こんにちは。データライブラリ編集部です。本編集部では、ぐるなびのデータサービス「ぐるなびデータライブラリ」のデータを元に、トレンド予想やメニューの分析を行っております。
7月に入り、徐々に暑くなってきました。筆者は季節問わず辛い料理を好んでよく食べていますが、中でも夏は、辛さと酸味を兼ね備えたタイ料理が無性に食べたくなります。
ガパオ、グリーンカレー、パッタイにカオマンガイ。タイ料理は気づけばだいぶメジャーになり、だいぶ日本での市民権を得ているような気がします。一昔前は専門店に行かないと食べられなかった記憶がありますが、コンビニやスーパーでも買えるようになり、一部メニューはだいぶ定着しているといえます。
そこで今回は、こうしたタイ料理人気を裏付けるデータと、この夏チェックしておきたいタイ料理をデータの観点から考察、ご紹介したいと思います!
検索は1.7倍に!みんなタイ料理が気になっている
まずは「タイ料理」というワードの検索指数(※)を確認してみましょう。2019年5月~2021年5月の2年間のデータです。
※検索指数→特定期間に検索100,000回あたり何回検索されたかという指標:どれくらい検索されているか
冬のタイミングで少々下降しつつも、緩やかに上昇を続け、2021年に入ってからは急激な上昇を見せています。
2021年は年が明けすぐに東京都などの一部都道府県に緊急事態宣言が出され、またしてもおうち時間が長くなり海外旅行がまた遠のいてしまったことから、タイ料理を検索する人が多かった、というのも要因の一つと考えます。
このように、検索データで見てもタイ料理への関心がここ1年でまた高まってきていることがわかります。
圧倒的存在感!TOP20のうち8メニューがタイ料理だった
タイ料理以外にも、美味しいエスニック料理は各国に色々ありますが、その中でのタイ料理の位置づけを確認しておきましょう。
エスニック料理のメニュー取り扱い指数(※)を2020年5月と2021年5月のデータで比較し、昨対比で見たときに増加率が高い順に集計してみました。こちらがランキングTOP20です。
※取扱指数→特定時点で1,000店舗あたり何店舗存在するかという指標:どれくらい飲食店で取り扱われているか
ランキングの中で赤文字がタイ料理です。ご覧のとおり、様々な国の魅力的なメニューがランクインしていますが、なんと20メニューのうち8メニューがタイ料理なのです!
1位は、タイ料理の定番メニューであるガパオライス。こちらについては、「ガパオライス」以外にも「バジル炒め」「ガパオ」など表記を変えて3つもランクインしています。また、同じく定番メニューであるグリーンカレーは、タイ語名である「ゲーン・キアオ・ワーン・ガイ」という表記が2位となっています。
その他にも、「ムーガタ」(※後ほど詳しく解説します!)「カノンモーケン」「トートマンクン」など、タイ料理に精通している人でないとどんな料理か即座にイメージできないようなメニューもランクインしており、タイ料理がより深く日本に浸透しようとしていることが伺えます。
ド定番のガパオとグリーンカレーが再注目されている理由
昨対比ランキングで1・2位を飾った、ガパオとグリーンカレー。タイ料理をよく食べる方からしたら超定番料理かと思いますすが、なぜ今再注目されているのか、その背景について考察したいと思います。
まずガパオについて考えてみましょう。大きな理由としてコロナ禍で需要の増えたテイクアウトやデリバリーに取り入れやすいメニューだということです。具体的には、冷めても美味しい、崩れたりこぼれたりしにくいので運搬がしやすい、丼スタイルの一品料理なので手軽に食べられるなどの点が挙げられ、デリバリーのガパオ専門店も登場しています。
またガパオはタイ料理の中では定番であり、比較的日本人の味覚にも合う料理で、タイ料理好きには定期的に食べたくなる超定番メニューとして、エスニックをあまり食べない人にとってはほどよい冒険感がありつつも名前が浸透しているので安心できるという、多くの人にとってちょうどいい存在なのではないかと考えます。実際に「タイ料理でガパオが一番好き!」という方、筆者の周りにも結構いらっしゃいます。
グリーンカレーについても、ガパオと同じようにテイクアウトやデリバリーに取り入れやすいメニューであるという点に加え、スパイスカレーブームの流れからきている各国のカレーへの関心の高まりや、各メーカーからレトルトタイプのものが販売されていることも再注目の背景として考えられます。
また、ご飯に合わせるのではなくそうめんと食べるというアレンジレシピもテレビで紹介され話題となりました。実は本場タイでも「カノムジーン」というそうめんによく似た米麺があり、グリーンカレーと合わせてよく食べられています。細い麺が爽やかな辛さのグリーンカレーとよく絡んで、食欲のないときなどにも食べやすい組合わせです。
ぐるなびが注目しているタイ料理
では、そんな定番のガパオやグリーンカレーのように、今後知名度が上がり、トレンドや定番になりそうなメニューはあるのでしょうか。
「ぐるなびデータライブラリ」では、過去に流行したメニューのデータを多角的に分析し、そのデータと似たような傾向を見せているメニューを検出するという独自のデータ解析ロジックを利用して、今後流行する可能性があるメニューを毎月5つ選出、「トレンド予報」として掲載しています。トレンド予報に掲載している=ぐるなび所有データでの裏付けは取れている、ぐるなびおすすめのメニューということになります!
毎月様々なジャンルのメニューを掲載していますが、その中でタイ料理に該当するメニューをピックアップしました。メニューの特徴やトピック、タイ料理店でのここ2年間の取扱状況を表した取扱指数のデータと一緒にご紹介します。
パッキーマオ
きしめんのような幅広麺を炒めた、焼きそばのようなタイの激辛料理です。
ナンプラー、バジル、唐辛子などで味付けをし、具材は赤ピーマン、青菜、ヤングコーン、ブロッコリーなどが使われます。手作りキットなども各メーカーから販売されていて、一部で話題となっています。
徐々に数値が増え続け、2021年1月に一度下降しているもののすぐ持ち直し、2年間で1.2倍の増加となっています。劇的な増加とは言いづらい上昇率ですが、このあと辛い料理が人気になる夏がやってきますので、まだ伸びしろを秘めているのではないかと予想しています。
パッシーユ
「センヤイ」と呼ばれるきしめん風の太いもちもち麺をしょうゆで炒めたタイの焼きそばです。タイ語で『パット』は“炒める”、『シーユ』は“しょうゆ”を意味します。先ほど紹介したパッキーマオの辛くないバージョンともいえます。
味付けに使用されているしょうゆは、黒醤油といわれるもので、日本のしょうゆと同じ大豆を原料とし、砂糖や香辛料を加えているため、とろみと甘みがあるのが特徴です。本場タイでは、トッピングとして、唐辛子と砂糖を入れて食べます。
こちらも上昇をし続け、2021年5月段階では、グラフ内でのピークである2020年11月の数値より下がってきてしまっていますが、それでも2年間で1.6倍の上昇となっています。
チムチュム鍋
タイ東北部イサーン地方の料理で、「チム」はタレにつける、「チュム」はさっと浸すを意味します。
ナンプラー・レモングラス・コブミカンの葉・ナンキョウなどを素焼きの土鍋に入れて煮込んだスープに、白菜・空心菜・春雨・スイートバジル、豚肉やホルモン・魚介類などの具材をお好みで入れ、にんにくと唐辛子がベースのタレをつけて食べます。
日本ではタイ料理専門店で提供されたり、大手輸入食品店で鍋の素が販売されたりと少しずつ知名度を上げています。
こちらは、期待に反して0.4倍という結果になってしまいました。ただ、鍋という料理の特製のせいか、毎年夏の時期に底辺となり、10月頃に爆上がりする傾向があるので、2021年も同じように10月に爆上がりして、そのまま高止まりする可能性もあるかもしれません。
ムーガタ
タイ東北部イサーン地方を中心に食べられている豚の焼肉のことで、「ムー」は豚肉、「ガタ」は浅い鍋を意味します。
中心部が高くなっている専用の鍋を使って、高い部分で肉を焼き、周囲の深くなっている部分にスープを入れて野菜を煮て食べます。焼肉としゃぶしゃぶをひとつの鍋で同時に楽しめることから人気のメニューで、ここ数年はバンコクでもブームになっています。東京には専門店もあります。
2019年5月から上昇をし続け、2020年12月に急上昇、2年間でなんと3.9倍にもなっています。日本では昨年の緊急事態宣言明けに「外食するなら焼肉に行きたい」という傾向が見られた時期がありました。その流れを受けてか、ムーガタも昨年夏頃からメディアなどで紹介されることも増え、その人気度はデータにも表れていますね。まもなく本格的なブームが来るのではないでしょうか。
イサーン料理を推したい理由
チムチュム鍋とムーガタはイサーン地方の料理とご紹介しましたが、イサーン地方の料理とはどのような特徴があるのでしょうか。
そもそもタイ料理は、大きく分けて4つの郷土料理に分類されます。
- バンコクを中心とした中央タイ料理
- チェンマイなどの北タイ料理
- プーケットなどの南タイ料理
- 東北部イサーン地方のイサーン料理
の4つです。
その中でイサーン料理は、自然のものを食べ尽くすという考えに基づいていて、酸味と辛味を兼ね備えている料理が多いのが特徴です。プラーラーという魚・糠・塩を漬け混んで醗酵させた調味料が多く使われています。タイ料理店でよく見かける、ソムタムやラープ、ガイヤーンも実はイサーン料理なのです。
ではそんなイサーン料理が注目され始めているのは何故なのでしょうか。
日本での海外グルメトレンドは、ある程度定着すると細分化されたり地方料理に注目したりと、よりマニアックな方向に広がっていく傾向が見られます。
例えば、バターチキンカレーに代表されるような北インド系のカレーがすっかり定着するとお米と合わせるシャバシャバした南インド系のカレーが注目されたり、数年前に大ブームになった韓国料理のチーズタッカルビも元々は春川の郷土料理です。
タイ料理の中で日本で馴染みがあるのはトムヤムクンやグリーンカレーなどが属する中央タイ料理が多いですが、ここまで紹介してきたように、タイ料理への日本への浸透度が加速していることから、タイ料理も地方料理などに広がっていくタイミングに来ており、北タイ料理、南タイ料理などと比べ、馴染みのメニューが多いイサーン料理が注目されているのです。
過去のみんなのごはん記事でもいち早くキャッチしているのでご紹介しておきます。
映えスイーツもチェックしておこう!
辛いものを食べたあとに欲しくなる、タイのスイーツやドリンクもチェックしておきましょう。同じように、過去にトレンド予報で紹介したメニューの中から、データを交えてご紹介します。
カオニャオマムアン
ココナッツミルク・砂糖・塩を入れて炊いたもち米にマンゴーを添え、ココナッツミルクをかけて食べるタイの定番スイーツです。タイ語で「カオニャオ」はもち米、「マムアン」はマンゴーを意味します。もち米の食感と塩気、ココナッツミルクの甘み、マンゴーの酸味の組み合わせがクセになると人気です。
日本ではタイ料理専門店では取り扱っているところが多いですが、本場のタイにはもち米をカラフルに着色したポップでフォトジェニックなものもあります。
2019年12月に急上昇した後、そのまま上昇を続け、2年間で1.7倍もの増加となっています。
日本ではお米=主食なので、マンゴーとお米を併せるというと抵抗を感じる方もまだ少ないくないかもしれませんが、このまま上昇を続けたら(=取り扱う店舗が増えたら)、食べてみる機会も増え、日本でも定着する日が来るかもしれませんね。
バタフライピー
青い色のお茶です。タイでは「アンチャン」と呼ばれ、美容や眼精疲労改善が期待できるといわれているマメ科の植物の名称で、日本では英語名の「バタフライピー」という名前で取り扱われ、ハーブティーとして飲まれるのが一般的です。
SNS映え抜群の印象的な天然の青色と、レモン汁などクエン酸を加えると紫色に変化する特性を生かしたグラデーションドリンクが人気で、ここ数年日本ではタピオカなどを扱う台湾茶でも提供されています。タイではバタフライピーを使って炊いた青いごはんを提供しているお店もあります。
上昇と下降を繰り返し、2年間で1,2倍の上昇となりました。バタフライピーはドリンクの原料として使用されていても、「オーロラドリンク」「ブルーハーブティ」などお店によってキャッチーなオリジナル名をつけている場合もあるので、実際はもう少し多いのかもしれません。このグラフだと、2019年・2020年は10~11月頃に上昇しています。2021年に入ってからは緩やかに上昇を続けていますが、この後10月にかけてさらに上昇するかもしれませんね。
まだまだ目が離せないタイ料理!
データとともにいろいろなタイ料理をご紹介させていただきましたが、筆者がこれまで感覚だけで感じていたタイ料理人気に対して、データでの裏付けをすることができました。
今回ご紹介したメニューはもちろんオススメですが、ぐるなびが「ぐるなびデータライブラリ」を元に独自の見解で分析したものであり、タイ料理にはまだまだ美味しいメニューが潜んでいます。(筆者のタイ訪問回数は3回…まだマニアックなタイ料理を楽しむところまで到達できていないので、コロナが明けたらまた現地に斬新で美味しい料理を開拓に行きたいと日々夢見ています!)
ハーブ類の爽やかさと唐辛子の辛さ、魚醤の香りがマッチした酸っぱ辛いタイ料理は、夏の暑さに疲れた体にきっと元気を与えてくれます。この夏は是非、ガパオやグリーンカレーより、一歩マニアックなタイ料理に挑戦してみていただきたいです!
Source: ぐるなび みんなのごはん
【上昇中】ムーガタ、チムチュム、パッキーマオ…! この夏注目のタイ料理まとめ【ド定番に迫る勢い】