ある日、久しぶりに「道の駅」に行きたいという気持ちになった。
道の駅。車を持つ者にとってみれば、それは馴染みの場所だろう。しかし、車を持たない者にとっては、それは幼き日の想い出かもしれないし、そこまで昔ではないにせよ、誰かに車に乗せてもらった長距離旅行の途中に寄るものである。
旅のできない日々がずっと続いていたので、道の駅へ行きたいという気持ちは、もしかすると、「遠くへ行きたい」という気持ちの変奏なのかもしれないが、東京で道の駅ってあったりするのかしらと思って検索してみたら、八王子にあったのである。その名は「道の駅 滝山」。
そして、道の駅なので、道ではない駅からは距離があるものの、バスで10分程度であると知り、早速行って、数年分の「道の駅分」を摂取して満足したので共有させていただきたい。
車がなければバスに乗ればいいじゃない
「道の駅 滝山」は京王八王子駅あるいはJR八王子駅からバスに乗って「道の駅滝山前」で降りる。「ひ08」などと書いたバスに乗ればOK。
京王八王子駅から乗ると始発停留所なのでワクワク感がある。
きた!遠足のバスがくるような雰囲気で来てくれた。
さきほどの「ひ08」であるが、「ひよどり山トンネル経由」という意味での「ひ」で、結構な長さのトンネルを通る。
トンネルを出たらすぐ道の駅なのだが、トンネルを出たときには完全に旅行気分に切り替わる。
ほどなくして道の駅に到着。
桑並木通りと新滝山街道が交差する場所にある。
ふつう、道の駅はどこかに行くときの経由地で、ちょっとした買い物や食事をしてから目的地に行くものだけれど、わたしにとっては、この「道の駅 滝山」が本日の目的地で、不思議な気分。
道の駅の駐車場は午前10時でほぼ埋まっている。
建物に入ると八王子の特産物がひしめきあうショッピングゾーンがある。奥にはイートインのコーナー。土日祝日には建物の外に地域に関係なく安くておいしい野菜を扱っているテントがある。
とにかく野菜の種類が多く、八王子に大自然を見出す
八王子の野菜は、本当にここは東京都なのかと思うほど種類が多い。たしかに八王子は広いけれども、「豊かな大地」など、北海道に贈りたくなる言葉が浮かんでくる。
とくに芋類の種類が多く、ヤーコン、八っ子など、ふつうのスーパーでは見かけないものもある。
ここでたんまり買って浅川沿いの北野公園のバーベキュー場で芋煮をしたら楽しいに違いない。
八王子産の果物のジャムやコンフィチュールもあった。たしかに八王子の奥の方を歩いていると民家の庭でキウィが成っているのをよく見かける。
銘菓もたんまり用意されている。
そして八王子=肉のイメージはあまりなかったけれど、たしかに豚のブランド「東京X」ならば、八王子でも育成されているのだろう。わたしの知らない八王子の姿だ。
そして米もある。
ときどき八王子の奥の方の里山に水田があって、ここで採れたお米はどこで買えるんだろうとぼんやり思っていたのだが、ここで買えたとは……しかもいまは新米の季節。ラッキーなことこの上ない。
外のお客さんを見ていると、お菓子などのおみやげを買っている人よりも、野菜を持ちきれないくらい買っている方が多く、おそらく旅の途中ではなく、近所に住んでいる人が、安くておいしい野菜を求めているのだろう。
イートインのコーナーにはテラスもあって道の駅らしさ満載
イートインのコーナーは道の駅と同じ、朝9時からである。
今回寄ったのは「やさいの食卓 八農菜」。お店の名前を見ただけで、八王子の野菜を満喫できるに違いないと確信した。
先に席を確保してから注文するシステム。テラス席もあるので、早めにいってテラス席を確保したいところである。
メニューは、うどん・そば・カレー、そして八王子といえばラーメン……と、幅広くて悩んでしまう。行かれる方はメニューを予習しておくとよいかもしれない。
うどん・そばの価格設定に驚くが、八王子の豊かな自然に心打たれたので、八王子の野菜が食べられるメニューを選ぶ。
野菜の天ぷらは、季節によって異なるが、八王子の野菜が使われていて、このときは茄子が八王子産とのことだった。
テラス席で天ぷら定食をいただく。
東京なので絶景とは言わないまでも、開放感があってすっかり旅行気分。
小鉢も野菜がたくさんで、やさいの食卓の面目躍如。
ほかにも気になるメニューがあり、別の日に、「大地のトマトカレー」をいただいた。
こちらは八王子産のトマトが使われている。
実際に食べてみると、辛さはほとんどなく、フレッシュな酸味にあふれている。トマトがふんだんに使われていることが味からも伝わってくる。
そしてつけあわせの野菜、パプリカやナスもおいしい……道の駅のイートインのカレー=味が濃いカツカレーというイメージで、それはそれで楽しいものだけれど、このカレーは野菜いっぱいで望外の喜びである。
見た目、ごはんの量は軽めに見えたので、玉葱ライスも頼んでみた。
八王子ラーメンの系譜である生のたまねぎが丼になっているのは初めて見た。
たまねぎに、鰹節が和えてあって、辛味がほとんどなく、フレッシュな甘み、そして濃厚な黄身……これは八王子流のたまごかけごはんといえるのかもしれない。
買ったのは、あけび、花梨、ルバーブのジャム、そしてお米。
花梨は家の軒先に成っているのを時々見かけて、いいなぁお風呂に入れたいなぁと思っていたので3つも買えて満足した。あけびは小粒だけれど安かったので購入。ジャムは紅茶のお供にした。米はさっそく炊いてみたのだけれど、新米ということもあって瑞々しかった。
八王子のあちこちを散歩していて見かけたものばかりで、謎が解けた気がしてよかったし、これから八王子を散歩するのもいっそう楽しくなりそう。
八王子駅から行って帰ってきて2時間程度の短い旅だったけれど、八王子の自然の豊かさを実感でき、濃密な体験ができた。
道の駅欠乏症で悩んでいる方には強くおすすめしたいし、八王子の魅力を凝縮した場所でもあるので、八王子が好きな人もぜひ行ってみてほしい。
今回紹介したお店
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください
著者プロフィール
ライター。主著は『マイナス思考法講座』『忍耐力養成ドリル』『モテる小説』。ブログ「ココロ社」も運営中。
ブログ:ココロ社
Twitter:ココロ社 (@kokorosha) | Twitter
Source: ぐるなび みんなのごはん
「東京唯一の道の駅」は、八王子の大自然を実感できる名所だった