朝から呑める完璧な立ち食い蕎麦屋「ホーチャン」は、三宿エリアにおけるキングオブ隠れ家ではないだろうか

交通の便がよいとはいえないものの、それが逆に価値を高めている街やお店は珍しくありません。

 

世田谷区の三宿というエリアもそうでしょう。

東急田園都市線の池尻大橋駅と三軒茶屋駅の中間あたりに位置し、都心からもやや離れている。世田谷区の中でもどこか下町感のあるエリア。90年代以降は「隠れ家」というキーワードに惹かれ、芸能人も数多く集まってきていました。そのせいか、三宿・池尻・太子堂エリアにある飲食店は、そこはかとなくセンスの漂うお店ばかりです。

 

そんな三宿エリアで、どうしてもおすすめしたいお店があります。

 

それが「ホーチャン」

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池尻大橋駅から徒歩5分。

お洒落タウンの三宿らしからぬ風体に驚いたと思いますが、このまま読み進めてください。

 

上の看板に目をやると「立喰そばうどん」「カレーの店」の文字が。

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「いったい何屋さんなの」――そう思いましたよね?  謎を解明すべく、さっそく店内へご案内しましょう。

合わせて、おすすめポイントを発表していきますよ。

 

ポイント①「立喰」と記しておきながら、椅子が完備されている

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立ちながら、せわしなくお蕎麦をすするのもよいけど、ゆっくりとお蕎麦を味わえるのは、やはり嬉しいですよね。

 

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厨房とカウンターには厚手のビニールカーテン。

 

ポイント②お蕎麦が立ち食いのレベルをはるかに超えて美味しい

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実は、ホーチャンの本業は立ち食い蕎麦屋ではなく、「宝録堂食品工業」という製麺所!

特別に、お店の裏にある製麺所を見学させていただきました。

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超絶本格的な製麺機が、目の前にズラリ。

ここで製麺した各種麺類を、都内の飲食店に卸しているんです。

もちろん、ホーチャンでもここで打った新鮮な生のお蕎麦を、すぐさま茹でて提供しています。

 

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つまりは、必然的にお蕎麦のクオリティが高くなるというわけ。

 

ポイント③お酒が呑める…しかも朝から!

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この日も、午前中からカウンターでグラスを傾ける常連さんのお姿を発見(許可を得て、撮影させていただきました)。

この後ろ姿、どう見ても昼呑み&朝呑みの黒帯、いや達人!

 

粋な大人は蕎麦屋で呑むなんてことを言ったりしますが、ホーチャンはなんと8時の開店からお酒を呑むことができるんです。

 

実は、世田谷区三宿界隈には昼呑みできるようなお店が極端に少なく、あったとしてもお洒落感満載なカフェなどに限られるため、明るいうちから気兼ねなく酔えるような、ひなびたお店は貴重なんです。

 

世田谷の、しかも三宿で、お蕎麦をすすりながら飲めちゃうなんて素敵でしょ?

 

というわけで、まずはお蕎麦&お酒を頼んじゃいましょう。

せっかく打ちたてのお蕎麦ですから、迷ったら「ざる」か「もり」がオススメ。

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日本酒とお蕎麦のセット、なんという絶景だ! 

 

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見てください、このつややかさ!

 

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ズズズっとすすると、打ちたて・茹でたて・締めたてのお蕎麦の美味しいこと。

しっかり角が立っていて、歯ごたえ、舌触り、喉越し、香り…これは立ち食いレベルじゃない!

おつゆも濃すぎず、出汁とお醤油のいい香りが鼻腔をくすぐります。なんとも乙な風味です。

 

ポイント④蕎麦&うどんだけでなく、一品料理が充実

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 ご覧ください、このラインナップ。立ち食い蕎麦屋らしからぬメニューもありますね。

もはや『酒場放浪記』で吉田類さんが訪れてもおかしくないレベル。蕎麦屋としてだけでなく、赤提灯としての顔も持っていると言っても過言ではないでしょう。

 

それではここで、ホーチャンのお酒&おつまみの楽しみ方を一例として紹介します。

 

「焼肉(豚)」(500円)、「冷やしトマト」(250円)

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くぅー、たまりません。

少し甘めに味付けされた焼肉を口に放り込み、追ってトマトを口へ運んで口内調味。

あとはお酒で胃へと流し込めば、至福のひと時です。

ちゃんとホッピーを置いてくれているのも嬉しい。

 

お次は、

「アジフライ」(1尾150円)、「ハムカツ」(300円)

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通常、アジフライもハムカツも2枚で提供されますが、1枚ずつの注文にも応えてくれるのがありがたい。

そして特筆すべきは、そのクオリティ。

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アジフライは、揚げたてサクサク&フワフワ食感で、青魚特有の臭みも皆無!

 

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ハムカツは、薄いタイプと厚いタイプのいいとこ取りをした2枚重ね!

最高of最高です。

 

続いて、こんなおつまみはいかがでしょうか?

「かつ煮」(600円)

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幅広の揚げたて豚かつを、甘辛いつゆで炊いて卵でとじたのち、刻み海苔を散らした一品。

少し濃い目の味付けがお酒にマッチします。

噛めばジュワッとおつゆが染み出し、そこに海苔の風味が相まって、完全にお酒泥棒。

 

もちろんお蕎麦屋さんなので、こんなおつまみもおすすめです。

「天ぷら盛り合わせ」(600円)

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イカ、エビ、アジ、ししとう、なす…揚げたての天ぷら計5品で600円ってどうかしてるゼ!

 

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天つゆもバッチリ美味で、たまらんです。

 

はい、ここまででホーチャンのおつまみの充実ぶりがじゅうぶん伝わったと思うのですが、

絶対に外せないおつまみがありまして、それがコチラ!

 

「自家製 餃子」(350円)

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餃子があるお蕎麦屋さんというだけでも相当珍しいのに、立食い蕎麦屋さんに手作りの自家製餃子って、史上初レベルで激レアじゃないでしょうか!?

 

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餡は、豚挽肉の旨味、キャベツの歯ごたえ、玉ねぎの甘味、ニラの風味、ニンニクの香りと素材感たっぷり。

甜麺醤やオイスターソースなど、本格中華の調味料を駆使し、絶妙なバランスで下味がしっかりつけられているので、タレは酢醤油ではなく酢ラー油がオススメ。

 

餡の素材感&下味のバランス、それぞれ素晴らしいのですが、最大の注目点は皮です。

そう、この皮もホーチャンの本業である製麺所で製造したもの

薄皮であるにもかかわらず、つるっ&もちっと食感で、非常にクオリティが高い。

まさに皮から餡まで、すべてが本当の“自家製”餃子なのです!

 

 

いま一度明記しておきますが、ここは呑兵衛の街として有名な赤羽や立石、武蔵小山ではなく、お洒落タウン・三宿ですからね。

しかも、立ち食い蕎麦屋さんでこの感じ、最高すぎるでしょ?

 

 

興奮がおさまりませんが、呑んだ後はシメですよね。

入り口の看板に「カレーの店」と書いてあったのを覚えていらっしゃいますでしょうか?

 

そう、こちらはお蕎麦屋さんでありながら、カレーにも並々ならぬ自信をお持ちのご様子…ということで、

 

「カレーライス(ミニ)」(400円)

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カレー専門店のカレーとも、家庭のカレーとも、インドカレーとも、欧風カレーとも、洋食屋のカレーとも一線を画す、お蕎麦屋さんのカレー、見参です。

食べると、野菜の甘さの向こうにスパイスの辛さ、スパイスの辛さの向こうに優しさ、優しさの向こうに昭和が見えてくるようで、ホッとします。

ずっと同じ味で仕込んでいるそうで、わざわざ「カレーの店」と記したくなった理由が伝わるひと皿です。

 

ちなみに、4月~9月限定とはなりますが、「自家製ひやむぎ(450円)」も提供しております。こちらがまた絶品。過去のひやむぎに戻れないシコシコ感と異次元の世界を楽しむことができますよ。

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どうですか、お洒落な街・三宿ではなく、ホーチャンのある街・三宿に引っ越したくなったでしょ?

 

それにしても…

  • 立ち食い蕎麦屋なのに、本業は製麺所
  • 立ち食い蕎麦屋なのに、椅子がある
  • 立ち食い蕎麦屋なのに、朝8時から呑める
  • 立ち食い蕎麦屋なのに、おつまみが充実している
  • 立ち食い蕎麦屋なのに、自家製餃子がある
  • 立ち食い蕎麦屋なのに、「カレーの店」とも名乗っている

…といった調子で、謎の多いホーチャン。

 

気になることが多すぎるので、お店の方にお話をうかがいました。

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女将の三枝清子さん(右)と娘の小山田里江子さん。

 

f:id:linakawase:20210110135013p:plainお蕎麦もお料理、おつまみも美味しかったです。お店の創業はいつですか?

 

f:id:linakawase:20210526100217j:plain 昭和30年(1955年)に製麺所である宝録堂食品工業を創業しました。その後、立ち食い蕎麦店のホーチャンを始めたのは昭和42年(1967年)です。私の父・三枝滋が2代目になります。

お店の名前「ホーチャン」は“宝録堂”から取りました。立ち食い蕎麦を始めた当初は、かけそば20円、かけうどん20円、天ぷらそば35円、たまごそば35、この4つのメニューのみ扱っていました。

 

f:id:linakawase:20210110135013p:plain約50年前は、そんなお値段だったんですね。製麺所は、最盛期だと何店くらいに卸していたのでしょうか?

 

f:id:linakawase:20210526100217j:plain 50店舗に卸していました。従業員も16人ほど雇っていて、お昼の賄いの量もたくさん。嫁いできてから「これは、大変なところにお嫁に来ちゃったなぁ」ってようやく気づいて(笑)最近は、昔より卸し先が少なくなりました。ですが、いまでも長いお付き合いが続いているうどん屋さんとか、池尻大橋の某有名中華料理屋さんがあります。

 

f:id:linakawase:20210110135013p:plainその、池尻大橋の某有名中華料理屋さんにも卸している皮を使った自家製餃子、絶品でした。昔からあったのでしょうか? こだわりなどありましたら、ぜひ教えてください。

 

f:id:linakawase:20210526100217j:plain 餃子がメニューに加わったのは、平成25年(2013年)です。以前は家族で食べるための餃子として作っていましたが、一度に作る量も多かったので、常連さんにお酒のつまみとして(裏メニュー的に)出していたところ、「美味しい!」という声をたくさん頂戴したので、正式にメニュー化することにしました。

 

f:id:linakawase:20210110135013p:plain自家製餃子のほか、おつまみ類が本当に美味しくて、最高でした!

 

f:id:linakawase:20210526100217j:plain 昔は麺類のみで営業していましたが、昭和58年(1983年)から定食を始めたんです。そして平成5年(1993年)にビールを出すようになってから、おつまみをメニューに少しずつ加えていきました。

 

f:id:linakawase:20210110135013p:plainどれも作りたてで美味しかったです。シメに食べたカレーも、とても沁みました。看板の「カレーの店」という表記にもこだわりを感じますね。

 

f:id:linakawase:20210526100217j:plain 昭和50年(1975年)にカレーがメニューに加わり、昭和58年に先代から受け継いで、私が作るようになりました。8種類の調味料、にんじん、そして沢山の玉ねぎ、にんにくを入れています。バナナやリンゴを入れるときもあります。45年以上変わらない味としてお客様に好評です。

 

 

まさに“店に歴史あり”。さまざまな変遷を経て、現在のホーチャンに至っていることがよくわかりました。

製麺所が立ち上がった1955年は、時代背景的に見ると映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で描かれていた頃にあたります。その12年後、立ち食い蕎麦店のホーチャンがオープン。当時のお写真をお借りしました。

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1967年といえば、前回の東京オリンピックから3年後。

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日本が夢と希望に満ち溢れていた時代です。

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かけそば20円、かけうどん20円、天ぷらそば35円、たまごそば35円…価格を聞くと、隔世の感がありますね。

創業当時とは店構えもお値段も変わりましたが、打ちたてのお蕎麦の美味しさは変わりません!

 

新型コロナ禍以降、リモートワークが普及するなど、働き方も大きく変わりました。自分のペースで仕事が進められるようになり、平日でも日中に時間ができたという方も増えたのではないでしょうか。働き方の変化に合わせて、呑み方も変えたっていいじゃないですか!

「今日は明るいうちから一杯やるか!」となったときは、安くて気軽に呑める、本当に美味しいお店が一番です。

たとえば、三宿のホーチャンのような。

 

この店に行けば、女将さん&娘さんが打ちたて・茹でたてのお蕎麦、揚げたての天ぷらやフライ、焼きたての餃子、45年以上変わらない味のカレーを用意して、アナタを迎えてくれることでしょう。

絶品お蕎麦と心温まるお料理を肴にカウンターで一杯。

朝飲み&昼飲みの達人になれる店、それがホーチャンです。

 

 

※追伸:メニューのほとんどがテイクアウト可能とのこと。さらにさらに、生麺もテイクアウトできます。

そのお値段、な、なんと、ひと玉100円!最高すぎる…。

大晦日ともなれば、生蕎麦と揚げたての天ぷらを求めて地元の人々で大賑わいとか。

 

(編集:漆原直行)

 

紹介したお店

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください

 

著者プロフィール

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クック井上。

フードコーディネーター・野菜ソムリエ・食育インストラクター・BBQインストラクター等、7つの食の資格を持つ料理芸人。 料理教室講師・食のイベントMC・レシピ開発・食品プロデュース等を務め、“最強料理芸人”の異名をとる。EX「『ぷっ』すま」やTBS「爆問パニックフェイス」の料理バトルでは優勝を果たしている。その他の出演歴は、NHK「グッと!スポーツ」・NTV「得する人損する人」・TBS「はなまるマーケット」・TX「TVチャンピオン極」等。

Twitter:@cook_inoue
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Source: ぐるなび みんなのごはん
朝から呑める完璧な立ち食い蕎麦屋「ホーチャン」は、三宿エリアにおけるキングオブ隠れ家ではないだろうか

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