こんにちは。韓国出身のフードコーディネーター、金英貨(キム・ヨンハ)です。
まだまだ寒い日が続いていますが、そんなおりに食べたくなる料理のひとつといえば、心も身体も温かくしてくれる「鍋料理」ですよね!
そこで今回は、私が幼いころから親しんできた鍋料理であり、毎年寒くなると恋しくなる韓国家庭料理の定番「タットリタン」を紹介したいと思います。母からしっかりと伝授された、私にとっても特別な思い入れのあるレシピです。
タットリタンの語源には諸説あり、一説によれば「鶏(タク)をぶつ切り(トリチダ)にしたスープ料理(湯/タン)」を意味しているといわれています。従来はこの呼称が一般的だったのですが、韓国では1990年代の後半ごろから「タッポックムタン(鶏を炒めたスープ)」と呼ばれることも増えてきました。
昔からの習慣もあって、私はタットリタンのほうが耳なじみはよいのですが、両方とも同じ料理を指しているので、覚えやすいほうで呼んでいただければ大丈夫です。
鶏の旨味たっぷり「タットリタン」のレシピ
本当は韓国のように丸鶏をぶつ切りにした骨つき肉で作りたいのですが、日本のスーパーではなかなか丸鶏を見かけないので、鶏もも肉や手羽元、手羽先など、お好みの部位を選んで使ってくださいね。ちなみに今回のレシピで使用しているのは、骨つきの鶏もも肉と手羽元です!
ピリ辛調味料を効かせたスープで煮込むことにより、肉の旨味や野菜の甘みが存分に引き出されたタットリタン。この刺激的なまでに美味しい鶏鍋を、さっそく一緒に作っていきましょう!
材料
- 鶏肉(骨つき鳥もも肉、手羽元)・・・800g
- じゃがいも・・・2個
- にんじん・・・1本
- 玉ねぎ・・・1個
- まいたけ・・・1パック
- 長ねぎ・・・1本
- 生姜・・・1片(スライス)
- 水・・・約1リットル
【以下A】(※混ぜ合わせて、具材と炒める「ヤンニョンジャン」を作ります)
- 唐辛子粉・・・大さじ5
- 醤油・・・大さじ2
- 砂糖・・・大さじ2
- おろしニンニク・・・大さじ1
- みりん・・・大さじ2
- 鶏ガラスープの素・・・大さじ1
- コショウ・・・小さじ1
作り方
1. 鍋に水(材料とは別)と生姜を入れ、沸騰したら鶏肉を入れる。
5分ほど茹でたら、冷水できれいに洗う。
2. じゃがいもは2~3等分を目安に大きめに切り、玉ねぎは大きく角切り、にんじんは乱切りに。まいたけは食べやすい大きさにほぐす。長ねぎはぶつ切りにする。
3. Aを混ぜ合わせて「ヤンニョンジャン」を作る。
4. 鍋に1.の鶏肉と3.のヤンニョンジャンを入れて弱火で3分ほど炒めたら、
2.の野菜(まいたけと長ねぎ以外)を加え、全体にヤンニョンジャンがよく馴染むようにしてさらに5分ほど炒める。
5.ヤンニョンジャンが全体に馴染んだら、水を具材が完全に浸かるくらいまで注ぎ入れ、強火にする。
煮立ったらフタをして20分程度煮込む。
6. 5.に2.のまいたけと長ねぎを加え、弱火でさらに5分ほど煮ると完成!
【補足】鶏肉の下処理について
上記1.の工程は、鶏肉のにおい消しのために行いました。
鶏肉には独特の臭みがあります。そのまま料理しても構いませんが、事前にちょっとした下処理を加えておくと、クセがなく、より美味しい鶏肉を味わうことができるでしょう。
鶏肉の臭いを消す代表的な下処理方法としては、以下の4つが挙げられます。
- 余分な皮や脂肪を取り除く。
- 小麦粉と塩を揉み込んで洗う。
- 沸騰したお湯で茹でる。
- 牛乳に浸しておく。
これらの方法以外にもハーブやスパイスに漬けたり、酒に漬けたりなどいろいろありますので、皆さんがやりやすい方法で試してみてくださいね。
ピリ辛鶏肉とホックホクのじゃがいもがたまらない
さあ、アッツアツのタットリタンを楽しみましょう。
ピリ辛スープがよ~く染み込んだ鶏肉と、ホクホクのじゃがいもの美味しさ、たまりませんよ!
具材の風味が効いた旨辛スープをすすれば、心も身体もぽっかぽかになります。
もともと韓国の辛い鍋には、唐辛子粉とともにコチュジャンを入れるのが一般的なのですが、今回のタットリタンは唐辛子粉のみで仕上げているので後味がしつこくなく、さっぱりとした辛さになっています。
手元に取り分けたじゃがいもはスプーンで割って、その上からスープをかけて鶏肉と一緒に食べるのがおすすめ。ゴロッとしたじゃがいもはしっかりとホクホク感を残しているので、そこにスープの旨味を追加するわけです。この食べ方、ぜひ味わってみてください。
寒い時期はお鍋が冷めやすいので、食卓の上ではとろ火にした卓上コンロやフードウォーマープレートなどで温めながら食べ進めるとよいですよ。
また、タットリタンはキャンプ料理としてもとっても重宝します。バーベキューやソーセージのグリルなどを作る横でコトコト煮込んでおくと、喜ばれることうけあいです。
タットリタンを徹底的に味わいつくそう
じゃがいもはあえて煮崩してもOK!
タットリタンの具材のなかで、鶏肉と同じくらい重要な役割を果たすのがじゃがいも。じゃがいもが煮崩れていくとスープにとろみが出てくるので、また違った食感が楽しめます。お好みで加減してみてください。
なお、煮崩れて溶けてしまうのが気になる方は、下ごしらえの際にしっかりと面取りしておくか、切ったあと水にさらしておくと、煮崩れをある程度防止することができます。
さつまいもや大根でも美味しい!
じゃがいもの代わりに、さつまいもや大根などを入れるのもおすすめです。さつまいもは鍋にナチュラルな甘みやコクを加えてくれますし、大根はスープの旨味をたっぷりと吸い込んで、格別の味わいになります。
辛いのが苦手な方や子どもはケチャップで
辛さは唐辛子粉の量で調節してください。辛いものが苦手な方やお子さまと一緒に食べるときは、唐辛子粉の量を控えめにしてケチャップを入れるのもおすすめ。その場合、取り分けたあとでコチュジャンや唐辛子粉を好みに応じて加えるようにすれば、辛いものが好きな方も苦手な方も同じお鍋を楽しむことができるでしょう。
タットリタンをさらに楽しくするトッピング
お好み次第で、トッピングをのせて楽しむのもおすすめ。
たとえばトッピングの定番、チーズなんて最高です。
たっぷりとふりかけてトロットロに溶けたあと、鶏肉に巻き付けるようにして食べると、コクや旨味が増幅されて絶品ですよ!
スープにもチーズの豊かな風味が足されて口当たりもまろやかになり、贅沢な味わいが楽しめます。
さらに、個人的にもうひとつおすすめしたいのは、天ぷら。
サクサク食感の天ぷらをスープに浸して食べると、相性のよさに驚かされることでしょう。ぜひ、好きな天ぷらで試してみてください!
シメには「炒めご飯」か「春雨」がおすすめ
鍋料理に欠かせないのは、最後のシメ!
もちろんタットリタンもシメまで美味しく味わいつくすことができます。多少お腹がふくれていてもあきらめずに、シメまでたどり着いてほしいです。
まずおすすめしたいシメは「炒めご飯」。少しだけスープを残した鍋にご飯とごま油を加えて炒め、最後に韓国海苔を散らします。
残ったスープには具材の旨味が濃縮されていますから、余計な調味料はいりません。ごま油と韓国海苔さえあれば十分です。が、お好みで刻んだキムチを加えると、ますます美味しくなりますよ!
また春雨もシメとして韓国で大人気。味わい深いスープに春雨がからんで、思わず声が出てしまうほどの味わいです。
その他、カレットック(トッポッキなどに用いる韓国のお餅)や中華麺、うどんなどを入れても美味ですよ。
韓国の定番料理であり、手軽なスタミナ鍋でもあるタットリタンは、ご飯のおかずとしても、お酒のおつまみとしても楽しめる、家庭的な味わいのメニューです。ちょっとくらい食欲がなくても、その香りをかいで、スープをひと口啜れば、どんどん食欲が湧いてきてしまうはず。
次の週末のおウチごはん、額に汗を滲ませながらタットリタンを堪能する……なんて時間をゆったりと過ごすのはいかがですか?
(編集:漆原直行 / 企画:河瀬璃菜)
フードコーディネーター. 料理研究家
1977年8月19日生まれ。韓国出身。
食のコンテンツ企画制作会社や食品企業にて、レシピ開発やスタイリング、フードコーディネートを手がけます。書籍、雑誌、動画などのフードコーディネートも担当させていただいています。
韓国料理を得意とし、韓国の家庭料理からおもてなし料理の料理教室の講師も務めています。
Source: ぐるなび みんなのごはん
鶏の旨みが染みるなあ…! 寒い日にぴったり、鶏肉とじゃがいものピリ辛鍋「タットリタン」がめちゃ美味しい