コロナがあってもなくても、ひとりでごはんを食べるココロ社です。
中年男性おひとり様の、すっぽん鍋のハードルの高さよ
最近、からきし鍋を食べていない。コロナで会食がしづらいからかな……と思ったが、コロナ前にも鍋を食べた記憶がほとんどない。
決して鍋が嫌いというわけではない。むしろ好きなのだが、鍋料理を食べる友達がいなかった、ただそれだけのことである……。
たとえば火鍋を食べたいと思ったときは麻辣刀削麺を頼んだり、もつ鍋が食べたいときはもつ煮定食を頼んだり……完全一致ではないにせよ、鍋料理の代用メニューのようなもので「鍋食べたい欲」をなだめて暮らしてきたのだが、どうにも満たされない欲求があった……それは「すっぽん鍋」である。すっぽん鍋の代用となる料理はちょっと思いつかないし、友達の多い人でも「すっぽん鍋食べたい」と言っても応じてくれる人はそう多くないのに、いわんや友人が少ないわたしをや……。すっぽん鍋の、意外に淡白な味、ぷるぷるした食感、そして元気になりそうな感じがするところ……。もう10年は食べていない。
以前、荒木町で撮ったすっぽんの写真を眺めながら考えた。
意識して「すっぽん鍋をひとりで満喫できる店」を探さない限り、わたしは一生すっぽん鍋にありつくことはない……。
すっぽん鍋をひとりで違和感なく食べられる店は薬膳の店だった
鼻息も荒く検索を始めて小一時間経って出てきたのは「10ZEN」というお店の品川店。「基本的にはふたり以上ですがおひとり様でも嫌な顔はしませんよ」という感じではなく、完全にひとり用の鍋料理をランチで定食のように供してくれる……まさにわたしの求めていた店である。
品川駅の回廊になっていない方から降りて歩くと店が見えてきた。
このお店はニホンドウ漢方ミュージアムの中にある薬膳レストランだった。
すっぽん様と10年ぶりの再会を果たす
開店直後の11時半にうかがったが、入店するのに少し並んだ。ほぼ満席。期待通りカウンターに案内された。およそわたしの予想通り、店内の女性率は高かったが、わたしと同じく中年男性もいる。仲間がいたと思ったのだが向こうはそう思っていないだろう。わたしよりも少し前に入店したらしく、慣れた様子で「ベジタブルスープランチ」を頼んでいた。わたしはもちろん、すっぽんスープランチである。
ほどなくしてセットが登場。
鍋はすでに火の通った状態で供されるが、コンロに火をつけてもらえるので、温かいまま最後までいただける。
このおしゃれなゼリーは……すっぽんの血である。
お店では沸騰してから鍋に入れて溶かすことが推奨されているが、初めてすっぽんを食べる方は、溶かす前に少しすっぽんの肉をいただいておくとよいと思う。なぜかというと、すっぽんの身自体は、そのビジュアルとは裏腹に淡白な味わいなのだが、その血はそれなりに生臭いから。すっぽんの肉の味そのものをたしかめるなら血を入れる前がおすすめである。
かつてすっぽん鍋の専門店でいただいたとき、すっぽんの血をいただいたが、そのときはオレンジジュースを混ぜたものを供され、わたしは「単体で飲むのは覚悟がいるのだな」と悟ったのだった。
わたしなりにできる限りフォトジェニックな感じに撮ったすっぽんの肉である。
久しぶりにいただいたすっぽんは記憶と同じく、クセがなくて、おまけに記憶より食感がプルプルしている。高級食材でなければ毎日食べたいところである。
そして血のゼリーを鍋に入れる。
ネギ・ナツメ・枸杞(クコ)の実などで賑わっているので、これらといただくと、クセのある血もちょうどよくいただける。
うさぎ状の謎の部位もトゥルットゥルな食感で感動。
すっぽんのランチセットは2,500円だが、大勢ですっぽん鍋を食べに行ったときよりも安いのに、じゅうぶんにすっぽんを堪能でき、通いつめてしまいそうである。
なお、ごはんはお替り自由。山盛りが似合うごはんではないけど、たくさん食べてしまった。
薬膳の店ならではのメニューも充実
冒頭からお話ししているとおり、すっぽん鍋を満喫しに来たのだが、体によさそうなメニュー満載で、ランチセットとは別料金だがサラダバーまである。なんだか健康によいことを徹底したくなっていろいろ頼んでしまった。
このお茶は妃美茶。名前からして中年男性向けでないような気もするが、薔薇・ルイボス・柿の葉・ラベンダー・蓮の葉・枸杞の実・ジャスミン……成分が好きなものばかりなので注文してしまった。オールスターみたいな組み合わせなのに味はまとまっていて爽快だった。
また、サラダバーは上にのせるものたちの充実ぶりがありがたい。
ひとつひとつ効果が書いてある。個人的には枸杞の実と菊の花をサラダにのせると、それだけでごちそうになることが大きな発見だった。甘い枸杞の実と菊の花の官能的な香りに食欲をそそられ、おかわりしてしまった。
かくして土曜の昼間からかなり満腹になるまで食べてしまったのだが、体は軽く、翌日もスッキリ目覚めることができた。
カレーでは辛くないのに汗が吹き出てくる
いやぁ~久しぶりのすっぽんはよかった……と思ったのだが、薬膳といえばカレーもあるよね……と気になって、次の週に薬膳カレーランチをいただいてきた。
カレーは3種類、チキンとポークと季節の野菜があるのだけれど、せっかくなので3種。冬なので野菜のカレーはかぼちゃだった。
ごはんのボリュームが、たくさん食べる人からすると可愛らしいけれども、やはりお替わり自由なのである。
かぼちゃのカレーは辛さはほとんどなく、ココナッツミルクとの相性が最高。チキンカレーもインド料理店で食べるカレーよりもクローブがたっぷり入っていて、薬膳に興味がなくても「ザ・薬膳」と思える味。
ポークカレーはポークビンダルーのように酸っぱいのだが、八角の甘い香りも重なって、特別な味。ポークビンダルーは疲れたときによくいただいていたのだが、無意識に薬膳を求めていたということなのかもしれない。
食べているときは夢中で食べていたのだが、店を出て駅に向かって歩いていると猛烈に熱くなり、真冬なのに上着を脱いでしまった。それなのにまだ汗が止まらない。辛いカレーを食べたときは時々そうなるが、さっき食べたカレーはあまり辛くなかったのに不思議。これが薬膳の力なのだろうか……中学生のころ読んだ筒井康隆の『薬菜飯店』を思い出す体験だった。
おいしいものを探したら体にもよいものを食べられることになって、外食とはかくあるべし、と思ったのだった。
今回行ってきたお店
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※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください
ライター。主著は『マイナス思考法講座』『忍耐力養成ドリル』『モテる小説』。ブログ「ココロ社」も運営中。
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Source: ぐるなび みんなのごはん
おひとり様でもすっぽん鍋を満喫できる薬膳のお店を見つけてしまった