GKだけなぜ?…東口順昭が感じる選手採点への疑問とGKの楽しさ【ごはん、ときどきサッカー】

©ガンバ大阪

 

試合後にGKが記者に囲まれる場面は2つある

1つは素晴らしいセーブを見せたとき

もう1つは失点してしまったとき

実際は圧倒的に後者の場合が多い

 

口が重くなりがちな失点について語ることは

気持ちがしっかりしている選手でないと難しい

とても若いときの経験がそうさせているのだろう

東口順昭にオススメの店を聞いた

 

大学に入り直したときが「人生の勝負」だった

高校は京都の洛南高校なんですよ。それ、よく聞かれますね。偏差値70ぐらいある進学校で、確かに母校ですけど、スポーツクラスがあって、僕はそっちなんです(笑)。

 

僕のサッカー人生はつらいこと、何度もあるんですけど、一番は人生で初めて挫折したというか、そういう時期やった中学時代ですね。

 

僕は小学生のときFWとGKと両方やってたんです。FWでシュートを入れるのはもちろんすごい楽しかったんですけど、それと一緒ぐらいGKで相手のシュートを止めたときはやっぱすごい気持ちよかったんですよね。

 

僕の小学生時代は失点すると何でもGKのせいになったり、フィールドプレーヤーで余った選手がGKになったりというときでしたね。でも1点決めさせないのは1点取るのと同じぐらい気持ちよくて。

 

そういう意味ではGKもすごく楽しめてやってました。小学校の時は大事な大会だけGKをやって、それ以外はFWやらせてくれってお願いしてたんですよ。

 

それでよくガンバ大阪のジュニアユースに入ったと自分でも思うんですよ。実はセレッソ大阪さんからもお誘いがあったんで、何か持ってるものがあったんですかね。ジュニアユースからはGKコーチがいたんで、本格的にいろいろ技術を教えてもらいました。

 

ガンバ大阪のジュニアユースチームに入ることになったんで、それはその時点では認められてたということで、いろいろ夢を見てたんですけど、逆に現実を見せられましたね。

 

自分のプレーが通用せえへんし、うまくいかへんし。「これはプロなんかもちろん無理やし、もうサッカーなんかちょっと辞めたい」と思ったぐらいなんで。

 

当時は身長が高くなくて、中学を卒業するときでも160センチ前半ぐらいやったし、メンタル的にもすごく未熟なときがところもあって。中学1年でクラブに入ったときもう1人すごいGKがいて、その選手がずっと試合に出て僕はセカンドGKという感じだったんですよ。「全然通用せぇへんな。こんなうまいヤツいんのか」と思いながらやってました。

 

中学2年生になったらけが人なんかが出たことも相まって試合に出るようになったんですけど、なかなか思うようなプレーできず、しかも自分のせいで負けたりもしてて。全国大会も自分のミスで行けなくなったりしてたんで、「これはもう全然無理やわ」って思ってました。

 

試合でうまくいかへんかったんで「辞めたい」と思うことがあって、そんとき母親には「サッカーもう辞めようかな」みたいなことを言ったんですよ。

 

そんで「いいよ、辞めれば」って返されて「いや、やっぱり辞めたくない」って改めて自分で気付いて。「サッカーは楽しいんやから、しっかりやろう」と心を入れ替えて続けた記憶がありますね。母親は自分が反発すると思って言ったのか分からないですけど、「どうせ辞めへん」と思ったんですかね(笑)。

 

中学時代は暗かったですよ。練習は楽しいけど試合はあんまり出たくないという感覚で、メンタル的にすごいダメでした。でもやっぱりサッカーは心の底から楽しかったし、GK楽しかったし。乗り切れたのは練習を楽しむようにしてたからですね。

 

それでガンバのユースには行けず。高校は家から近かった学校がサッカー強豪校やったんでセレクションを受けさせてもらったんですけど、受からず。それで洛南高校に行くことになったんです。

 

そうしたら高校時代にグッと身長が伸びたんですよ。成長期が遅かったんですよね。それで身長も伸びたらプレーもいろいろ幅が広がっていったという感じです。

 

その当時の洛南高校はそこまでレベルが高くなかったんですけど、だからかえって「自分がやらなあかん」という感覚になって、それのおかげでメンタル的にもすごい伸びましたね。

 

高校卒業するとき、最初は福井の大学に行ったんです。「全国大会に出たら誰か見てくれるやろう」と思ってて、「それやったら全国大会に出やすい北陸がいいんじゃないか」って。それに母親の実家が福井っていうのもあったんで。

 

ところが、しっかりした「部活」という感じじゃなくて、住んでるところから自分の車で片道40分かけて練習場に行って、雑草か土かわからんような、ネチョネチョしたグラウンドで自分たちだけで練習して、シャワーもなくて車で着替えて帰るという、今思うと結構整ってない環境でした。

 

それでも何とか大学2年生のときに大学選抜に入ったんですよ。そして「サッカーをもっと本格的にやってる大学でプレーしたい」と思ってたんです。

 

そんなとき相談した人がたまたま新潟経営大学のコーチの方で、「別の大学に転入するととこれまで取っていた単位が無効になるのでまた取り直さないとあかんけど、そういうのちゃんとできるんやったら」ということで、新潟経営大学に入り直して、そこでプレーを続けたんです。

 

あのとき人生の勝負、しました。新潟経営大学がサッカーに力を入れ始めて数年目でしたから、練習環境はよくなりましたね。

 

大学卒業するときにはガンバからも声をかけてもらったんですけど、アルビレックス新潟に入ることにしました。大学2年のころから考えると、あそこからよくプロになったとホンマに思います。

 

プロになったあとはケガに泣かされた時期が何度かありましたね。

 

プロ1年目の2010年は試合に出られなくて、2年目に出始めたんですけど左眼窩壁と鼻骨の骨折という全治3ヶ月のケガをして、復帰まで半年かかって。そこもつらかったですね。あそこで顔がぐちゃぐちゃになりました。

 

2011年は東日本大震災があって、その復興支援のために3月29日に大阪で「東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ がんばろうニッポン!」が開催されました。日本代表とJリーグ選抜チームの「Jリーグ TEAM AS ONE」が試合をして、そのとき日本代表のメンバーに選ばれたんです。

 

そこで選ばれたまではよかったんですけど、その年の夏、右ひざ前十字靭帯を損傷して、これも復帰までに半年以上かかりましたね。

 

2012年も練習試合で右ひざ前十字靭帯をもう1回断裂して、内側側副靭帯も損傷して全治8ヶ月かかって復帰しました。

 

2014年にガンバに移籍してからはあまり大きなケガがなかったんですけど、2018年4月に味方とぶつかって右頬骨と右眼窩底を骨折して、3週間後にフェイスガードをつけて復帰しました。2022年も3月に右膝内側半月板を損傷して手術を受けて、6月にやっとピッチに戻れました。

 

こう考えると結構手術してます。なんかありますね(笑)。

 

ケガでは2回目の前十字のことは忘れられないですね。「リハビリ半年なんかできひんわ」と思ってましたから。でもそんなケガよりも、中学時代のほうがつらかったですね。中学の時のことは今も心をよぎるというか、思い出すんですよ。

 

選手の採点してるサイトってあるじゃないですか

2018年ロシアワールドカップのときは、骨折から復帰してサブに入ったんです。今思えばワールドカップに行っただけでもすごいことですね。出たらもっとすごいと思いますし、川島永嗣さんみたいに継続して出場してるのはホンマにすごいと思います。

 

それにワールドカップってだいたいGK2人はずっと出番待ちですからね。気長にしっかり継続しなければダメなポジションですから。いい経験はさせてもらったと思います。もともとGKはしんどいポジションでもあるんですけどね。ずっと控えだったりしますし。

 

2019年1月のUAEアジアカップの時も出番がないまま終わりましたし。ただ、あのときは「試合に出ないだろうな」と思ってましたけどね。そもそも出してくれる感じないなって。

 

ロシアワールドカップが終わって森保一監督が就任して、アジアカップまではちょいちょい出してもらってたんです。けど、アジアカップでは練習のときから「自分は試合にでえへんな」と分かってました。

 

練習でもぎっくり腰になってしまって。試合に出ないと思ってふっと気が抜けたから傷めたという感じですね。出るんやったらぎっくり腰でも出たかったですけどね。ただ出ても出なくてもいつも全力ではやってるんで。

 

GKって今、求められるものが多いですし、毎年増えていくじゃないですか。組み立てに参加しろとか、一番いろんなことが増えてるポジションですよね。それにボールがどんどん改良されて、取りにくくなるようなボールばかりなんですよ。GK泣かせになっていくんです。

 

そんな中でGKの楽しみって……まずはやっぱり入りそうなシュートを止めるっていうのが常にありますね。あとはサッカーが変わってきてGKの役割も変化してきて、たとえば「ビルドアップでこういうこともできるんや」ってなったら楽しいし、やることが多いぶん、忙しいけど楽しいですけどね。

 

それでね、GKについてひとつだけ聞いてほしいことがあるんです。

 

選手の採点してるサイトってあるじゃないすか。それでGKに対しての評価が「ほぼパーフェクトやったけどクロスボールでキャッチミスしたから減点」って書かれたりするんですよ。別に失点してへんのに、そのことをマイナス評価してる人がいるんです。

 

GKって守備範囲を広げようとして飛び出せばミスに見えることもあるし、逆に狭い範囲しか守ってなかったらミスしてないように見えるし。そもそもなんでキャッチミスしたら減点なのかが分からないですね。

 

たとえばクロスボールで前に出て処理しようとして、キャッチミスしてしまおうが最終的にちゃんと防いで点が入らなかったらオッケーだと思うんですよ。でもGKの見方だけは減点方式なんすよね。フィールドプレーヤーはトラップミスして減点されるのかって、絶対されないじゃないですか。

 

フィールドプレーヤーがいいプレーしたらトラップミスなんか忘れ去られてるんだけど、GKの場合、ひとつミスに見えることをするだけですごい減点方式やから。採点してる人にもまだまだGKがどういうものかという見方が根付いてないっていう感じはありますけどね。

 

たとえばシュートに対してキャッチできるところと弾くところの使い分けを見極めてもらってるか、分からないですね。キャッチできるけど弾いたほうが派手に見えるときもあるし、ステップワークがしっかりしてると難しいシュートでも正面で取れるんで簡単なプレーをしてたように見られちゃうんですよね。キャッチしてたら正面のシュートやったんやって思われるところもあるし。

 

でも飛んでボールを弾いたりすると「ビッグセーブ」やということでやっぱり盛り上がりますしね。それもチームを盛り上げる手段と思いますし、あえて難しそうにプレーするのもチームが盛り上がるんやったらそれはそれでいいと思います。

 

そういうところをしっかり見極めて評価されてるのを見ると、「この人よく分かってんな」という感覚はすごいします。

 

GKは毎年アップデートしなきゃいけないことがフィールドに比べて多いですよ。でもその先に喜びがあるんですよ。止めたらうれしいしヒーローになれるところがGKのよさだし、楽しいポジションなんですよ。

 

©ガンバ大阪

 

焼肉とちゃんこ鍋がおすすめ

最後におススメのレストランを言うんですよね、そうなんですよね。

 

まず大阪で言うと、吹田にある「焼肉工房いやしん坊」っていう焼肉店なんですけど、ここはよく行きます。焼肉を食べたくなったら「焼肉工房いやしん坊」。週1回は行ってると思います。美味しいんですよ。

 

タンとかラムシンとかもいいですし、リクエストするとそれに合わせて出してくれるんで。「薄い脂身のないヤツ適当にお願いします」とか言ったら美味しいところが出てくるから、もうマスター任せにしてるんです。やっぱり食べるときは基本、脂身の少ないところですね。

 

あとは新潟の「ちゃんこ大翔龍」という店です。ここは元力士の親方がやっているちゃんこ屋さんで、新潟にいたときにずっとお世話になってた、食べに行かせてもらってたところです。

 

ちゃんこはもちろん美味しいし、手羽先も美味しいし、新潟ですからね、お造りも美味しくて。だから、新潟でプレーしてたとき、友達が来たらまず絶対そこ連れて行くんですよ。新潟の食材が全部楽しめるから。今でも新潟に行くときは絶対行ってますし、間違いない店です。

 

それから大阪の梅田近くにある「鍋守ミートセンター」もおススメしておきます。もつ鍋屋さんで、街中やから、新型コロナウイルスの影響で最近ちょっと行けてないんですけど、寒くなってきたらぜひ行ってみてください。

 

紹介したお店

ちゃんこ大翔龍
〒950-0917 新潟県新潟市中央区天神2-1-3
4,000円(平均)

※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください

 

東口順昭 プロフィール

2009年、新潟経営大学からアルビレックス新潟に入団。2010年からはレギュラーとして活躍し、2015年には日本代表として試合出場も果たす。現在は2014年から在籍するガンバ大阪の守護神として活躍している。1986年生まれ、大阪府出身。

 

森雅史プロフィール

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佐賀県有田町生まれ、久留米大学附設高校、上智大学出身。多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本蹴球合同会社代表。

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Source: ぐるなび みんなのごはん
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