おいしいまま保存でき、忙しい時に大活躍する冷凍食品。我々の日常で必要不可欠な存在になっている。そんな冷凍食品にはたった一つ、重大な欠点がある。
それはレンジが無いと食べられないということだ。例えば外にいたら食べられない。
今回はその欠点を補ってもらえないものかと、カルチャー発信のまちとして「熱い」下北沢で出会った人に温めてもらう旅に出た。果たして無事、食べられるだろうか。
熱いまち下北沢でチンしてもらう
さまざまな場所が候補にあがったが、下北沢にやってきた。
今回のような無茶なお願いを聞いてくれそうな街だな、と思ったからだ。
ご飯つきお弁当タイプの冷凍食品があった!
今回、撮影係として一緒にデイリーポータルZ編集部の安藤さんが来てくれている。
冷凍食品が溶けないようにとクーラーボックスに入れて来てくれた。
見てみるとご飯つき。
お弁当に入れるお惣菜の冷凍食品は数あれど、そういえばご飯が一緒に入っている冷凍食品は新しいんじゃないか?
これはぜひとも食べたい!
私は20代から数えれば、ライブや芝居、買い物などで数十回は下北沢に来たことがある。
いっぽうで安藤さんは本多劇場という有名な劇場以外はほとんど来たことがないという。
であれば、私が先導した方がいいだろう。
必ず迷う下北沢
下北沢駅は井の頭線と小田急線が交わっており、駅前が昔から複雑に感じていた。さらにここ最近、駅や駅前が劇的に変わっていることもあいまって、どこがどこに通じる道なのかさっぱり分からないのであった。
行きたい場所のイメージはあるのだけど…適当に歩くことにしよう。
少し歩くだけで、ファッション、演劇、音楽、バーなど、まさしく「カルチャー」を感じる場所がたくさんある街だと分かる。
愛知県出身の安藤さんは「小堺さんは若い時からこういうとこに来てたなんて凄いなあ」と何度も感心していた。だが、私は未だに道に迷うくらいだし、混沌とした雰囲気に圧倒されて、いつだってドキドキとワクワクが交錯する街だ。
古着屋で冷食を温めてもらえるのか?
さて、本題である。
冷凍食品を食べるために下北沢の人にチンしてもらいにやってきたのだ。
まず下北沢に数多くある古着屋でトライしてみることにした。
古着好きに付き合って入ったらかっこいいジャケットを見つけて衝動買いしてしまった事のあるお店である。
私は普段から人に声をかけるのに慣れているのだけれど、この時ばかりはなんと説明していいのかまとまらず久々に緊張した。
自分でやっている企画のくせになんだが、なぜ古着屋さんに冷凍食品を温めてもらう必要があるのか、意味が分からないからだ。
対応してくれた店員さんは、ジャケットを買ったときに対応してくれた方だった。
半年前の事なのになんと私の事を覚えてくれていた。本当だろうか。
そんな店員さんの鏡のような優しい方だったが、返答はこうだった。
古着屋さんにレンジはない
多少想定はしていたが、レンジは置いていなかった。
さらに、これまでの経験上、他のアパレルショップも置いてないだろう、とのこと。
家電は、あったとしても冷蔵庫くらいでは、という意見だった。
たしかにアパレルショップで「チン!」という音を聞いたことがない。
服に匂いがついてしまうだろうしな、、そっかあ。
出直そう!
下北沢の本丸「本多劇場」で温めてもらえるのか?
飲食店でチンしてもらうのは、とても気が引けるので飲食店はのぞく。
アパレルショップもレンジが無いと聞いたのでのぞく。
となると、下北沢で温めてもらえそうな場所は一気に限られてしまった。
そこで思い切って選んだのは、お芝居好きの聖地、本多劇場である。
芝居を見に行く以外の理由で本多劇場に来るとは思わなかった。
しばし入り口を眺めていると、公演間近の劇団のスタッフさんが相手をしてくれた。
またしどろもどろになりながら説明すると、本多劇場の方にレンジの使用許可を取りに行ってくれることに。
いけるのか?
劇団のスタッフさんは、どう説明して本多劇場さんの許可を取るのだろうか。
自分がやらせておいてなんだが、かなりの説明スキルが必要とされることだろう。
待つこと数分。
スタッフさんが「本多劇場さんのOK取れました!」と笑顔で帰ってきてくれた。
さすが下北沢の包容力を感じた瞬間である。
劇場ってレンジがあるんだな。
劇団スタッフの方に聞いたところ、関係者のお弁当を温めるためにレンジが用意されているそうだ。
劇団が自ら所有しているものを持ち込むことが多いらしい。
そうなのか。はからずも業界の知らない一面を知ることができた。
さらに待つこと数分、スタッフの方が温めた冷食を持ってきてくれた!
自分が子供の時と比べれば、冷凍食品の進化がすさまじいのは知っていた。
でも白飯がその想像を超えてきた。
パッケージの写真の方が実物より美味しそうな事ってよくあるじゃないですか。
でもこのお弁当、パッケージに載ってる写真が、食材の柔らかさとかツヤをそのまんま表わしてますよ!
食べ終わった後に美味しさを振り返るのにピッタリなパッケージだった。
さて、うまくいったことだし、もう一つのハンバーグ弁当もぜひ食べたい。
引き続きチンしてくれる人を探そう。
さすがオシャレ発信地の下北沢だ。
美容院がとても多いが、どこも忙しそうにしていて入り込むスキは無し。
あとは、下北沢には意外と古本屋ふくめ本屋が多いなと思い出し、とある場所に向かった。
飲食のできる本屋で温めてもらえるのか?
下北沢でも落ち着いたエリアにお店を構える本屋B&Bさんだ。
店内にはトークイベントができるスペースがあり、ドリンクもオーダーできる。
実は以前に一回出演しに来たことがあるのだが、とても素敵な本屋さんでまた来たいと思っていた。
周りには休憩スペースもあるし、お弁当を食べるにはピッタリな場所である。
残念ながらタイミングが悪くNGだった。
だが、しどろもどろで怪しさ満点な説明を聞いてくれただけでとてもありがたかった。
気を取り直してもう少し探そう。
それにしてもこの日はとても蒸し暑く、多少の疲れが出てきた。
そんな時、目に飛び込んで来たのが「氷」ののれんだ!
かき氷屋さんで温めてもらえるのか?
気が引けるから飲食店ははずそう、と始めた企画である。
だって食べ物があるお店で、他のものを食べようとしているなんて申し訳ないからだ。
しかし2人の心は今、かき氷に夢中である。
持ってる冷食を背中に押し当てたいほどとにかく暑いのだ。
安藤さんと話し合い、今までと同様のしどろもどろの説明に加えて「我々はかき氷を食べにきた。もし良ければついでにお弁当も温めてくれませんか」と素直に伝えることにした。
チンしてもらうのはもはやついでなのである。
背が高く、めちゃくちゃ雰囲気のある店長さんが相手をしてくれた。
聞くと「劇団プレステージ」という劇団の役者さんだった。
基本は夜営業のバーなのだが、この日はこのあとイベントがあるためお店を開けていたそう。ラッキー!
夏の暑さで火照った体がシャリシャリのかき氷で一気に爽快に。
おかげ様でかなり回復した。
ちなみにかき氷は、店長さんが飽きるまでやっているそうです。
お弁当を持ちながら、なんだかんだで3時間以上歩き続けていたがまったく形が崩れていなかった。超おいしそうじゃないか。
両方のお弁当を食べてみて伝えたいのは、やはり白飯の美味しさだ。
おかずはもちろん美味しい。
だけどそれに負けないくらい白飯がうまい。
普通、お弁当はおかずに夢中になるところだけど、白飯まで美味しく感じるから感動してしまうのだ。
こんな感じで、冷食を温めてもらう旅は終わった。
目論見通り、下北沢はいろんなカルチャーで熱かったし、人も温かかった。
外も暑かったし、そりゃあ冷食だって熱くなるのだ。
いろんなアツさが充填された冷食は、とてもとても美味しかった。
下北沢の皆様、ありがとうございました!
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著者プロフィール
小堺丸子(こざかいまるこ)
東京葛飾生まれ。江戸っ子ぽいとよく言われますが、新潟と茨城のハーフです。好きなものは犬と酸っぱいもの全般。そこらへんの人にすぐに話しかけてしまう癖がある。上野・浅草が庭。
Twitter:https://twitter.com/pekorinnote
キャプテン丸子
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Source: ぐるなび みんなのごはん
冷凍食品を温めてもらう旅