こんにちは。ライターの斎藤充博です。好きなマンガ雑誌はモーニングです。
みなさん『定額制夫の「こづかい万歳」 ~月額2万千円の金欠ライフ』はご存じでしょうか(以下、『こづかい万歳』)。
『こづかい万歳』は「こづかい制度」でがんばっている人たちの生活ぶりをレポートしている人気マンガ。僕も読んでいるのですが、この中に強烈なインパクトを残すキャラクターが存在します。
それは作者である吉本浩二先生の「奥様」です。
吉本家のこづかい制度の番人として、吉本先生を容赦なく断罪したり、「トップバリュの『CHU-HI STRONG レモン』の水割り」(缶チューハイをさらに水で割る)という独自の飲酒スタイルを持っていたりと、目が離せない。さまざまなキャラが登場する『こづかい万歳』の中でもっとも魅力的なキャラクターといえるでしょう。
そして何よりも、奥様はラーメンチェーン「日高屋」への愛がすごいんです。
日高屋を目の前にして100%の笑顔。そして「オアシス」というモノローグ。僕も普通に日高屋は好きで、時々行きますが、ここまで思い入れが強いとは……?
そこで、今回はモーニング編集部に連絡を取り、奥様にインタビューをさせていただくことになりました。もちろん「日高屋でお酒を飲みながら」です。リラックスした雰囲気で、奥様の独自の日高屋観と、『こづかい万歳』に対する思いを聞くことができました。
*以下、インタビュー時にはマスクを着用しております
日高屋では自由にするのが一番
奥様
吉本です。今日は楽しみにしてきました!
Y川
モーニング編集部のY川です。『こづかい万歳』を担当させていただいています。
斎藤
よろしくお願いいたします。吉本さんはいつも日高屋ではビールですか?
奥様
いつもは費用対効果を考えて、ホッピーを飲むことも多いですね。
斎藤
費用対効果?
奥様
ホッピーセット一つと、お代わりウォッカを2杯頼むと、生ビールを3杯注文するよりも安く上がるということですね。
※日高屋ではホッピーの中は焼酎ではなくてウォッカです
斎藤
いまの解説、早くも「こづかい万歳」みたいですね。でも、今日は「みんなのごはん」編集部の取材経費なので、費用対効果は考えなくて大丈夫です。
奥様
ありがとうございます。ホッピーを注文しちゃうと、少なくとも3杯はホッピーですからね。方向性が変えられないという不自由さにプレッシャーを感じることもあります。日高屋ではとにかく自由にするのが一番だと思っているので、いつも悩ましいところではあります。
斎藤
いつもは「費用対効果」と「自由」の間で揺れ動いているんですね。いきなり奥が深いような気がしなくもないです……。
ビールをあおる奥様。心の奥から不意に出てしまったような「はあ……。おいし……」が印象的でした。
奥様のおすすめメニュー
斎藤
奥様にまずは3品おつまみをオーダーしていただきました。この3品にはどういう意図がありますか? きっと経験に裏打ちされたの末のオーダーなのでは、と思っています。
奥様
前提としてですね、日高屋に来たらシメにラーメンを絶対に食べたい、というのがあるんですよ。焼きそばでもなく、チャーハンでもなく、汁に浸かったラーメンを食べたい。そこに向けてお腹のバランスを考えながら、注文をすることになります。だからそんなに量は食べられません。
斎藤
なるほど。そこでお腹を満腹にさせないように、小皿のおつまみを中心に頼んでいるということですね。
奥様
そうです。まずは「メンマ」ですが、これは安いんですよ。130円です。
斎藤
130円。安ッ!
奥様
この価格は、トッピングとしてラーメンに乗せる、という前提での設定なのかなとも思います。でも単品でも注文できる。
おつまみとしても群を抜いて優秀です。 盛りがよくて長持ちするんですよね。 それに「細切りネギ」を追加で注文して、メンマと合わせて食べるのもいい。細切りネギはちょっと醤油ダレがかかっていて、アレンジにちょうどいいんです。
斎藤
味濃くてうまい。確かに長持ちしますね、これは……。
奥様
「やきとり」もけっこう安くて、180円です。日高屋は「焼鳥日高」という焼鳥の業態もありますからね。信頼できる。甘い味付けで、おいしいですよ。
斎藤
このメニューは気になっていました。串に刺さない、珍しい形態ですよね。
奥様
そして「そら豆」。これは最近食べておいしかったので。枝豆はよくありますが、そら豆っていうのが、うれしいじゃないですか。
斎藤
確かに枝豆よりそら豆の方が酒場っぽい感じがあるかもしれない。
斎藤
餃子も注文していただきました。
奥様
今回は6個の餃子を注文しましたが、一人で来るときは「3個餃子」を注文しています。「3個餃子」の値段は130円。これも相当安いです。
斎藤
餃子3個だけ焼いてくれるのって、ほんとありがたいですね……。家だったら絶対にないですから。それに日高屋の餃子って、肉汁がつまっていてけっこう満足感あります。
編集部Y川さんも日高屋好き
Y川
「ニラレバ」が来ました!
斎藤
ん? これは奥様のおすすめですか?
Y川
いえ……。私が好きで注文したというだけです。
奥様
私は一人で来るときは大皿料理を頼まないですね。これだけでお腹いっぱいになっちゃうので。
でも、今日は人と来ているから、こういうのも食べられて、うれしいな。野菜がパリッとしていておいしいです……。やっぱり家とは火力が違う。
Y川
このニラレバすごくおいしいですよ。レバーの独特なにおいが全くない。一流のシェフを雇っているのではないかと……(といって厨房を見つめる)。
斎藤
奥様に日高屋のお話を聞く取材のつもりだったんですが、確かにニラレバはうまいから、まあいいか……。
Y川
「イカ揚げ」です。
斎藤
これもY川さんのおすすめですか?
奥様
注文したのはY川さんですが、これは私もよく頼みます。もう本当に、衣にしっかりと味がついていて、衣だけで酒が飲めるくらいうまい。
それから、日高屋で揚げ物を頼むとキャベツとマヨネーズがついてきて、これもつまみになりますよね。
Y川
日高屋のキャベツいいですよね! 野菜がとれるので、だいぶ罪悪感が薄れます……。
斎藤
ひょっとしたらY川さんも日高屋がかなり好きですか……?
Y川
奥様が「日高屋への愛をつづったコラム」をときどき書かれているんです(『こづかい万歳』3巻に収録されています)。それを読んで好きになりましたね。
あと、女優の蒼井優さんも日高屋で飲むのが好きとテレビでいっていました。それも気になっちゃって……。
斎藤
影響されやすいタイプとお見受けしました。それにしても、けっこう日高屋ファン多い!
編集部H谷さんが選ぶ日高屋ガッツリメニュー
H谷
すいません、遅くなりました……。
斎藤
モーニング編集部のH谷さんは、僕がモーニングにマンガを投稿して以来、担当としてついてくれている方です。今回は特に呼んでいないんですが、日高屋と聞いて駆けつけてくれました。
H谷
モーニングでは『ハコヅメ』『ワールドイズダンシング』『ツインテッドシスターズ』などを担当しています。……今日は忙しくて昼飯食べられなかったんで、飯食っちゃっていいですか?
H谷
生姜焼きを注文しました。お腹減ってしまって……。
Y川
ざく切りの玉ねぎがうまいですね。食感がいい。
斎藤
小さなマカロニサラダがついているの最高ですね。サービス良すぎる。絶対に生姜焼きとあうし……。
Y川
それにしても「奥様の日高屋おすすめメニューを聞く」という企画だったと思うんですが、好き勝手に注文して方向性変わってしまっていますよね。ここは「日高屋の食べたことのないメニューを好きになってもらう」という企画はどうでしょう?
斎藤
それでもいいような気がしてきました。奥様、生姜焼きはいかがですか?
奥様
とてもおいしいと思います!
斎藤
日高屋の生姜焼き、合格です!
H谷
すいません、チャーハン行かせてください。
奥様
ちょっと甘めの味付けのチャーハンですね。おいしい……。
斎藤
H谷さんは完全に「食事」をしていますが、奥様は日高屋に食事にも行きますか?
奥様
週1くらいでランチにも行きますよ。もちろん「モリモリサービス券」もちゃんと持っています。
斎藤
すごい大量に持っている。麺大盛りが無料になったり、味付け玉子や温泉玉子のトッピングが半額 になる券ですよね。
奥様
このモリモリサービス券の中にはレジャー施設とタイアップしているものがあるんですが……。
斎藤
見たことあります。レジャー施設も割引になるんですよね。
奥様
そうです。レジャー施設は、夏はプール、冬はスキー場のように、季節に応じて変わるんです。モリモリサービス券で「四季の移ろい」を感じるのも、おつなものですよ。
斎藤
かなりマニアックな感覚かとは思いますが、ちょっとわかるような気もしますね……。
子育てのスキマに日高屋で飲むのがちょうどいい
斎藤
日高屋にはどれくらい前から行っていますか?
奥様
福島から進学で上京してきたときに、初めて行きましたね。日高屋とは20年近くの「つきあい」です。そのときはお酒は飲んでいませんでしたが。
斎藤
「つきあい」って言い方、シブいですね……。それにしても20年近くとは、吉本浩二先生よりもつきあいが長いんじゃないでしょうか。
奥様
それはそうですね(笑)。全然長い。最近では子育てのスキマ時間になんとか楽しみを見出したくて、日高屋でお酒を飲んでいます。そのおかげで、私と日高屋はより「強固な結びつき」になったように思えますね。
斎藤
子育てのスキマ時間に日高屋に行くというのは、どんな感じなんですか。
奥様
夫の原稿が終わって余裕のある夜に、子どもを見てもらいます。そのスキに一人で行く。家で晩御飯を食べないで、近くの日高屋で90分くらい飲みますね。
斎藤
なるほど……。マンガの中の「日高屋はオアシス」という表現がよくわかります。
日高屋のお客さんはみんな笑顔になっている
Y川
単なるちょい飲み需要だったら、ファミレスでも解消できますよね。なぜ日高屋なのでしょう? そこを説明していただくことで、奥様の日高屋愛が読み解けるような気がしますが。
斎藤
(モーニングの編集者がインタビュー深堀りしてくれるのラクだな……)それは是非お伺いしたいです。
奥様
ファミレスも最近では安くなっているので、価格的には日高屋とそこまで変わらないですね。ファミレスだと客層が若い人だったり、家族連れだったりして、私一人で飲んでいるのがちょっと浮いちゃうような気がするんですよ。
斎藤
確かに、日高屋なら一人で飲んでいてもそこまで不自然でないですもんね。
奥様
そうです。女性一人で飲んでいる人もよく見かけますし。それがすごく好きなところですね。
斎藤
そういえば『こづかい万歳』でも日高屋で飲んでいるお客さんの全員が笑顔になっているというコマがネットで話題になりました。
奥様
これ、バズっていましたよね(笑)。現実は笑っている人ばかりではないと思うんですよ。でも、私の目からはこう見えているんです。その感覚を私が説明して、夫が描いてくれています。
斎藤
なるほど! 奥様の主観に対して正確な描写だったんですね。いい話だ……。
奥様
特に私が飲んでいるような時間帯は、本当にみんなが楽しそうに見えるんですよ。
マンガに自分自身が登場するってどうなの?
斎藤
正直なところ、マンガに出てくる奥様はだいぶケンのある印象ですが、こうして実際にお話をしていると穏やかな印象を受けました。
奥様
確かに『こづかい万歳』を読んだ人がそう思うのは仕方ないと思います。
斎藤
マンガということで、奥様をちょっと誇張して描かれているんでしょうかね?
奥様
いえ、私に関して『こづかい万歳』で描かれていることは事実ではあるんですよ。 ただ、家庭のお金に関することがテーマですから、私もどうしても怒ったりする場面が出てくる。 それ以外の様子も知ってもらえれば、だいぶ印象は変わるんじゃないかな……。
斎藤
なるほど。切り取り方の問題ですね。
奥様
そうですね。でもそれはマンガのテーマ上、仕方のないことだと思っています。
斎藤
描かれる側としての「プロ意識」のようなものを感じます……。
奥様
それに、切り取られているのは怒っているところばっかりじゃないんですよ。マンガの中で、私が口紅を付ける仕草を描写してくれたり。
奥様
他にもメガネを接着剤で直しているところを描いてくれたり。意外とよく見ているんだな……と思いました。
斎藤
確かにありましたね。『こづかい万歳』を注意してよく読めば、吉本先生の奥様への愛情が垣間見えるかもしれません。
奥様
ふふ、そうかもしれません。
斎藤
……最後に、ちょっと気になっていることいいですか? 奥様のスマホケースに貼ってあるマンガのキャラのシールはなんですか?
奥様
これは『鬼滅の刃』の不死川実弥です。私、「実弥の女」(オタク用語で大ファンの意味)でして……。
「チゲ味噌ラーメン」に日高屋ガチ勢の矜持を見た
これは奥様がレモンサワーに水差しの水を入れて、ちょっとアルコール分を薄めているところです。 家では「トップバリュの『CHU-HI STRONG レモン』の水割り」(缶チューハイをさらに水で割る)を飲んでいるという奥様ならではの飲み方。ライブで見ることができて感激……!
奥様
今日は取材経費で食べられるということで、ちょっと贅沢しすぎたかもしれません…………。
斎藤
そんなに贅沢してましたっけ? でも、さすがこづかい万歳の奥様という気がします……。
やがて本日も「子育てのスキマ時間」ということで、90分ほどの制限時間がきて終了。名残惜しいですが、引き留めておくことはできず、解散です。
翌日にモーニング編集部のY川さんを通して、奥様が撮影したという「チゲ味噌ラーメン」の画像が送られてきました。
奥様は解散した後の帰り道に、家の近所の日高屋に駆け込み、いそぎチゲ味噌ラーメンを食べてから帰宅したそうです。どうしてもシメのラーメンは食べずにいられなかった様子。
それにしても、まさか日高屋から帰る途中で別の日高屋に行くとは……。奥様の日高屋愛はまさに「本物」だということがよくわかりました。
多くはない毎月のこづかいを、どう使ったら最大限楽しめるのか。〝セコ楽しい〟エピソード満載&節約術も学べちゃう。『定額制夫の「こづかい万歳」~月額2万千円の金欠ライフ』はモーニングで月一連載中。単行本は3巻まで発売中です。
『定額制夫のこづかい万歳 月額2万千円の金欠ライフ(3)』(吉本 浩二)|講談社コミックプラス
紹介したお店
取材協力:ハイデイ日高屋 / 講談社
著者プロフィール
Source: ぐるなび みんなのごはん
日高屋大好きな『こづかい万歳』のおくさまに聞く日高屋の魅力