五反田のゴールデン飲食街「五反田ヒルズ」へようこそ! スナック、バー、居酒屋、小料理店など全40店舗をレビュー【2023年】

はじめに

この記事は長いです。お店の情報だけ知りたい場合は、以下の目次から気になる店の名前をクリック(タップ)してください。できれば「五反田ヒルズを楽しめるお客さん診断」「五反田ヒルズ来場の注意事項」はご一読ください。

 

 

五反田ヒルズ正面看板。40軒の飲食店がビルB1F、1F、2Fに入居している(駐車場や不動産店、オフィスを除く)。

東京・五反田は、JR山手線を時計に見立てると7時付近に位置する。オフィス街、飲食店街、風俗街、高級住宅街が狭いエリアに隣接し、独特の雰囲気のあるカオスな街だ。その一角に、今回ご紹介する「五反田ヒルズ」がある。

五反田ヒルズを知らない人に、この場所をどう説明すればよいのだろうか。昨今話題のChatGPT(GPT-3.5)に聞いてみたところ、こんな回答が返ってきた。

おーい、ぜんぜん違うぞ! ChatGPTを誘って、一緒に五反田ヒルズへ飲みに行ってみたい。

リリースされたばかりのChatGPT(GPT-4)でも質問してみたが、「約140メートルの超高層タワー」の記述がなくなっているくらいで、大差はなかった。まあ、AIは飲み歩いたりしないから、知らなくてもしょうがないんですけどね……。というわけで、実際の外観はこちらである。

五反田ヒルズとは

五反田ヒルズ全景(手前にある7階建てのビル)。目黒川沿いで、妖艶なネオンが目を引く。

五反田ヒルズとは、東急池上線五反田駅ホームとJR山手線の線路と隣接し、目黒川を正面に望む「リバーライトビル」地下1階、1階、2階飲食街の愛称である。3~7階はビジネスホテル「ホテルロイヤルオーク五反田」が入居し、その怪しい雰囲気はまさに昭和の遺物だ。ビルのエントランス階段を少し下り、吹き抜けになっている建物内を見上げると、三角定規のような空が見える。

五反田ヒルズ入り口の階段を少し降りたグランドフロア(B1F)から見上げると、吹き抜けの向こうに夜空が見える。

この吹き抜けがちょっと表参道ヒルズっぽかったので、2015年当時、私を含む数人の飲み友だちが冗談まじりにここを「五反田ヒルズ」と呼びはじめたところ、何となく流れでこれがすっかり定着してしまった。

五反田ヒルズ初訪問者はほぼ全員「え、ここがヒルズ???」と苦笑いするほど、◯◯ヒルズに遠く及ばないドリフのセットみたいなビルなので、我ながら図々しい愛称だと思う。登記上はリバーライトビルのままだが、ビル管理会社の理事長(権力者)の威光で、ビル正面看板には堂々と「五反田ヒルズ」の文字が掲げられている。

五反田ヒルズの正面入口に新設されたネオン。設置当初は「なぜヤシの木?」と店主たちはみんな首を傾げていたが、そのうち見慣れて誰も気にしなくなった。

飲食店は全40軒。ほとんどの物件は5坪(トイレ付き)で、一軒一軒の飲食店はこぢんまりとしている。カウンターだけなら8席、テーブル席はおまけ程度の店が多く、必然的に店主と客の距離は近くなる。数回通えば客同士も何となく顔なじみになるため、五反田ヒルズで飲み友だちを見つけるのはそんなに難しくない。

2015年11月撮影。株式会社デスバレー、(財)土と人間の蘇生の会、占いダイニングなど、謎な会社や店があり、いま以上に近寄りづらい雰囲気を出していた。

ほんの10年前くらいまでは知る人ぞ知る飲食街だったが、2015年ごろから若手店主の飲食店が少しずつ増え始め、2020年2月1日に放送された「出没!アド街ック天国」(テレビ東京)の五反田編では11位にランクイン。五反田ヒルズに若いお客さんが増えるなど、ちょっとした地元の人気スポットになっていった。

しかし、2020年春、新型コロナウイルスの流行によって、このビルも例外なく、ほぼすべての店が休業に追い込まれた。あれから3年、少しずつ常連客は戻りつつあるが、残念ながら最盛期の賑わいにはまだ遠い。

そこで今回は、酒場好きにとって大切な飲食店の灯が消えてしまわないよう、五反田の新名所をご紹介したい。私が客として飲みに行ったことがある五反田ヒルズの飲食店は30店。個人的な飲み歩き体験をベースに、それぞれのお店をご案内しよう。

昨年10月半ばから、異様な数の電飾で彩られた五反田ヒルズ内部(1Fより撮影)。ガラス扉の店で飲んでいると、やけにまぶしい。

お店紹介に入る前に、五反田ヒルズを楽しめるお客さんのタイプ診断と、五反田ヒルズの歩き方(注意事項)をまとめてみた。

五反田ヒルズを楽しめるお客さん診断

五反田ヒルズ来場の注意事項

不明朗会計で、営業時間もアバウトな店がある

五反田ヒルズの飲食店は、そもそもメニュー表がないお店が少なくない(もちろん、どこもかしこもボッタクリ店というわけではないけれど)。スナックなど、メニュー表がない店に入ってしまったら、まずは料金システムを聞いてみよう。しっかりした店はきちんと説明してくれるので、確認・納得の上で酒席を楽しんでください。

また、営業時間はそれぞれの店でおおよそ決まっているが、「今日はお客さんが少ないからそろそろ閉めよう」「営業時間が過ぎているけど、みんな盛り上がっているからもう少し開けておくか」といったこともよくある。かっちりしていないゆるさが五反田ヒルズの魅力でもあるので、お目当ての店が開いていなかったら、別の店をのぞいてみるくらいの気分でちょうどよいだろう。

 

参考情報(メニューがある店/何となくある店/ない店)
●メニューがある店
都々井、ももちゃん、AOI、Fujii、とんかつ満天、美亭、コワーキングスナックContentz、月。

●メニューが何となくある店
きになる嫁デラックス、Lagu、BOSS、PEACE、ちょいとぷらっと、古里

●メニューがない店
上記以外

 

雨の日は中央フロアや階段に注意

中央のらせん階段、1Fと2Fの踊り場から見下ろした五反田ヒルズの様子。

五反田ヒルズは、建物の中央が最上階まで吹き抜けになっている。このため、雨が降ると地下1階の中央フロアの移動は傘が必要だ(※お店の入り口は天井があるので大丈夫)。

また、雨の日は階段がとても滑りやすいので、どうか気をつけて。酔っ払ったお客さんが階段から転げ落ちて、救急車で運ばれたのを5回くらい目撃したことがありまして……。

 

一見さんお断り? or ウェルカム!

居酒屋、寿司店、焼き鳥店、ビストロ、バー、スナックなど、五反田ヒルズにはいろんな業態の飲食店が入居している。食事ができる店は初めてのお客さんでも問題なく入れるが、バーやスナックの中には「一見さんお断り」の店もある。「会員制」などと書いている店は常連さん同伴じゃないと入れないので、ご注意を。

ややこしいのが、「一見さんお断り」と書いていないものの、店内の様子がよくわからない店だ。ガラス戸や窓があって中をのぞけるなら何となく雰囲気はわかるが、ほとんどの店は重厚な扉を開けて確認するしかない。

特にスナックは、ベテランのママが一人で店を切り盛りしている店がほとんど。カウンター8席の店に5~6人で押しかけても、先客が数人いれば入れない。また、酔っぱらいが勢いよく初めての店に突入してくると、ママの判断で入店を断られることもある。客がハズレの店に当たらないかを警戒するのと同じく、お店側も迷惑な客には来てもらいたくないのだ。

もちろん、初来店は誰もが一見さんだし、お互いに仲良くなれば常連さんとして末永く付き合いが続くこともある。行ったことのないスナックの扉を開くときは、「初めてなんですけど、いいですか?」と、礼儀正しく声をかけてみてほしい。五反田ヒルズのちゃんとした店なら、来店を歓迎してくれるだろう。

 

居酒屋や小料理、立ち食い寿司など、食事できる店が中心のB1Fフロア

すし処 都々井

2018年3月、五反田駅高架下で27年間営業した「立ち食いずし 都々井」が立ち退きになり、約1年後に五反田ヒルズで復活を果たした。他社のサイトだが、移転先の経緯については以下が詳しいので、よろしければご一読ください。

 

都々井さんの握り寿司。左から、漬けマグロ、イワシ、シメサバ、ホタテ、真鯛、牡蠣、わさび巻き。

五反田ヒルズで最も広い約18坪の店内。立ち食いの店なので、洋式トイレ以外に座る場所はない。カウンターは10~12人くらいのスペースで、2人用テーブルが3つ、4人テーブルが2つ。一人客やカップルが多く、運良く席が空いていれば5人以上でも入店できる。

おきまりセット(並=1,000円、上=1,500円、特上=2,000円)もあるが、テーブルに設置された注文用紙で1カン(150円~)ずつ注文できる。6~8カンつまんで、瓶ビールを1本飲んでも、お会計は2,000円前後。ウニ、イクラ、赤貝など、少し値が張るネタを注文し、お酒をしっかり飲んでも、1人5,000円を超えることはない。移転前の看板には「シャリ自慢」を掲げており、この安さでありながらとにかく寿司がどれもうまい。

ホテルイカ(※季節限定)。寿司メニュー以外では、なめろう、あん肝、タコぶつ、あら煮などがある。寿司ネタをおつまみで注文することもできる。
都々井店主の筒井誠さん。職人肌で黙々と寿司を握るが、おちゃめな一面も。

コスパで語られることの多い店だが、さりげなく気遣いのある接客は、都々井さんらしい居心地のよさだろう。コロナ禍以降は、お土産寿司の需要がかなり増えたようだ。五反田ヒルズ内のスナックから、寿司のお持ち帰りや出前も注文できる。

<お店情報>

すし処都々井
〒141-0031 東京都品川区西五反田1-9-3 リバーライトビル半地下

 

食堂 とだか/立呑み とだか

2年以上予約待ちの店として五反田随一の人気店となった「食堂 とだか」は、カウンター9席のみの小さな料理居酒屋。同フロア対岸にある2号店の「立呑み とだか」は、当初ふらっと入れる立ち飲みの店だったが、予約が増えたため、カウンター8席+テーブル1卓(4席)に改装された。実は、両店を初めて取材したメディアは、私が編集長を務める品川経済新聞だ。

 

▼西五反田に和食店「食堂 とだか」 店主自ら元スナックを改装
https://shinagawa.keizai.biz/headline/2444/

 

▼西五反田に「立呑み とだか」 「食堂 とだか」向かいに出店https://shinagawa.keizai.biz/headline/2635/

 

独特な店構えとメニューが気になり、初訪問後はすっかりこの店にハマってしまった。料理は独創的で抜群においしく、気軽に寄れる近所の居酒屋として、オープン当初は週8回飲みに行ったことがある。晩ごはんタイムに飲み食いしたあと、上階のスナックに行き、客が引けた夜中に戻ってくると「うわ、また来た!」と笑う店主・戸高雄平さんの反応が面白く、ノリで通ってしまったのだ。

2015年当時の店内の様子。アラカルト+2~3杯飲んでサクッと楽しむ店だった。

食堂とだかが全国に知れ渡ったのは、2017年「孤独のグルメ Season6」最終回の影響だろう。店主役は俳優のムロツヨシさん。放送後、戸高さんはしばらくの間、来店客に「ムロツヨシです」と調子のいい挨拶をしていた。料理やお酒はもちろん、お客さんを楽しませる戸高さんの軽快なトークでファンがどんどん増え、気づけば次の予約は3カ月後、半年後、1年後と延びに延び、いまや1年に1回行けるかどうかである。

現在の営業スタイルは、2時間飲み放題コース(1人1.2~1.5万円程度)。1日2~3回転で、予約のキャンセルがあった場合は、FacebookやInstagramで当日予約を募集するが、わずか数秒から数分で埋まってしまう。グルメな友人づてで同伴させてもらうか、SNSに張り付いて秒でコメントするかしか、この店に行ける手段はない。

食堂とだか名物「ウニ・オン・ザ・煮玉子」にイクラを盛った贅沢な前菜。溢れたいくらは次の料理に混ぜて食べる。

料理は、定番の「ウニ・オン・ザ煮玉子」「牛ご飯」「マスカルポーネタワー」「子持ち昆布のフライ」から、お椀、魚・肉料理、デザートなど、季節の素材を生かしたメニューは随所にさまざまな工夫を凝らしている。お客さんを満足させたい店主の心意気が料理に込められ、食事後は完全に「腹パン」状態になるはずだ。コースはドリンク飲み放題で、ビール、サワー、日本酒、焼酎、ワイン、さらにはソフトドリンクまで、飲み物の品揃えも充実している。

食堂とだか名物「牛ご飯」。以前は五反田ヒルズ内のスナックに出前もしていたが、人気が出すぎて休止。

虎ノ門に3号店がオープンし、とだか一家は若いスタッフがどんどん育っているようだ。1店舗くらい、予約なしで入れる「立ち寄り とだか」みたいな店が誕生するのを心待ちにしている。

<お店情報>

食堂とだか
〒141-0031 東京都品川区西五反田1-9-3 B1
7,000円(平均)
立呑み とだか
〒141-0031 東京都品川区西五反田1-9-3 リバーライトビルB1

 

きになる嫁デラックス 五反田の嫁的小料理

自ら“嫁総長”を名乗る女将の平野アミさん(レミさんではない)が、複数のアルバイトスタッフとともに切り盛りするおばんざい居酒屋。同ビル2階に2号店「きになる嫁武道館」、東五反田・有楽街のど真ん中に3号店「きになる母館ニューヨーク」がある。

2016年6月13日オープンから、数カ月後の店内の様子。10人くらいが座れる台形型カウンターと、4人テーブル席(通称アリーナ席)がある。

個性的な店ぞろいの五反田ヒルズだが、その中でもかなり癖の強い店である。スタッフの手が足りないと、お客さんが食器の上げ下げや配膳を手伝ったり、セルフサービスタイムが発動したりするので、こういう雑な雰囲気が苦手な人には完全におすすめできない。性格がおおらかで寛容で何事も面白がれるような人なら、きっと好きになる店だろう。

「シュウマイ、食べる人~!」と募集をかけてから蒸すこともあるが、勝手に出てくることもある。

食事のメニュー表はなく、お腹の空き具合に合わせて、適当な量と種類のおばんざいを盛り合わせが出てくる。定番料理はどれもおいしく、せいろで蒸したシュウマイがお店の名物だ。個人的には「ちくわの向こう側」(※たらこ、マヨネーズ、しそを和えたちくわ)が大好きで、いつもお替わりしてしまう。

季節の仕入れでその日だけ出る特別料理は、Facebookページで事前告知することもある。満腹まで料理を食べて、飲み放題が付いて、上限4,500円(日本酒は別料金)。他のお客さんを巻き込む嫁総長のオン・ステージをぜひ楽しんでみてもらいたい。

<お店情報>

きになる嫁 デラックス
〒141-0031 東京都品川区西五反田1-9-3 リバー・ライト・ビルディングB1
4,000円(平均)

WEB予約もできる>

 

やきとり ももちゃん

五反田ヒルズの隠れた名店、やきとりももちゃん。ちゃんとした料金表があるので、安心して注文できる。串盛り、おでん、ビールやバイスなどをオーダーし、小1時間飲んで2,000円ちょっと。とても良心的な価格設定の店だ。

店内はカウンター8席とテーブル席が1つ。店主の人柄に惹かれて通っている常連さんは少なくない。

なんといっても、店主のももちゃんがとても感じのオヤジさんなのだ。お客さんと店主の距離がやたら近い五反田ヒルズにあって、ほどよい距離感を保ちつつ、にこやかに話をするときはするけど、一人で静かに飲みたい客はそっとしておいてくれる。注文をすると、とても丁寧で威勢のよい返事をしてくれるので、お客さんたちはみんな自然とニコニコしてしまう。そんな店なのだ。

五反田ヒルズという深いプールへ飛び込むなら、まずは腰洗い槽みたいな感じで、ももちゃんや都々井を利用してみるのをおすすめしたい。

<お店情報>

焼鳥ももちゃん
〒141-0031 東京都品川区西五反田1-9-3 リバー・ライト・ビルディング(ロイヤル・オーク・ホテル)GF

 

AOI

客の平均年齢がそれなりに高い五反田ヒルズの中でも、若い客層でにぎわうバー。店主が曜日替わり制で、それなりに常連さんも多いが、ガラス張りで店内の様子が見えやすいこともあって、初めてでも気軽に入りやすい。

カウンター正面に大きなモニターが備え付けられている。会話の流れで、好きなアーティストのMVをリクエストすることも。

チャージはなしで、ハイボール1杯800円。1杯の量はしっかり多めで、2軒目以降まったりと飲むのにちょうどよい店だ。オーナーの内藤さんは昼職が映像ディレクターで、非番の日でも客席でよく飲んでいる。店内の大きなディスプレーではいつもいい感じのMVが流れているので、音楽や映画の話をきっかけに、はじめまして同士のお客さんでも仲良くなれるだろう。

深夜1時頃、五反田ヒルズ前の公衆トイレで用を足していたら、「このあたりで、まだ飲めるバーはないか?」と話しかけてきた陽気なスコットランド出身の3人組。そのまま一緒にAOIで楽しく飲み、なぜか記念撮影することに。

<お店情報>

 

GAZE

隣のAOIとは対象的に、外からは店内の様子がまったく見えないバー。コロナ禍前は金・土のみの営業で、看板の明かりも消していたので、一見さんは絶対に入れないお店だったが、ここ1~2年で、オープンしているときは看板の明かりがつくようになった。ただ、一見ではやはり入りづらいだろう。

いつも看板の電灯がついていないので、店の外から見てもオープンしているのかどうかわからない。

マスターは昼職で建築の現場仕事をしている。一見さんにはちょっととっつきづらい雰囲気はあるので、いきなり扉を開けるのは少しハードルが高いかもしれない。馴染み客にはとても気のいいマスターがつくってくれるジントニックは、とてもおいしい。

<お店情報>

 

スナック 友(※未訪問)

AOIと食堂とだかの間にある黄色い扉が目印。

<お店情報>

 

Roco(※未訪問)

店名は、ひろこママの「ひ」を抜いて「ロコ」。

<お店情報>

 

あけの

ママが一人で切り盛りするカラオケスナック。コロナ禍初期の2020年春は休業支援金の申請をインターネットでしか受け付けておらず、明日葉(1F)のママと二人そろって困っていると相談されたため、私が代わりに手続きしたところ、「今度飲みに来てね」とママに声をかけてもらった。

五反田ヒルズの中央階段脇にあるオーセンティックなスナック。

そのご縁でお店にうかがったが、当時はカラオケを封印していたので、お互いマスクをしっかり付けながら楽しく談笑した。私以外は常連のおじさんが一人で来店していて、気軽に世間話。空いていれば一見さんでも普通に入れてくれるそうだ。

<お店情報>

 

Shoko(※未訪問)

食堂とだか、スナックあけののさらに奥にあるカラオケラウンジ。ボリュームが大きめなのか、五反田ヒルズ中央の階段を上り下りする時、常連さんの歌声がよく聞こえてくる。

<お店情報>

 

酒食事 かづ(※未訪問)

店の入口にかかっているのは、竹の絵をあしらった紺色の暖簾。店の前には料理のメニューが張り出されている。

<お店情報>

割烹 かづ
〒141-0031 東京都品川区西五反田1-9-3 五反田ロイヤルオークホテルB1F

 

ビストロ、とんかつ店、居酒屋、バー、スナックと、カオスな店が並ぶ1Fフロア

Bar Lagu

おおよそ五反田ヒルズっぽくない、雰囲気のよいワイン&ジンバー「Lagu(ラギュ)」。デート向き、あるいは一人でしっぽり飲むのに適した店だ。店舗面積は約10坪で、五反田ヒルズの他の店より2倍くらい広く、ゆったりした空間になっている。

ワインとジンの品揃えが豊富だが、1杯目は生ビールをおすすめしたい。うすはりグラスに注がれる「COEDO毬花-Marihana-」の華やかな旨さが味わえる店は希少だろう。お通し出てくる「燻製ナッツ」との相性も抜群。このワンセットだけでも十分満足できるが、もう1杯飲みたくなったら、マスターの安彦(あびこ)さんに次のセレクトを相談してみよう。ワイン、またはジンでオススメを聞くと、親切に教えてくれる。

店内には溢れんばかりにお酒が並んでいる。マスターと相談しながら次の1杯を決めるのも楽しい体験。

フードメニューは、「ブラータチーズとフルーツトマトのカプレーゼ」「生ハム」「ポテトフライ」など、お酒のつまみ中心。お腹がそんなに空いていないなら、おつまみは最小限にして、おいしいお酒を楽しむのが得策だ。なお、1杯2,000円以上のグラスワインも多いので、グイグイ飲んでしまうと諭吉さん1枚では済まない。

飲食店を評価する際、「コスパ」を重視する人が一定数いて、それは一つの尺度ではあるものの、ラギュの良さはそこでは測れない。マスターは日頃からお酒の研究に余念がないので、好みのお酒の話で盛り上がってみてほしい。

<お店情報>

バー ラギュ
〒141-0031 東京都品川区西五反田1-9-3 リバーライトビル

 

ビストロ Fujii

「五反田ヒルズに初めて行くんですけど、1軒目で食事するならどの店がいいですか?」と聞かれたら、B1Fの都々井(寿司店)さん、2Fの月。さん、そしてこちらのビストロ「Fujii」さんの3店を推したい。料理長(社長)のカナさんと、お酒担当のミキさんの2人が笑顔で出迎えてくれる。

五反田ヒルズで洋食&ワインを楽しむならこの店で! 土日は定休。

カウンターが5~6席、テーブル席は実質機能していないが、たまに立ち飲みスペースとして人であふれることもあるため、お店の人やほかのお客さんとの物理的&心理的な距離がすごく近い。カナさんとミキさんはとにかくおしゃべり好きなので、常連さんの多くはそのトークをつまみにお酒を楽しみに来ているのだ。

「牛ハラミ焼き」(1,500円)は赤ワインとの相性抜群。

正面の酒棚には「暴利多売」の立て札があるが、ワイン1杯600円~、「ポテトサラダ」=500円、「燻製チーズの盛り合わせ」=1,000円など、料金はきちんと表示されている。店の周年イベントや2人の誕生月祝いとなると、気前のよい常連さんが泡モノを開けさせられたりするので、運が良ければご相伴にあずかることも。

みんな大好きアジフライ! ビストロFujii特製のタルタルソースでいただきます。

シェフは独立前、本格的なフレンチの店で働いていたこともあり、料理はどれもおいしい。「アジフライ」「ナポリタン」「ラザニア」あたりが常連さんの定番メニュー。冬場は長崎の牡蠣が大量に入るので、ワインと一緒に楽しめる。

<お店情報>

Bistro & Bar Fujii
〒141-0031 東京都品川区西五反田1-9-3 リバーライトビル1F

 

PUB 栄

2020年2月放送の「出没! アド街ック天国」で五反田ヒルズが11位にランクインした際、お笑い芸人のケンドーコバヤシさんが通う店として紹介されたスナック。ケンコバさんは「栄ママは北川景子似」と熱弁し、同番組では、「年齢はヒミツ、好きな食べ物はマンゴーとパイナップル、好きな芸能人は神田正輝と山下智久」と、店のお客さんたちも知らなかった情報が開示された。

コロナ禍で閉店を検討するスナックも少なくなかったが、この春ごろからは賑わいを取り戻しつつある。

1Fの角部屋にあり、五反田ヒルズの標準的な店舗より2倍くらい広いので、数人の団体客がカラオケを歌いに立ち寄りやすい店だ。ボトルキープ、セット料金で、初回は1人7,000~8,000円、2回目以降はセット料金1人5,000円だったと記憶しているので、五反田ヒルズの中では良心的な価格帯のスナックである。

<お店情報>

 

High Spirits Bar

通称、ハイスピ。五反田ヒルズで一番ラフに楽しくカラオケを歌えて、カラオケを通じて知らない人と仲良くなれる店。店内には入り口側の壁に大きなモニターを設置し、壁際のカウンターを背にハイチェアに座るため、知らない人がカラオケを歌っていても、自然とその歌に聞き入ったり、何なら一緒に歌ったりできるようなレイアウトになっている。かなり独特の店構えだ。

「老人と子供のポルカ」(左卜全とひまわりキティーズ)を熱唱するおじさんたち。写真中央は、仕事をサボって飲みに来たロック酒場「ストーンコールド」のマスター。

店主のヒロくんは某大手IT企業を脱サラし、カラオケバーを開店した。モヒカンマッチョなので、一見ちょっとこわいお兄さんに見えてしまうが、五反田ヒルズの中で希少な常識人だ。ほかの店で酔っぱらい客がトラブルを起こしたら、店から出てきて仲裁に入ってくれるので、周囲の店主からの信頼も厚い。

店主は格闘技をしているので、ムキムキ。

私自身はカラオケがそんなに得意ではないのだが、カラオケ好きの友人が「歌いまくりたい!」とリクエストしてきたら、ハイスピさんに案内するようにしている。ちなみに、店主のヒロくんはメチャクチャ歌がうまい。お店にお客さんがいない時間帯に、ひとりでガンズ・アンド・ローゼズの「Welcome to The Jungle」を歌い上げているのをたまたま見かけて、プロすぎて鳥肌が立ちました。

<お店情報>

 

Bar PEACE

ちょっとスナックっぽい雰囲気はあるが、バー。カラオケはない。30~50代の常連客が多く、曜日や時間帯によっては満席になる人気店だ。カウンター8席のみ。1人か2人での来店がちょうどよく、多くても4人以内じゃないと、なかなか入れないだろう。

「く」の字型のカウンター。目黒川側の窓からは、東急池上線五反田駅を発着する電車が見られる。

メニュー表はなく、カウンターにずらりとウイスキーが並んでいるので、マスターの冬野さんにその日の気分と好みで相談すれば、おすすめの酒を出してくれる。1ショット800~1,200円程度、4~6杯飲んで5,000~7,000円くらいだろうか。五反田ヒルズの飲み歩きで最後に行き着くことが多い店なので、その辺の記憶はいつも曖昧だ。

「うちの店、7周年記念ウィークなんだよね! 泡、飲みたいよね!」と、満面の笑みでオーダーを取るマスター。

ワインの用意もあるが、冬野さん以外の人が飲んでいるのをほとんど見たことがない。ちょっとおめでたい話が持ち上がると、シャンパンを開けてくれるお客さんが多いため、運が良ければごちそうしてもらえることもある。

<お店情報>

 

とんかつ満天(※2023年6月「きになるき」オープン予定)

五反田ヒルズの中でも、食事メインでしっかり食べられるお店。そして、唯一ランチ営業をしている貴重な店でもある。ビル1階のエレベーター前の店で場所もわかりやすく、食事メインの一人客も気軽に入りやすい。

席数は、カウンター6席とテーブル4席が2卓。カウンターだけの店が多い五反田ヒルズの中では、4人まで、または8人までならテーブル着席で飲めるので、そういった意味でも重宝するだろう。店の入れ替わりが少ないこのビルの中では少し珍しく、ここ5~6年で、オーセンティックバー → ダイニングバー → カキ酒場 → とんかつ店に変わっている。

平日昼メニューと日・祝のランチは、ごはん・キャベツのお代わりが1回まで無料。

豚肉は「白河高原清流豚」で、脂身がそれなりにありながらも口当たりはさっぱりしている。塩だけで食べても十分うまいはずだ。とんかつはもちろんビールにも合うが、ハイボールで油をさっぱり流すのも良き。

平日のランチロースカツ定食1,000円で、夜や日祝は上ロースカツ定食1,590円など。土曜定休。五反田ヒルズの楽しさははしご酒だと思っていたが、ランチや晩ごはんでちょっと立ち寄れる貴重な店だ。

<お店情報>

 

と、本稿を用意しているうちに、とんかつ満天さんは今年4月末で契約を更新しないという情報が入ってきた。しっかり食事できる貴重な店だっただけに、悲しい……。

しかし、同時にうれしいニュースとして、一昨年9月まで渋谷で営業していた季節料理と焼酎の名店「きになるき」の入店が決定。店主の正田さんは、五反田ヒルズ「きになる嫁 武道館」でしばらく間借り営業していたが、正式にこのビルの中で店を構えることになったのだ。

渋谷・道玄坂上にあった「きになるき」で、熟成マグロの撮影タイム。この様子が五反田ヒルズでレギュラー化される。

「きになるき」は上記リンク先のとおり、ブログ「ネタフル」を運営するコグレマサトさんが「平成最高レストラン1位」として激賞している。五反田ヒルズでの正式出店を心から歓迎したい。

 

美亭

カウンター8席の居酒屋「美亭(よしてい)」。4年数カ月前、弊社の社員が「美亭ガンダムナイト」を取材させてもらったお店だ。

店主のNOXさんこと塩谷(えんや)さんは某有名料理店で修業したのち、五反田西口近くの物件で実兄とともに料理店を開業。その数年後、お兄さんが就職して会社員になり、そのまま一人で店を続けるにはちょっと広すぎると考え、店のダウンサイジングを図って五反田ヒルズに引っ越してきた。

真冬にふぐのひれ酒を注文したら、ビールジョッキで豪快に登場。NOXさんはふぐ調理師免許を持っている。
テレビ番組「人生最高レストラン」(TBS)で、SHOWROOM社長の前田祐二さんが絶賛した美亭の「ピーマンとチーズの肉巻き」(通称:ピーチー)は1本250円。

ドリンク1杯400円~。ちょっとつまむ料理が多いが、塩谷さんの料理の腕前は確かで、どれもおいしい。そして、安い。串焼きは鳥も豚もいろいろあるが、個人的にいつも注文してしまうのは魚串(サバ・マグロ・ハラス)1本150円。ご飯ものは、鯛茶漬け、しらす丼、チャーハンなどさっと作ってくれる。

ゴマ油とネギと卵の黄身をさっと混ぜてかき込む究極の「しらす丼」。
シンプルに卵と少量のネギだけで炒めた至高のしっとり系チャーハン。

塩谷さんは一見コワモテだが、人懐こくて気さくなマスターだ。大の西武ライオンズファンで、シーズン中で試合のある日はiPadで野球中継を流している。野球、ガンダム、テレビ、エンタメなど、飲みながら他愛もない話を楽しめる居酒屋として、一人でも比較的入りやすい店だろう。

<お店情報>

 

ちょいと、ぷらっと

くみママが切り盛りするカラオケスナック。「ちょいぷら」さんは一見さんお断りで、同じフロアの美亭さんかハイスピさんに何度か通い、客として飲みに来ているくみママと親しくならないと入れない(と言われている)。いつのぞいても盛況でなかなか入れなかったのだが、昨年12月に初めて入店することができた。

美亭で顔なじみの常連さんに誘ってもらい、ちょいぷら初訪問。1軒目は一人で飲んでいても、顔見知りとそのまま一緒にどこか2軒目に行くのは五反田ヒルズあるあるだ。

店内のカウンターは毛筆体の「し」の字で、席数は8~9席。なかなか個性的なレイアウトになっている。喫煙可。カラオケも歌えるが、くみママと飲みながらおしゃべりするのが楽しい店だと思う。

キープボトルは、「サントリー角」=4,000円、「シーバスリーガル」=8,000円、「大分むぎ焼酎 二階堂」=3,500円など。赤ワインボトル=3,000円。ウィスキーや日本酒はショットで700円から。常連さんで成り立っているお店だけに、「うちはボトルを流したりしないよ」(くみママ)とのこと。

<お店情報>

ちょいと、ぷらっと
〒141-0031 東京都品川区西五反田1-9-3 リバーライトビル1F
4,000円(平均)

 

香代(※未訪問)

コロナ禍以降の約3年間、ほどんどシャッターが下りたままになっている。

<お店情報>

 

BOSS

「スナックには何があるのか?」と問われて3つ挙げるとしたら、ママ、酒、カラオケだろう。

ただ、実はカラオケのないスナックがある。カラオケのないスナックはスナックじゃないというコアなスナック愛好家もいるかと思うが、個人的には知らないおじさんの微妙なカラオケを聞かされるよりは、店の人や常連さんたちと世間話をするのが好きなので、「BOSS」にはかれこれ6年は通っているし、なんなら五反田ヒルズの店の中でもっともお金を使っている店だ。

真っ赤な鉄の扉の横にあるのぞき窓から店内の様子を伺っていると、BOSSママとよく目が合う。

BOSSママの綾乃さんは、数年前まで大手保険代理店に勤務していたが、定年を迎えてスナック一本で生活することにした。五反田ヒルズのスナックのママたちは破天荒タイプが多いが、BOSSママはもっとも常識人である。お客さんはもちろん、周囲のお店への気遣いもきめ細かく、曜日替わりのチーママたちにも慕われている。

壁や天井は黒で統一され、カウンターは鮮やかな赤。曜日替わりでチーママがカウンター内に立つ。

お酒はウィスキーやブランデーなど洋酒が中心で、焼酎やワイン、瓶ビールを用意している。初めてなら、チャージ+ショットでも全然大丈夫で、常連になったらボトルキープを試してみると良いだろう。ボトルは1本5,000円~で、セット料金は男性が1人4,000円、女性は1人3,000円。お酒を飲みながら楽しくおしゃべりする店なので、お店の人に1杯ごちそうする機会も少なくない。そういうコミュニケーションを楽しめる人には向いている店である。

希少なウイスキーが手に入ると確保しておいてくれるので、キープボトルが2本、3本と貯まってしまいがちに……(苦笑)。

BOSSママは気さくで話しやすく、スナック初心者にも優しくしてくれるので、カラオケがなくてもOKなら、五反田ヒルズで一番入りやすいスナックだろう。曜日替わりのチーママ数人は異なるキャラの持ち主なので、それぞれ常連さんのファンがついている。

<お店情報>

五反田ヒルズのスナック「BOSS」が抱える、アフターコロナの期待と不安 – 品川経済新聞

 

ゆたか(※未訪問・閉店、2023年5月上旬「uta. BOSS」オープン)

五反田で約55年営業したが、2022年12月末で閉店。2023年5月上旬、隣の「BOSS」が2号店のカラオケスナック「uta. BOSS」をオープンする。

<お店情報>

 

スナック 明日葉

五反田ヒルズの中で、一番スナックらしいスナックに連れて行ってほしいとリクエストされたら、明日葉さんに案内することにしている。海外メディアから「日本のオーセンティックなスナックを取材したい」と相談されて明日葉さんに案内したところ、記者たちは明日葉ママのユニークな接客に手を叩きながら大はしゃぎしていた。

フランスの雑誌記者とフォトグラファーが来店したときの様子。後日届いた見本誌のスナック特集では、見開き写真でフォトジェニックな明日葉ママが掲載されており、よくわからないうちに世界デビューを果たした。
お酒のコースターはCD。裏返してタイトルを確認すると「そんなもん、見ないでよ!」と明日葉ママに怒られるので、試してみて。

ボトルキープは時価なので、明日葉ママに要確認。セット料金は1人4,000円で、カラオケ無料。明日葉のママはビールが好きで、1本ごちそうすると+1,000円。料理のメニューは特になく、何も言わないと手料理が勝手に出てくる。これが料金に乗っかっているのかどうかは、会計時までよくわからない。お腹がいっぱいなら、食べ物は断っても大丈夫だ。

明日葉さんはいわゆる「世話好きのママ」で、カウンターに座っている間は絶えず話しかけてくる。静かに飲むよりは、楽しく酔っ払いながらおしゃべりしたい人に向いている店だろう。ママはカラオケがとてもうまいので一緒に歌いながら楽しんだり、2~3人の気の合う仲間と飲みに行ったりしてみてほしい。

<お店情報>

 

ロック酒場 ストーンコールド

特徴的な飲食店が並ぶ五反田ヒルズの中で、ひときわ異彩を放つバーが「ストーンコールド」だ。扉を開けると、左手にはバーカウンターが8席、右手にはMAX8人の団体客が座れるテーブルが2卓。五反田ヒルズの標準的な店舗2物件分の広さなので、それなりの人数が多い2次会でも比較的入りやすいだろう。

店の外壁には、デヴィッド・ボウイやQUEEN、プリンスなどのポスターが貼られている。

ロック酒場の名のとおり、店内では60~80年代のロック・ミュージックが延々と店内で流れている。マスターは日本有数のQUEENマニア。バーなのでスナック用の通信カラオケセットは置いていないが、実はレーザーディスクでQUEENの曲だけ歌えるスペシャルサービスがある(あまり知られていない裏メニューだからか、私が実際に目撃したのは一度だけ)。

ドリンクは洋酒が中心で、オーソドックスなカクテルを揃える。お会計は、2~3杯飲んで、チャージ込みで2,500~3,500円。音楽の話題を楽しめる人なら、一人でふらっと入りやすい店だろう。マスターはあまりカウンターの中におらず、たまに店内でもギターを弾いたりしつつ、遅い時間に顔を出すといつもフラフラに酔っ払ってカウンターに突っ伏して静かに寝ている。

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五反田ヒルズ最上階! ますます入りづらい店が待ち構える2Fフロア

備前焼 古里

五反田ヒルズの和食屋さん。この道35年。店主の塩野さんは不動前で青果店を営み、毎朝早くから大田市場で仕入れをして、夜はこちらの店を一人で切り盛りしている超働き者だ。そして、当飲食ビル組合の会長でもある。

カウンターに座って塩野会長と対面。別の店に飲みに行くと、会長とばったり顔を合わせることもある。

店内はカウンター4~5席に、小上がりの6人テーブルが1卓。メニューは魚や野菜中心で、コース料理=4,000円~、ドリンク1杯500円~とお手頃価格なので、五反田ヒルズの穴場と言ってもいいだろう。信楽焼をメインに、器にもこだわっている。

「ぐるなびの取材なんですけど」と説明し、コロナ禍での飲食店経営について質問したところ、塩野さんは「最初の緊急事態宣言が解除されてから、若い子がネット予約で店に来てくれるようになったんだよ。ほら、『食◯ログ』って知ってるだろ? うちみたいな店がネット予約を始めて客なんて来んのかよって半信半疑だったけど、やってみたら意外と予約が入るんだよ。『食◯ログ』ってすごいな!」と、まったく意に介さず貴重な体験談を教えてくれました。

<お店情報>

古里
〒141-0031 東京都品川区西五反田1-9-3 ロイヤルオ-ク2F

 

和食 日本酒 月。

コロナ禍真っ只中の2020年11月22日にオープンした日本酒と和食のお店。五反田ヒルズのどの店よりも明らかに内装にお金をかけており、とても高級感がある。

店長の平見さん(右)と料理長。

店長の平見さんは、2011年に五反田で「和酒バールAGI」を始めたが、その物件を契約したのが東日本大震災の2日前。2019年には同じく五反田で、より広い1階路面店を借りて2軒目の「曲宴あぎ」をオープンした。しかし、コロナ禍で家賃負担が重くのしかかり、店のダウンサイジングを決意。五反田ヒルズに移転してきた。

ミナミマグロの「刺し身(大トロ・中トロ・赤み)」(1,500円)。

約10坪の店内にはカウンター6席ほか、掘りごたつの座敷2部屋はそれぞれ4人、6人(少し詰めれば8人)入れる半個室で、店内には砂利道や灯籠(とうろう)まである。私が仕事関係の友人を何度か連れてきたところ、みなさん一様に「とても五反田ヒルズの店とは思えない(ちゃんとした店ですね)」と驚いていた。

宮崎牛の「A5サーロイン炙(あぶ)り三種」(1,800円)。
季節の土鍋御飯。牡蠣がプリプリ&トロ~ンでした。

お酒は日本酒メイン。店主の平見さんにおすすめをリクエストすれば、その時々の仕入れ状況に合わせてうまい日本酒を提案してくれる。料理をしっかり食べて、美味しいお酒を飲んで、1人6,000~8,000円くらい。座敷は特に人気が高いようなので、予約したほうが良いだろう。

<お店情報>

月。
〒141-0031 東京都品川区西五反田1-9-3 リバーライトビル2F

 

カラオケバー hanare/ガールズスナック SAiGO NO TORIDE

隣り合っているこちらのお店は、経営元は同じ。五反田ヒルズ内の飲み仲間に誘われて2回行ったことはあるが、少し前から「たこやき hanare」という看板が出ているので、営業形態を変えたのか、あるいは特別イベントを開いているようだ。

同じ系列の店が2軒並んでいるので、混み具合によってお客さんやスタッフが行き来しているようだ。

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美咲

五反田ヒルズに通い始めた直後、初めて入ったカラオケスナック。当初は同じ2階の「ギャレー」跡だったが、少し広い角の物件に移転した。

五反田ヒルズのスナックの中でも、もっともお金をかけていそうなネオン看板。

私はこれまで3回来店し、カラオケ歌い放題で1回6,000円ほどだった。ただ、料金表がない店特有の謎会計報告をよく見聞きするお店なので、入店するなら最初にきちんと価格を確かめましょう。五反田ヒルズおじさんからのアドバイスだよ。

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きになる嫁 武道館

B1Fにある小料理屋「きになる嫁デラックス」2号店。1号店が人気を博し、満席で客を帰してしまうのはビジネスチャンスを逃しているな……と考えた嫁総長・平野アミさんが、2019年10月にカラオケが楽しめる店として“五反田の武道館”を開いた。

オープン当初から大賑わいだったが、約半年後に始まったコロナ禍の影響で、休業開けはしばらくカラオケを自粛することに。その後も感染症対策をしつつ、貸し切りなどではカラオケを復活させている。

「きになる嫁 武道館」で撮影。「きになるき」店主の正田さん(左)と「きになる嫁デラックス」店主の平野アミさん。夫婦っぽく見えるが、そうではない。

1号店に加え、五反田駅東口エリアの風俗案内所2階にある3号店「きになる母艦ニューヨーク」と店内カメラで中継しており、店員の数が足りない時は、お客さんが自主的に手酌でレモンサワーを注いで飲む画期的なシステムを採用。おばんざいは1号店から運んでくれる。

きになるき名物「熟成マグロ盛り」。味がついているので、そのまま食べるか、塩を少し付けて食べる。

なお、ここ1年ほどは、ビルの取り壊しで移転先が見つからず路頭に迷っていた渋谷の人気居酒屋「きになるき」が、週4日で間借り営業していた(2023年6月、五反田ヒルズ内に店をオープン予定)。飲食店同士が協力したり、困った仲間を助けたりしている様子を見聞きすると、一人の客としてなるべくそんなお店に足を運びたくなるのが人情というものだろう。

<お店情報>

きになる嫁 武道館
〒141-0031 東京都品川区西五反田1-9-3 リバー・ライト・ビルディング2F
4,000円(平均)

 

のむ処

焼鳥居酒屋。店主の野村さんは毎日、20時の開店時間になっても五反田ヒルズの他店(ほとんどB1FのAOI)で飲んでいるため、店主や常連客に「おい野村、そろそろ店開けろよ!」と注意され、「わかった、わかった、これ飲んだらすぐ開けるから!」なんて言い返すシーンが日常風景になっている。

のむ処の引き戸を初めて開けるのは相当な勇気がいるだろう。顔見知りの常連客しかいないので、たまたま迷い込んだ人にどう接したらいいのか、店主・野々村さん自身がまったく準備できていないのだ。

「えっ……誰? うち、初めて??」みたいにキョドった対応をされ、店に入れてもらえないこともあるが、常連さんがうまいこと声かけてくれてスルッと入れることもある。一見さんお断りの店に入り慣れている人じゃないと、なかなかハードルの高い店である。

店内はとにかくごちゃごちゃしていて、カオス。こういうのが嫌いじゃない客だけが集まる。

食事はほぼ用意していない。信濃屋【※】で仕入れた鶏肉を使った焼き鳥はとてもうまいのに、炭をおこすのを面倒臭がって、あれこれ理由をつけて焼いてくれない。常連でもめったに食べられないため、いつしか「焼かない焼鳥屋」と呼ばれるようになった。野村さんとそれなりに顔なじみの私でも、初来店から6年で3回しか食べたことがない。

ドリンクメニューは、ビール、焼酎のお茶割り、レモンサワー、ハイボールなど。メニュー表がないので値段はよくわからないが、おそらく1杯500円均一。2~3杯飲んで、野村さんに1杯ごちそうしても、2,000円を超えたことがないので、たぶんそれくらいだと推測される。会計はいつも500円単位。

店の現状を淡々と書き出すとロクでもない店なのだが、夜中になるとなぜか人がわらわらと集まってくる。五反田の飲食店関係者が仕事終わりに1杯飲みに来たり、他の店が閉まったのでちょっと立ち寄ったり。これもひとえに、どうしようもない酔っぱらいだけど、野村さんの不思議な魅力なのだろう。五反田ヒルズ最後の砦として、コロナ禍でもマイペースに営業している。

【※】五反田ヒルズから目黒川を挟んだ向こう岸にある創業約70年の鶏肉専門店。新鮮な大山鶏を仕入れているため、地元の人がひっきりなしに買い物にやってくる。

<お店情報>

隠れ家だいにんぐ のむ処
〒141-0031 東京都品川区西五反田1-9-3 リバーライトビル2F40

 

すなっく らくがき/CAママの店 ギャレー

隣り合ったスナック姉妹店。看板の目立つ位置に「CAママの店」と書かれているので、気になって中をのぞいてみる一見さんが多いようだ。私はそれぞれ1回ずつ行ったことがあるが、1時間歌い放題のプランでカラオケを楽しむにはちょうどいい店だと思う。

「らくがき」が1号店で、こちらの「ギャレー」は2号店。東五反田にも姉妹店「品川酒役所」がある。
「スナック美咲」が3軒隣に引っ越したので、「CAママの店」のコピーを前面に押し出たこの店ができた。

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Bar さるー(※旧 西浦)

西浦さんは、私の母親と同い年くらいのママが一人で切り盛りする和風スナックだった。客層も穏やかで、カラオケは気分が乗ったときだけ歌えばいい雰囲気なので、かれこれ5~6年ほど焼酎ボトルを入れて月2~3回のペースで通っていたのだ。

小腹が空いていたら、煮物などちょっとした手料理を食べさせてくれる。締めの一品として出てくる「半田麺」(※稲庭うどんくらいの太さのそうめん)が抜群にうまかった。

残念ながら、西浦さんは昨年10月25日で店を閉め、スナックを引退して五反田を離れてしまった。こうやって馴染みの店が消えていくのは悲しいが、いつかそんな日が来るものだ。今までありがとうございました。

父親・母親世代の常連さんが仲良くカラオケで歌う様子を眺めながら飲む焼酎はとてもうまかった。

西浦さんの跡には、同ビルの複数の店でバイトを掛け持ちしていた舞台俳優で友人の猿山智也さん(通称:さるちゃん)が新たにバーをオープンした。前々から店をやりたいと相談に乗っていたので、西浦さんが店を閉めるタイミングで、居抜きベースで借りられないか、私が橋渡しをすることになったのだ。

1月26日にオープンした「Bar さるー」。漬け込み酒など、他の店では飲めない独自のお酒を用意している。

駅近なのに手頃な賃料の五反田ヒルズは、外に不動産情報が出る前に知り合いつながりで借り手が決まる。ディープな付き合いがあってこそ、商売につながっていくのだ。こういう場面に遭遇するのも、飲食街に出入りする面白さである。

<お店情報>

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結(ゆい)さんは会員制スナックなので、残念ながら一見さんNG。50~60代の常連さんが部下を連れては、3~4人で仲良くカラオケを楽しんでいる。

「結」に限らず、スナックは外から中の様子が見られない店が多いので、どうしても入りづらく感じてしまう。

結ママとは、飲食街の集まりや他の店で顔見知りだったので、美亭のマスターと2人でのぞいてみたことがある。扉を開けると、「おお、めずらしいじゃん!」ととてもチャーミングなハスキーボイスのママが笑顔で迎えてくれた。

ボトルを1本入れて、セット料金は1人5,000円。初訪問がコロナ禍直前だったこともあり、それ以来ボトルを置きっぱなしになってしまっている。また行きたいなと思いつつ、いまだ果たせず。

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BAR あすなろ(※未訪問)

半年前くらいにオープンした新しい店。閉店したジャズバーの内装をほぼ居抜きで利用しつつ、廊下側に窓を設置して開放的な雰囲気に。

<お店情報>
なし

 

志みづ

和風の小料理スナック。友人2人がこの店で飲んでいて、急に呼び出されて一度だけ入店したことがあるが、いかんせん3~4軒目だったので記憶が定かではない。

落ち着いたカウンターのカラオケスナック。ママの夫が店に立つこともある。

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SNA シーナドリーム(※未訪問)

1階下のストーンコールドとは打って変わって、シンプルな外観。10坪の店舗なので、五反田ヒルズのスナックの中ではかなり広い店になる。

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コワーキングスナック Contentz

2016年7月オープン。約4年間は、私が経営する編集プロダクション・有限会社ノオトが経営母体で、五反田のコワーキングスペースCONTENTZの“分室”として営業していたが、コロナ禍をきっかけに週1でチーパパとして出勤していたライターの佐藤章太さんに事業継承した。店名とスタッフはそのまま変わらず引き継いでいる。

開店当時から禁煙なのは、スタッフが誰もタバコを吸わなかったから。カウンターに立つママやチーママは曜日交代で、昼間はライターやOKなど、それぞれ本職がある。

2016年オープン当初のコワーキングスナックCONTENTZ分室の様子。五反田ヒルズの中では現在も、特に若いお客さんが多い店だ。

カラオケは会話を遮ってしまうので、あえて設置していない。電源、Wi-Fi完備で、「コワーキング」の店名どおり、飲みながら仕事をしてもOK。ただ、酔いが回ってくると「まあ、続きは明日でいいか!」なんて気分になってくるので、正直なところガッツリ仕事するには向いてない店だと思う(店を始めた当事者が言うのもなんですが)。

開店当時からコワーキングスナックContentzを運営してきたサエコママ。

チャージは1,000円、ドリンクは1杯500円~。ボトルキープは、サントリーウイスキー角=5,500円、フォアローゼズ=8,800円などで、セット料金は男性=3,000円、女性=2,000円。滞在時間が短いなら、ショットで1~2杯飲むのがちょうどいいだろう。ママやチーママたちとカウンター越しの会話をじっくり楽しむなら、ボトルキープをおすすめしたい。

<お店情報>

 

まとめ

2020年春先のコロナ禍騒動から今日まで、数多くの飲食店が閉店に追い込まれました。そういった事情を考えると、お気に入りの飲食店に通えるのはとても幸せなことなのかもしれません。五反田ヒルズ全店制覇には未だ至らずですが、読者の皆様もぜひお気に入りのお店を見つけて、これからも大好きな飲食店を応援していただければ幸いです。長編を読了いただき、誠にありがとうございました。

 

筆者プロフィール

宮脇淳(みやわき・あつし)

有限会社ノオトの代表&編集者。年間500軒くらい酒場に足を運んでいる。プロフィール写真は、50歳の誕生日に行きつけの店の前で撮影されたもの。この瞬間の記憶はない。

Twitter:@miyawaki
会社HP:有限会社ノオト

 

編集:ノオト

Source: ぐるなび みんなのごはん
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