名古屋発祥「台湾ラーメン」が、東京・調布で独自の発展を遂げていた

「台湾ラーメン」という料理をご存知でしょうか?

台湾ラーメンという名称ながら、発祥は名古屋の有名台湾料理店。中太ちぢれ麺、ひき肉を唐辛子やにんにくと炒めたピリ辛スープが特徴で、名古屋のソウルフードのひとつといっても過言ではありません。

一般的に台湾ラーメンといえば名古屋の台湾料理店、もしくは神田や新橋まで行かなければ食べられないイメージが強いと思うのですが……

実は調布でも食べられます!

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台湾ラーメンが食べられるのは、京王線の国領(こくりょう)駅からすぐの場所にある「味功(みこう)」。旧甲州街道と狛江通りの交差点にポツンと構えるお店ですが、店先では「台湾ラーメン」ののぼりが力強くはためいています。

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味功の人気メニューが「台湾ラーメン揚げたまご入り」(630円)

言わんとするところは、わかります。イメージしている台湾ラーメンとは若干様相が違いますよね。特にどどんと鎮座する2つのたまごのインパクトが目を引きます。

でも、これがすごいんです。関東や東海をはじめ全国にお住まいの台湾ラーメンファンのみなさん、ぜひ味功で独自の発展を遂げた一杯を味わってみてください!

ピリ辛なだけじゃない! 揚げたまごで美味しさマシマシの台湾ラーメン

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まずはスープからいただきます。おわかりになると思いますが、輪切りの唐辛子がぷかぷかと浮いています。そして辛い! 

でも、何度か味わっていると辛さの奥にある旨みが顔を出していることに気づきます。

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麺にはスープがよく絡んでいます。ひき肉だけだと単調な食感になりそうなところですが、トッピングのもやしやネギ、ニラがいいアクセントになっています。

トッピングといえば一番気になるのは、揚げたまごです。ゆでたまごに衣をつけて、さっと揚げているそうですが……

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箸で割るととろ~り。衣に隠れていたのは、最高な状態の半熟たまごです。

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そして、黄身が混ざったところのスープのまろやかさたるや! いい感じにマイルドになっているだけではなく、黄身の味わいがプラスされ、さらに旨味が増しました。

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もちろんトッピングとしても最高……! スープを吸った衣がまたいいんです。

黄身の混ざっているところと混ざっていないところを夢中で行ったり来たりしているうちに、気がついたら完食目前。すっかり汗だくです。最後に残ったのは、

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そう、やっぱり揚げたまご。

2個入っているので、中継ぎでひとつ、抑えでひとつがおすすめ。まろやかな味わいが、口の中の火照りをやさしく冷ましてくれます。それにしても、一杯ですごい満足感でした!

食欲に火がついてしまったので、もう少し注文してみます。

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アオナを塩味のスープで炒めた「アオナのにんにく炒め」(660円)。テーブルに運ばれてくるやいなや、にんにくのいい香りが食欲をそそります。

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そして、おつまみにぴったりの「子袋」(400円)。蒸した子袋を、ネギや唐辛子、そして特製タレで和えた一品です。

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まずはアオナのにんにく炒めからいただきます。

強火で一気に炒めているので、シャッキシャキ。家庭だと、このシャキシャキ感が上手に出せないんですよね。それにしても、にんにくのパンチが効きまくっていて、これだけでも充分にご飯のおかずになれるパワーを持っています。

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子袋は、生姜やネギと一緒に蒸して下ごしらえしているので、臭みはありません。旨味とコリコリの食感が、ネギのシャキシャキや唐辛子のピリ辛と相性抜群。

一皿あればウーロンハイが無限に飲めてしまうこと間違いなしなので、“ウーハイ泥棒”と命名したいと思います。

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そしてフィニッシュを飾るのは、「叉焼(チャーシュー)炒飯」(950円)。ボリュームはめちゃくちゃすごいんですが……

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自家製の角切りチャーシューがゴロゴロ!!ニュアンスとしては、叉焼炒飯というよりも「角切りチャーシューの炒飯和え」です。

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だって、ワンスプーンにチャーシューが2~3個インしてくるんだから。

炒飯としてはパラパラとしっとりの中間ぐらいの仕上がりで、個人的に超好み。チャーシューはバラ肉を使っているので、脂身の部分が熱でとろっとしていて「こういう炒飯を待ってました!」と思わず柏手を打ってしまうほどです。

※味はピリ辛ですが、苦手な方は対応してもらえるそうです。

どの料理も最高に美味しかったです。ごちそうさまでした!

なぜ味功では、台湾ラーメンを提供しているのか

営業時間はランチが11時~14時で、ディナーが18時~22時。

ランチでの利用だけではなく、夜にお酒と一緒に料理を楽しんで、台湾ラーメンや炒飯でシメるなんてのもすごく良さそうです。駅近でアクセスもいいし。

それにしても、なぜ味功では台湾ラーメンを提供しているのでしょうか? オーナーの新井さんに、ネットに出回っている気になる噂を含めていろいろと話を聞いてみました。

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――まず、台湾ラーメンを提供することになった経緯を教えてください。ネットには「名古屋の“あの店”の暖簾分け」といった噂も出回っていますが……!

新井さん いろいろ言われていますが、暖簾分けではないんですよ。ただ、もちろん影響は受けています。母が名古屋へ行ったときに台湾ラーメンを食べて感動して、「ぜひ東京でも提供してみたい」と。すでに母が亡くなっているので、私からはこれ以上の説明ができないのですが……。

 

――気になる……! 名古屋で食べられる台湾ラーメンと比べて、味功流のアレンジが加わっていますよね。揚げたまごのトッピングもそうですし、辛みもいくぶんマイルドになっている気がします。

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新井さん 実は、私が初めて台湾ラーメンを食べたとき、辛すぎてひと口しか食べられなくて(笑)。かといって、辛さを抑えすぎると台湾ラーメンとして美味しくない。私が美味しく食べられるギリギリのレベルを目指して、今の辛さに落ち着きました。

 

――スープにはタカの爪がたくさん入っていて見た目はすごく辛そうなのですが、そこまで辛くないんですよね。

新井さん ポイントは2つあります。1つは、材料に使用している唐辛子。コックさんが厳選して、辛いだけではなくコクのあるものを使用しています。

もう1つは調理方法です。スープに赤い唐辛子と黒い唐辛子が入っていたことに気づきましたか?

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――え!? 気づきませんでした!

新井さん 赤い方は、乾燥した唐辛子。黒い方は、自家製ラー油用に低音の油で焦げるまでじっくりと辛味と旨味を抽出した唐辛子です。赤い唐辛子だけだったらすするだけでむせてしまうかもしれませんが、ラー油とダブルで味付けすることで理想の辛さに辿り着きました。もちろんもっと辛い味をご希望の場合は、お声がけいただければ承ります。

 

――あとは、なんといってもトッピングの揚げたまごですよね。しかも2個入りです。一般的なラーメンに入っているたまごはだいたい1個。半分のところもありますよね。

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新井さん 私、たまごが大好きなんです。「半熟のゆでたまごに衣をつけて揚げたら、スープがしみて絶対に美味しくなる!」と思って、コックさんに頼みました。そのときはコックさんが台湾ラーメンに揚げたまごを1個のトッピングしてくれたのですが、たまご好きの私にとっては物足りなくて(笑)。思い切って、2個入れることにしました。

 

――大サービスですね。確かに、この揚げたまごによって一杯の満足度がすごく高くなりますよね。

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新井さん もっとお腹いっぱい食べたい方に人気なのは、さらにチャーシューをトッピングした「全部乗せ」(890円)です。先ほどの炒飯に入っていたチャーシューをスライスして5枚トッピングしています。

 

――これはすごい……! 叉焼炒飯といい、台湾ラーメンの全部乗せといい、お腹の空いた方にはぴったりですね!!

新井さん 確かに若い男性のお客さまは多いですね。1人でふらっと立ち寄る方もたくさんいらっしゃいます。でも、女性のお客さまも多いんですよ。辛い料理が好きな女性は多いですし、もちろん辛い料理以外も人気のあるメニューはたくさんあります。

 

――辛い料理以外だとどういったメニューが人気なのでしょうか?

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新井さん それで言うと、まずは「ニラ玉」(560円)ですね。一般的なニラ玉は肉やもやしなどと一緒にニラをたまごを炒めますが、味功のニラ玉はとろとろの卵とじのように仕上げているので、お子様にも人気です。定期的にニラ玉だけを食べに来るお客さまもいるほど、ファンの多い一品です。

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――うわ、すごくとろとろ!スープも優しい味わいで子どもに人気があるのも納得です。

 

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新井さん ガッツリ系だと、「黒酢酢豚」(1,050円)です。野菜ナシ、豚肉オンリーの酢豚で、中国から取り寄せた特製の香酢を使用しています。ランチでたくさん注文が入りすぎて、夜には売り切れてしまうこともあるんですよ。

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――肉のウルル(エアーズロック)だ! ゲンコツサイズの豚肉がゴロゴロ入っていますね。香酢の風味もいい感じです。

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新井さん この香りが出るのは、中国の香酢を使っているからこそです。豚肉は丁寧に下ごしらえをしているので、食感は残しつつもホロホロ。以前、デリバリーをお願いしている出前館の若いスタッフさんが「メニューを見て、あまりにも美味しそうだったから!」とわざわざお店まで食べに来たことがありましたよ(笑)。

 

――その気持ち、わかるなぁ……! あと、あの壁に書かれている期間限定メニューがすごく気になるんですが。

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新井さん 「台湾まぜそば 味功風」(800円)ですね。流行りの台湾まぜそばを味功風にアレンジしました。ピリ辛のひき肉、にんにくに加えて、きゅうり、刻み海苔、ネギ、たまごの黄身、そして風味豊かな魚粉をトッピングしています。

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魚粉の風味がどこか懐かしい。台湾ラーメンよりも辛さがマイルドになっている気がします

――いや~、改めてですが、一品ごとの満足感がすごいですね。

新井さん 別にデカ盛り店を目指しているわけではないんですよ(笑)。お客さまに満足していただきたいと思っていたら、こうなりました。

 

――でも、決してボリュームだけではないんですよね。先程の唐辛子や香酢の話もそうですが、食材にも強いこだわりが感じられます。

新井さん コックさんがすごく研究熱心なんですよ。そして、目が利く。唐辛子を選ぶときも5~6種類用意するんですが、絶対に一番値段が高いものを選ぶんです。正直なところ、私としてはもう少し原価を抑えたいところなのですが、「これじゃなきゃダメだ」って(笑)。

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――台湾ラーメン以外もものすごくこだわっているしすごく美味しいことががよくわかりました。今後、どのような店にしていきたいと思っていますか?

新井さん やはり、居心地の良い店ですね。小さな店なので席数は多くないのですが、気にせずゆっくりと料理やお酒を楽しんでいただきたいと思います。女性のおひとりさまでも、ご家族連れでも大歓迎です。もしかしたら辛い料理のイメージが強いかもしれませんが、ニラ玉や酢豚以外にもワンタン麺など優しい味の料理もたくさんあるので、お気軽に足を運んでください。

 

――ついつい長居してしまいました。今日はありがとうございました。とても美味しかったです。

新井さん こちらこそ、ありがとうございました。また来てくださいね。

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最後にいただいたのは、「手作りおぼろ杏仁豆腐」(400円)。まろやかな生クリームの風味とフランスから取り寄せているマンゴー100%のピューレが、やさしくクールダウンしてくれました。

台湾ラーメンはもちろんチャーハンや一品料理、デザートに至るまで、全部美味しかったです。

取材直後は「しばらく台湾ラーメンは食べなくていいな」と思っていたのですが、当日寝る前には食べたくなっていて、翌週また店へ足を運ぶことになりました。

恐るべし味功!!

紹介したお店

味功
〒182-0082 東京都調布市国領町2-3-6
1,000円(平均)700円(ランチ平均)

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください
※お酒の提供については、現在、国や自治体の要請に準じています

著者プロフィール

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田中嘉人

1983年生まれ。静岡県出身。静岡文化芸術大学大学院修了後、2008年にエン・ジャパンへ入社。求人広告のコピーライター、Webメディア編集などを経て、2017年5月1日独立。ジモコロ、SPOTなどを担当しつつ、ラジオドラマ脚本も書く。

Source: ぐるなび みんなのごはん
名古屋発祥「台湾ラーメン」が、東京・調布で独自の発展を遂げていた

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