新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2020年から多くの飲食店がテイクアウトを始めた。行列ができるような人気店も、テイクアウト中心の営業に切り替えたりしていた。
普段はお店に行かないと食べられないメニューが、自宅で楽しめるのだ。
ということは、人気店のテイクアウトを集めれば、自宅で夢のようなコラボを実現できるのでは? あの店のアレと、あの店のソレと、あそこのコレを合わせたら……まさに夢の食卓が完成するじゃないか。
というわけで、さっそく人気店のテイクアウト探しに出発した。
テイクアウトでおかず探し ~肉編~
金欠により最近はもっぱら白米に塩を振って食べている筆者。そろそろ塩以外のおかずがほしい。となると、やはり「肉」だろう。
訪れたのは、本場ブラジルスタイルのシュラスコが人気の「バルバッコア 青山本店」。
入口には有名人のサインがズラリ。ブラジル料理の店だけあって、サッカーブラジル代表のスターも来店しているようだ。
ネイマール選手にロナウジーニョ選手……
神様ことジーコ様もご降臨。神様の字体は意外とかわいい。
そんな「バルバッコア」でテイクアウトするのは、こちらの塊肉「ピッカーニャ(イチボ)」だ。腰からお尻にかけての赤身肉。やわらかい肉質で、一番人気なんだそう。
バルバッコアのテイクアウトは、緊急事態宣言の1週間後からスタート。売上は徐々に伸び、メニューも拡大。今では塊肉のシュラスコをはじめ、ハンバーガーやカレーライス、ステーキ重、さらにはバーベキューセットまでテイクアウトできる。
というわけで、まずは「肉」をゲットした。
【取材協力】
バルバッコア 青山本店
※テイクアウトメニュー、営業時間については店舗にご確認ください
テイクアウトでおかず探し ~魚編~
極上の「肉」が手に入ったので、次は極上の「魚」が欲しい。
普段はテイクアウトをやらない一流店の「肉と魚」をおかずに、白米をもりもり食らう。今だからこそできる贅沢だ。
訪れたのは中野駅から徒歩7~8分の「マグロマート」。店名通り、マグロを専門に扱うお店で、予約困難といわれる超人気店だ。
テイクアウトメニューもマグロだらけ。マグロ好きとしては迷ってしまうが、今回は家ではなかなか食べられない「骨つき中落ち」をオーダー(仕入れ状況により、欠品の場合あり)。
骨についた身をスプーンでこそいで食べる、豪快な部位だ。
――テイクアウトはいつから始められたんですか?
平島さん:緊急事態宣言の時、お店を閉めて始めました。正直、テイクアウトのみの販売だったので厳しかったですよ。
――現在、テイクアウトの売れ行きはいかがですか?
平島さん:感染者数に応じて上下しますが、近所のお客様を中心に継続的にご購入いただいています。最近はデリバリーも始めましたよ。
――新たな手を打たれていますね。テイクアウトで一番人気のメニューはなんですか?
平島さん:突出してこれが人気というよりは、どの商品も満遍なくご好評いただいておりますね。季節によってもメニューは変えています。ただ、ぜひ「まぐろちらし」は食べてもらいたいです。1,200円の「小」でも、3種類のマグロの部位が楽しめますよ。
――専門店だけあって、いろんな部位が楽しめるのがいいですよね。それに、ちゃんとプロが目利きしたマグロだから間違いない。
平島さん:ありがとうございます。個人的に「お肉」の違いってわかりやすいと思うんですが「お魚」の違いって意外とわからないと思うんですよ。例えば、何の種類か、どこの産地か、冷凍なのか。あまりピンとくる方って少ないのかなと。
――たしかに。僕は特に全然わからないです。
平島さん:その目利きを我々は担っているので、お店でもテイクアウトでも多くの人に美味しいまぐろを楽しんでほしいです。
最高の「肉」に続き、最高の「魚」もゲット。本日の晩餐はすごいことになりそうだ。
【取材協力】
マグロマート
※テイクアウトメニュー、営業時間については店舗にご確認ください
味噌汁もほしいよね
おかずは揃った。が、今回はこれを「定食」という形で味わいたい。となると、必要なのは「味噌汁」である。インスタント味噌汁でもいいが、せっかくいい肉と魚があるのだから“格”を揃えたい。
訪れたのは浅草の「MISOJYU」。カフェのようなおしゃれな外観だが、味噌汁専門店である。
「MISOJYU」では、有機野菜を中心に日本全国から仕入れた食材を味噌汁に使用。また、そのこだわりの味噌汁が店内だけでなく、テイクアウトでもいただけるのだ。
こちらでは「いつもと違ういつもの豆腐のおみそ汁」を購入。その、いつもと違いっぷりを自宅で存分に感じたいと思う。
【取材協力】
MISOJYU
※テイクアウトメニュー、営業時間については店舗にご確認ください
「お肉×「お魚」×「味噌汁」の最高定食
役者は出揃った。急いで家路に着くとしよう。
着いた。いつになく豪華な料理にテーブルもびっくりしていることだろう。
- バルバッコアの「ピッカーニャステーキ」
- マグロマートの「骨つき中落ち」に「まぐろちらし」
- MISOJYUの「いつもと違ういつもの豆腐のおみそ汁」
通常であればこれらが同じ食卓に並ぶことはない。通常ではない状況により、このコラボが実現した。だからといってウイルスに感謝などしないが、今はこの状況を素直に楽しみたい。
まずは、バルバッコアの「ピッカーニャステーキ 」(250g1,800円)から攻める。
味付けは岩塩のみだが、醤油ベースのガーリックソース、ピメンタという唐辛子ソース、玉ねぎのビネガーソースが付いてくる。相当なボリュームがある肉塊なので、いろんな味変ができるのは嬉しい。
見た目は野性味あふれるピッカーニャ。しかし、そのワイルドさとは裏腹に、肉質はきめ細かく柔らかい。厚めにカットしても、たやすく噛み切れ口のなかでほぐれる。赤身肉ならではの旨味を、岩塩のみというシンプルな味付けが引き立てている。
続いて、マグロマートの「骨つき中落ち」(1,800円 ※サイズによって変動)。
改めて見ると、すごい迫力だ。
骨についた身をスプーンでこそいでいく。家でやる作業じゃない。市場や厨房でやることだ。でも、楽しい。こそいだ身は、そのまま口へ運ぶ。こんな豪気なことを1,800円でできるなんて素晴らしい。
1本のマグロから取れる中落ちはわずかとのこと。そんな希少部位を一人で満喫するなんて、バチ当たらない?
魚に対し「ジューシー」という表現が適切かわからないが、それくらい脂がすごい。食感も場所によってプリプリだったり、ねっとりとしていたり様々で楽しい。
いったん味噌汁を飲んで落ち着こう。MISOJYUの「いつもと違ういつもの豆腐のおみそ汁」(780円)。どこがどんなふうに「いつもと違う」のだろうか?
なんでも、こちらの豆腐は全国豆腐品評会で金賞を受賞した青梅のお豆腐屋さん「とうふ工房 ゆう」のものだそう。とにかく濃厚なのだ。たっぷりのあおさ、梅肉の酸味もアクセントになっていて美味しい。箸休めではなく主役を張れる味噌汁だ。
たまらず白米を投入。普段は塩で2~3杯いっている。
この肉と魚と味噌汁があれば100杯は堅い。嘘。でも5杯はいける。
ここで一気に身をこそぐ、こそぎまくる。そして、それを白米に全乗せすれば
特盛り鉄火丼の完成である。ちなみに鉄火の名の由来は、マグロの赤身が熱せられて赤くなった鉄に似ているから、鉄火場(賭博場)で食べられていたからなどの説があるという。へー。
これを一気に食う。
かきこんでもかきこんでも、マグロがなくならない。無限マグロ。いや無限ではない。でも、こんなにたらふくマグロを食べたのは初めてだ。
蓋を開けると、マグロがキラキラと輝いていた。左からマグロの「脳天」「中トロ」「赤身」。なお、日によって部位は異なるそう。え、明日も行こうかな。
どれも美味だが、特に脳天。口に入れた瞬間にほのかな甘みと上品な脂が感じられ、気づいたら溶けている。脳天ってこんなに美味しかったのか……。
というわけで、今回は人気店のテイクアウトを集め、自宅で夢のようなコラボ飯を実現した。みなさんも、感染リスクに配慮した上で好きな名店の味を集めて、最強の食卓を作ってみてほしい。本当に最高だから。
著者プロフィール
小野洋平(やじろべえ)
1991年生まれ。編集プロダクション「やじろべえ」所属。服飾大学を出るも服が作れず、ライター・編集者を志す。自身のサイト、小野便利屋も運営。
http://yajirobe.me/
Twitter:@onoberkon
Source: ぐるなび みんなのごはん
極上の「塊肉」と「マグロ」と「味噌汁」をテイクアウトして、最強コラボ定食を自宅で完成させる