世界には見たことも聞いたこともない料理が数多く存在する。お店でたまたまそうした料理に遭遇した時は、ためらわず注文することにしている。
例えば、先日訪れた韓国料理店でこんな鍋料理を発見した。
名前の響きが妙に気になりオーダーしたところ、とても美味しかった。以来、この店に来るたびにオーダーしている。
他のお店でも食べてみたいのだが、ネットで調べてみても「ブラッチョンゴル鍋」は全くヒットしてこない。店主のママさんいわく、ブラッチョンゴル鍋は韓国ではメジャーな鍋らしいのだが……。
そんな謎多きブラッチョンゴル鍋の詳細を知るため店を再訪問。改めて、ママさんにインタビューしてみた。
ブラッチョンゴル鍋ってなに?
――早速ですが、「ブラッチョンゴル鍋」について教えてください。
ママさん 「ブラッチョンゴル鍋」はブルゴギ、ラクチ(テナガタコ)が入った鍋のことです。味付けは醤油ベースで、甘辛いのが特徴です。うちでは日本人向けに味付けを調整していますが、辛さ、甘さ、薄さは好みによって変更しますよ。
――肉と魚介の両方が入った鍋なんですね。
ママさん 斬新な考え方ですよね。これらの食材を鍋にして食す習慣が始まったのは朝鮮後期なので、歴史はそこまで長くはないと思われます。
――ちなみに「ブラッチョンゴル鍋」の名前の由来は?
ママさん 「チョンゴル」は鍋という意味です。そのため、正式名称は「ブルゴギラクチチョンゴル」と言います。ただ、いつからかブルゴギの「プル」とラクチの「ラック」から、ブルラックチョンゴルとなり、プラッチョンゴルと呼ばれるようになりました。
ちなみに、韓国では鍋のことを「チゲ」と「チョンゴル」という2種類の呼び方をするんんですけど、チョンゴルはチゲより食材がたっぷり入っている汁ものを指します。
――韓国でも同じ具材ですか?
ママさん:プルコギとラクチは必ず入っています。野菜はお店や季節によって旬の野菜を使う時もあります。
――鍋だから、やっぱり冬に食べることが多いですか?
ママさん 冬だけでなく、夏バテ防止のスタミナ料理として暑い時期に食べることも多いです。ラクチの旬も5~7月で、足が細く長くなって美味しいんですよ。
――ちなみに、ブラッチョンゴル鍋ってここ以外で聞いたことがないんですけど、韓国ではけっこうメジャーな料理なんですか?
ママさん 知られてはいますが、やはり「キムチチゲ」や「カムジャタン」の方がポピュラーです。というのも「ブラッチョンゴル鍋」は、専門店に行かないと食べられない料理なんですよ。食材の入手が大変ですし、時間と手間がかかるので家庭ではまず作りません。食べられるお店も、街に1軒あるかないかです。
――韓国でもそれほど頻繁に食べられるわけではないんですね。
――もともとは、地方の郷土料理だったりするんでしょうか? 日本で言う石狩鍋やきりたんぽ鍋みたいな。
ママさん 今では各地に有名なお店がありますが、もともとは全羅道(チョルラド)が発祥ではないかと思います。全羅道は酪農が盛んで、ラクチの名産地。それに、昔から料理が美味い地域としても知られています。日本でいう北海道みたいな感じですね。
――日本でも、もっと広まってほしいです。
ママさん 日本と同じように、韓国にも美味しい鍋料理がたくさんありますよ。ブラッチョンゴル鍋の他にも、ラクチ、コプチャン(ホルモン)、セウ(エビ)が入った「ナクコプセ(ナッコプセ)」はオススメです。カレーライスのように、ご飯の上にかけて食べると絶品ですよ。
【編集部より】ナッコプセはこんな記事もあります
プルコギのコクとラクチの食感の組み合わせが最強
――良い香りだ。韓国料理でラクチ(テナガタコ)ってよく使われますよね?
ママさん 韓国料理店では、刺身や炒め物などによく使われますね。ラクチにはタウリンが豊富に含まれていて、血栓や動脈硬化などの生活習慣病の予防に良いんですよ。あと、二日酔いにも最適ですね。
――やっぱりうまいなー。ラクチの食感がクセになります。スープもほどよい辛さ。
ママさん スープには、プルコギのコクが出ています。プルコギ自体も醤油ベースなので、スープとの相性も抜群なんですよ。
――ブラッチョンゴル鍋のシメはご飯ですか? うどんですか?
ママさん 韓国ではご飯が多いです。最後に雑炊をつくりましょうか。
ママさん 辛くしたい場合は青唐辛子も入れます。辛味が加わると、より食欲が湧きますよ!
――シメも韓国流なんですね。
ママさん ただ、最近は韓国の若い方が辛い料理を食べなくなっているんですよね。なので、無理に辛くしなくても大丈夫ですよ。
――へー意外! 若い人はキムチも食べないんですか?
ママさん キムチは食べます。あ、今日キムチを漬けたので食べてみてください。本来、キムチは冬にたくさんつくる料理です。そして、冷蔵庫のスペースを空けたいので地中に埋め込み、必要なときに掘り出して食べる習慣があります。
ママさん 浅漬けは珍しいですよ。ポッサムなどに使われます。もっと熟成させると、酸味が増していくので、サムギョプサルなどに使われますよ。
――新メニューも気になる。ちなみに、韓国にも「ちゃんぽん」ってあるんですね。
ママさん 韓国では真っ赤なスープで、唐辛子やニンニクで味付けをしています。具材は、日本のちゃんぽんと同様に野菜や海鮮がふんだんに入っていますが、韓国では「ムール貝」を入れるのが特徴ですね。
――それもうまそうだなあ。こういう新メニューって、どうやって考えるんですか?
ママさん 韓国に帰った時に食べたことのない料理を食べ歩くのが趣味なんです。そこで何が使われているか、どういう味付けかをチェックしています。そしてレシピを日本に持ち帰り、美味しくアレンジしてから提供しています。
――じゃあママさんが韓国に行く度に新メニューが増えるかもしれないと。
ママさん そうですね。あとは、昔食べた思い出の味を新メニューとして再現することもありますよ。だから、ぜひまた来てくださいねー。
紹介したお店
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください
著者プロフィール
小野洋平(やじろべえ)
1991年生まれ。編集プロダクション「やじろべえ」所属。服飾大学を出るも服が作れず、ライター・編集者を志す。自身のサイト、小野便利屋も運営。
http://yajirobe.me/
Twitter:@onoberkon
Source: ぐるなび みんなのごはん
聞いたことないメニューだけど、やたらうまい…! 韓国の「ブラッチョンゴル鍋」を出すお店で詳しく聞いてみた