!」と謝りたくなるソースです。
こちらが山口さん。
この記事で使った野菜は、菜の花、ブロッコリー、キャベツ、かき菜。全部アブラナ科ですね。春だなあ。
こういった野菜を使ってパスタを仕上げる場合、オリーブオイルでベーコン、ニンニク、野菜を炒めて、茹でた麺を絡める方法しか知らなかったのですが、山口さんに教わった料理方法は、これとは全く違う方向性でした。
私が作ったコゴミのパスタ。このコゴミが別の野菜になるだけで、こういうタイプしか作りませんでした。これはこれで簡単だし美味しいのですが、料理の引き出しは多いに越したことはありません。
山口さんに作っていただいたのは、菜の花のパスタソース。
味と香りの強いオリーブオイルではなく、サラダオイル(キャノーラ油)をフライパンに引いて、洗った菜の花を切らずにそのまま、うっすら焦げ目がつく程度まで炒めます。
ここから先の展開に驚きました。
ここに茹でたパスタを入れるのではなく、なんと水をヒタヒタになるまでドバドバと入れて煮込みます。
この驚きの展開に、一緒に教わっていた全員の頭の上に大きめのビックリマーク(!)がはっきりと浮かびました。
えっ!
このまま中火程度で煮込み続けるのですが、その時間はなんと30分。3分じゃないんです。水が無くなってきたら都度足してください。
歯ごたえが命の菜の花を30分も煮てしまうなんて、なにかの法律に触れやしないかと心配になってきますよね。
当たり前のように菜の花を30分も煮る山口さん。みんなが不安そうに見守っています。
30分も煮た菜の花はどうなったかというと、デロデロに溶けていました。そりゃそうですよね。でもこれでいいんだそうです。
離乳食ですか?
ここにバターをドーンと加え、塩少々で薄味に仕上げたらソースは完成です。
使った材料は、菜の花、サラダオイル、水、バター、塩だけ。それなのに味の想像ができません。
バターはドサッと。
パスタはフェットチーネやタリアテッレなどの幅広タイプが合うようです。薄味のソースと合わせたときにちょうどよくなるように、塩分濃度3%と塩が強めの熱湯で茹でて、ソースと合わせたら完成です。
「菜の花のパスタです」ってこれが出てきたら驚きますよね。
山口 「素朴だけど、お金のとれるソースです。料理の最終形を想像してパーツの塩分をコントロールするので、ソースだけで味見すると物足りないかも。
今日は菜の花を使いましたが、キャベツ、ブロッコリーなど、野菜はなんでもいい。クタクタに煮込んで味を水分に溶かすことで、焼いただけだと出ない味を引き出せる。ミキサーで混ぜれば早いけど、人間の舌って全体が均一だと飽きてしまうので、繊維が残っていたりドロドロだったり、わざとムラを作っている。一口ごとに味が違うから、最後まで美味しく食べられます」
菜の花は歯ごたえを残してこその食材だと思い込んでいましたが、これを食べて自分の経験不足を思い知らされました。クタクタの中にある複雑な食感が食べ飽きさせません。まるで苦くないフキノトウでも食べているかのような、香りと味の濃さがすごい。
ソースは鮮やかな味だけど塩分は控えめ。だからこそ塩気のある麺と合います。こんなパスタの世界があったとは。あとで調べたらイタリアにプーリア風パスタというブロッコリーなどをクタクタに煮るパスタがあり、それをさらにシンプルにしたようなレシピでした。
山口 「旨味の要素を足してないけど、菜の花本来の味だけで満足できるはず。旨味を追いすぎると旨味ジャンキーになって、味がわからなくなってくる。オリーブオイルを入れたほうが美味しいけれど、菜の花の味が弱くなってしまう。コクや粘度を足したいときは、太白胡麻油を使ってください。お店の料理っぽくするなら、仕上げにチーズやカラスミを削って掛けてもいいですね」
市販のパスタでもちろん大丈夫ですが、手間を掛けるのが好きな方は是非パスタ作りにも挑戦してみてください。こちらの記事に山口さんから教わった粉と卵だけで打つ生パスタのレシピが載っています。
習ったパスタソースを自分で作ってみよう!
山口さんの店はビストロなので、この美味しいパスタは残念ながら提供していません。
ということで、教わったソースを自分で作ってみました。
山口さんの料理は本当に美味しいので、パスタはがんばって自分で作って、他の料理を食べに行きましょう。
まず生パスタを打ちます。乾麺でもいいのですがせっかくなので。生地の分量はデュラムセモリナ粉300g+強力粉450gを全卵(Mサイズ)5個+卵黄6個にしました。
麺打ちは気軽に達成感が味わえて好きです。
家庭菜園からブロッコリー、春キャベツ、かき菜を収穫してきます。買ってくればいいのですがせっかくなので。というかアブラナ科の野菜が大量に採れる時期なので。
野菜それぞれの味を楽しむために、混ぜずに別々で調理しましょうか。
作ってみてわかったのですが、炒めて混ぜるタイプに比べて、野菜の量が3倍くらい必要になります。シンプルだけど贅沢な料理ですね。
ブロッコリーは本体を収穫した後に出てくる脇芽を使いました。
クタクタなブロッコリーのパスタ
まずはブロッコリーから炒めて、水を加えて、30分煮込んで、バターと塩で味付けしました。
茹ですぎるとおいしくない野菜の代表格と思っていたブロッコリーですが、クタクタに煮込んだソースがこんなにうまいなんて。ちょっと水分を飛ばし過ぎたけど。
クタクタな春キャベツのパスタ
続いては春キャベツを炒めて、水を加えて、30分煮込んで、バターと塩で味付けしました。
ロールキャベツのキャベツ部分が大好きなのですが、あのクタクタを好む人には最高のパスタです。キャベツソースが麺を優しく包み込みます。ちょっとバターを入れすぎたけど。
クタクタなかき菜のパスタ
最後はかき菜を炒めて、水を加えて、30分煮込んで、バターと塩で味付けしました。
茎の部分が硬いかなと思ったかき菜ですが、しっかり煮込んだことで原型を残しつつもパスタと絡む柔らかさになっています。ほのかな苦味が春らしく、自分が作った中だとこれが一番うまくできたかも。ちょっと塩分が足りなかったけど。
3種類のソースを連続で作ったので、私もクタクタになりました。まだまだソースの水分、塩分、バターの量の加減は身についていませんが、素人なりにおいしくできたと思います。
アブラナ科の野菜だけでなく、ナス、ズッキーニ、ピーマン、ジャガイモ、ソラマメなどの野菜でも試してみたいですね。野菜をブレンドするのも楽しそうです。味が全く想像できないところが魅力的。
ところで山口さんのレシピを見返してようやく気が付いたのですが、このタイプのソースは皿の上で掛けるのではなく、フライパンで和えるのが正解でした。次回は気をつけたいと思います!
余ったソースはパンに塗っても美味しいよ。
レシピを教わった山口さんのお店
著者プロフィール
Source: ぐるなび みんなのごはん
飽きない食感と持ち味の濃さ!「野菜を30分煮込むクタクタのパスタソース」の作り方