ミシュランクオリティの焼き鳥が1本130円からとは…! 池尻大橋「山正」の味と人情と縁に心が震えた

どうも、料理芸人のクック井上。です!

 

ここ数年、ミシュランガイドには多くの焼き鳥店が取り上げられていますが、そういったハイクオリティなお店は人気も高く、必然的に予約のハードル&お値段設定もお高め…

 

「ふらっと予約なしで入れて、ミシュラン店のようなクオリティの高い焼き鳥をお値打ち価格で食べられるお店、ないかなぁ~」とお嘆きのあなた! ありますよ!

 

池尻大橋「山正(やましょう)」。こちらが今回紹介したい焼き鳥店です。

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東急田園都市線の池尻大橋駅から徒歩1分の場所に、昨年オープンしたこちら。

開店にはいろいろな想いや経緯があったらしいのですが、詳しいお話はのちほどうかがうとして、まずは焼き鳥をいただきます!

 

入り口近くにはテイクアウトコーナー。その横の焼き場からよい香りが漂ってきます。ちょいとのぞいてみましょう。

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煙の向こうにいらっしゃるのが総料理長・岡田篤史さん。

実はこの方、なんと7年連続でミシュラン一つ星を獲得したニューヨークの焼き鳥店「鳥心TORISHIN」で2018年まで腕を振るっていたというすごい経歴の持ち主なんですって!

 

否が応でも高まるワクワク&ドキドキ感。と同時に、そんな実績のある方が焼いている焼き鳥のお値段に対して高まる不安感。おそるおそる値段表に目をやると…。

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もも・むね130円! 一番高い串でも250円ってどういうこと? お値打ち価格すぎる…!

焼き鳥串13本、全種類注文しても計2,160円! 「山正」なら、人生で一度は口にしたい夢の“あの言葉”が言えそうだ…。

 「メニューのココからココまでお願いします!」

というわけで焼き鳥串13本、全種類注文完了。さぁ、いってみよー!!

これがミシュラン級の技で焼き上げた焼き鳥

岡田さんの打った串がコチラ。

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なんとも美しく、丁寧に串打ちされた焼き鳥たち…。

今回はレギュラーメンバーに加え、「手羽皮」「内もも」(数量限定の裏メニュー)も注文。

 

「内もも」は、鶏1羽から2個しか取れない希少部位(一串で2羽分)! いつもあるわけではない品なので、出会えたらラッキー!

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さぁ、さっそく岡田さんに焼いていただきましょう。

 

リズミカルな手つきで、同時に何本もの串の面倒を見る岡田さん。

山正焼鳥

この風景を眺めているだけでも何杯か飲めるなぁ♪ よだれを垂らしながら、思わず何枚も写真を撮っちゃいます。おっと、そろそろ焼けそうなのでテーブルへ戻るとします。

 

はい、やってまいりました~。まずは塩で味付けされた串にがっつくぞ!

山正焼鳥塩
左から、ソリレス・せせり・ねぎま・ぼんじり・弾丸
  • ソリレス…ももの付け根にある希少部位。皮はピンと張ってるのでパリッと香ばしく、身はすごい弾力とジューシーさ。フランス語で「これを残す奴は愚か者だ!」って意味だとか。残すわけない。希少部位ゆえ本数に限りあり。最高!
  • せせり…首の筋の部分。歯応えと旨味がすさまじい。塩でその旨味と魅力がより引き出されています。
  • ねぎま…しっかり香ばしく焼かれたねぎは、甘さとほどよいねぎの辛みを持ち合わせていて、ももと同時に食べたらビールが止まらない♪
  • ぼんじり…ジュワっとしたコクが染み出す! そしてこのしっかり焼き目。たまに焼きが甘いとしつこすぎるぼんじりだけど、そういったいやみがない。
  • 弾丸ハツの先の部分。しなやかさと歯応えの両方を持ち合わせていて、表面はしっかり焼き目がついていながら、中はしっとりと仕上がっている。そして芳醇な旨味が染み出る!

 

続いてやってきました、塩パート2!

山正焼鳥塩
左から、砂肝・内もも・手羽先・むね・やげん軟骨
  • 砂肝…下処理もばっちりで、コリコリと新鮮さが伝わる食感。
  • 内もも…さすがの希少部位。単なるもも肉じゃない、とっても柔らか&しなやか&ジューシー!
  • 手羽先…これこれ、これくらいしっかりこんがり焼いてある手羽先が好き! 骨のまわりはワイルドな旨味もたっぷり。
  • むね…心地よい繊維の歯ごたえもありつつも、水分が保たれていて、しっとり。
  • やげん軟骨…いい焼き目。軟骨もこれぐらい端っこが焦げているほうが美味しい。

 

さて、お次はタレの登場だー!

焼鳥山正タレ
左から、もも、レバー、はつもと、手羽皮、つくね
  • もも鶏皮がついていないのでさっぱり。肉本来の旨味が味わえる。こりゃ何本でもイケる。
  • レバー…食感はきめ細やかでしっとり。舌の味蕾に染み入る美味さに、赤ワインを合わせたい。
  • はつもと…脂身もついていてジューシー。ワイルドな旨味も楽しめて、ビールが進みます。
  • 手羽皮…なんと美しい串打ち。焼き目はパリッと、余分な脂は落ちているのに噛めば内側から旨味が染み出る1本。
  • つくね…生姜が薫る絶品つくね! ひき肉は鶏の素材感をしっかりと感じさせつつ。あくまでフワッと食感。必食!

 

焼き鳥以外の絶品おつまみも食い尽くす

いやぁ大満足。最高の焼き鳥フルコースを堪能しましたが、串以外のおつまみも工夫があって素晴らしいんです。一部をご紹介しましょう。

 

苔ポテサラ

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カプセルを開けると、まるで“苔まり”のような物体が出現。青海苔や桜エビがまわりについたポテサラのようです。レンゲでつぶすと中からは半熟茹で卵のお出まし。さらに崩していただきます。

青海苔と桜エビの磯の香りが鼻腔をくすぐる、美味しい&楽しいおつまみです。

 

ささみ一夜干し

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幽庵地(酒・醤油・みりんを 1:1:1で混ぜたタレ)に漬け込んで干したもの。なんとも滋味深い酒の肴。

 

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焼き場の上あたりで、こんなふうに吊して乾燥させるのだとか。手間がかかってます。

 

白もつ煮込み

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コチラは鶏ではなく豚もつ。新鮮なもつはプリッ&ムギュ&じゅわな食感。そしてクリーミーなスープ。あぁ、幸せ…。

 

そして、シメはこのお鍋でいかがでしょう?

 

鶏団子鍋

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焼き鳥屋さんの鶏団子鍋は、上品なお出汁に野菜の旨味が染み出した一品。串のつくね同様、鶏ひき肉の活かし方もばっちり! もはや鍋専門店を開いてほしいレベル。

 

「いやさ、シメはなんと言ってもご飯だろ」って方はコレ!

 

鶏とキノコの炊き込みご飯

ぐつぐつ&ふつふつ、目の前の卓上で炊飯されます。待つ時間も味のうち。そして木蓋を開けると…ふわーっと幸せの薫りが立ち上ります。底のほうからしっかり混ぜると…「最高かよ」なおこげのお目見え。

 

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鶏肉の旨味&キノコの薫り&おこげの香ばしさが三位一体となって攻めてきます。こちらは仕上がりまで時間がかかるので、入店したらすぐに頼むのがオススメ。

 

焼き鳥→鍋→炊き込みご飯と、これ以上ないくらいに鶏の魅力を喰らい尽くしました……本当に異次元なくらいの満足度。お得すぎます。

 

ちょっと、ちょっとちょっと! これはオーナーさんと総料理長にインタビューせずにはいられないでしょ。まずはオーナーさんにお話をうかがってみます。

 

すべては「人との繋がり」。そして「想いのパス」から生まれた

f:id:linakawase:20210828230547p:plain「山正」がオープンしたのは2021年3月とか。開店の経緯を教えてください。

f:id:linakawase:20220307222058p:plainウチは、地元・池尻大橋の思い出のお店の味を復活させたくて開いたお店なんです。池尻大橋駅前に、地元で長年愛されていた老舗焼き鳥店「山正」がありました。僕が高校生の時に「山正」の隣のマクドナルドでバイトしていて、店長の藤野さんが焼く大きな焼き鳥をバイト前によく食べていました。

ただ、そちらの「山正」は、2008年に焼き鳥店としては閉店してしまいました。いまは他の業態を営んでいらっしゃるのですが、ここ数年、あの頃の味を思い出すことが多くなりまして。それで藤野さんに直接「『山正』を復活させたいです!」と頼みこんで、タレなどの仕込みをイチから教えてもらい、復活させていただきました。

 

f:id:linakawase:20210828230547p:plain地元の味、思い出の味を復活させたい、という想いが込められていたなんて、素敵です。建物に“池尻ちょこっと横丁”という看板が見えました。

f:id:linakawase:20220307222058p:plain池尻大橋の繋がりを大事にして、町を盛り上げるために“池尻ちょこっと横丁”を始めました。「池尻蕎麦」「山正」「ビールマンイケジリ」は小学生からの同級生であり、一緒にマックで働いた仲間と共同経営の形で手がけています。「池尻蕎麦」はもともと違う店名だったのですが、僕が昔バイトしていたお店でした。オーナーさんが「やめようかな」とおっしゃるので「継がせてください!」とお願いしたんです。「居酒屋 そてつ」さんは、僕が大学生の頃から通っていた、いきつけのお店。魚が売りの美味しいお店です!

f:id:linakawase:20220307221506j:plain▲駅近くのこの一角が“池尻ちょこっと横丁”。ここでハシゴすれば完結できちゃいます。

 

f:id:linakawase:20210828230547p:plain「山正」と言い「池尻蕎麦」と言い、人との繋がりや縁を大事にして継承されてるのが伝わってきます。池尻大橋が大好きなんですね。

f:id:linakawase:20220307222058p:plain僕は小さい頃からサッカーを30年やっていまして、高校生の頃から地元のサッカー少年団で約20年間コーチをしているんです。20年間で地元の子どもたちや親御さんと、多くのご縁がありました。サッカーの繋がり無くして、いまの僕はありません。

僕には、お世話になっている方々との繋がりを大事にしたいという強い想いがあるんです。仕入れなどでも、サッカーの縁でパス交換しあっています! このインタビューのあとも、100人くらいの幼児~小学生に向けてのコーチにいきますが、サッカー少年団のOBにはJリーガーの馬渡和彰選手(現・浦和レッズ所属)などもいて、地元の誇りです。

 

f:id:linakawase:20210828230547p:plain「山正」のオープンは、昔から愛されたお店の継承であると同時に、想いのパス交換でもあったんですね。まさに、地元の繋がりの象徴!

f:id:linakawase:20220307222058p:plainはい! ただ、実はこの建物自体は2年契約でして、あと1年ほどで建て直しになるんです。新しい建物になったら、1階を借りて復活します。今後は焼き鳥のキッチンカーもできたらいいなと考えているところです。

 

…と、なんとも心がほっこりする開店秘話をうかがうことができました。

 

そして、もうひとり気になるのが、NYのミシュラン店「鳥心TORISHIN」出身の総料理長・岡田篤史さん!

ミシュラン店出身のスゴ腕職人が庶民的なお店に来た理由

f:id:linakawase:20210828230547p:plainどの焼き鳥もとても美味しかったです。これまでの経歴などをおうかがいしてもいいですか?

f:id:linakawase:20220307222227p:plain自分は高校卒業後、20歳で渡米しました。英語学校や大学に行きながら「ZAIYA」というカフェでバイトし、その後「鳥心TORISHIN」に入りました。串打ちや前菜、箸休めなどを担当したのちに焼きも担当するようになり、スーシェフとして働きました。

2020年には友人が経営する人気和食店「SHURAKU」で半年くらい働きましたが、コロナ禍の影響もあり閉店。心機一転、19年間のアメリカ生活を終えて帰国したタイミングで、ご縁あって「山正」でお世話になることになりました。

 

f:id:linakawase:20210828230547p:plain 19年間もアメリカにいらっしゃったんですね! ミシュラン一つ星店ご出身の岡田さんが、庶民的な「山正」に来られた理由は何でしょうか?

f:id:linakawase:20220307222227p:plain自分がニューヨークで住んでいたエリアはブルックリンの中でも貧困層が多く、新型コロナ感染者もたくさん出た地区でした。職を無くして大変な思いをしている方々を見て、「高級料理ではなく、大変な状況でも手が届く値段の、美味しいものを食べさせてあげたい!」と考えるようになったんです。そういう想いがあって、帰国後は以前のお店より庶民的な値段設定の「山正」にお世話になることにしました。

 

f:id:linakawase:20210828230547p:plainそういう想いを抱かれていたんですね。たしかに庶民的な値段ですが、とても満足感がありました。この価格で、この高品質ですから、いろいろ工夫もされていると思います。

f:id:linakawase:20220307222227p:plainそうですね。この価格設定ですので、ミシュラン店で用いるような、特別な地鶏やブランド鶏は使用していません。そのかわり、ニューヨークで培った技術を惜しみなく投入し、最大限の美味しさを引き出せるよう心がけています。

ちなみに、塩は長崎県産の藻塩を使っています。タレは、以前の「山正」のレシピを継承しつつ、「岡田さんが進化させてください」と(旧山正の)二代目さんから仰っていただいたので、昔の味をリスペクトしながら自分のこれまでの経験もプラスし、注ぎ足しながら育てています。

 

f:id:linakawase:20210828230547p:plain最後に、今後の展望、お店を通して伝えたいことなどありましたらお聞かせください。

f:id:linakawase:20220307222227p:plainまだ「山正」で後輩を育てられていませんので、少しずつやれることを増やしていければと思っています。私は日本酒が好きなのですが、新型コロナ禍の影響で事業を畳まれた酒蔵さんがあるのは本当に辛いです。いまはとにかく美味しい焼き鳥を焼き続けて、皆さんが“お酒を飲むきっかけ”をたくさん提供できたらいいな…と思っています。 

 

f:id:linakawase:20220307221759j:plain▲オーナーの橋野幸一さん(左)と総料理長の岡田篤史さん。少年のような笑顔にほっこり

 

オーナー・橋野幸一さんは、単に飲食店経営を手がけているのではなく、地元愛や人々の縁を象徴する場としてお店を作られているんじゃないかと感じました。

そして、そういう素敵な想いが込められているからこそ、総料理長・岡田篤史さんのような確かな腕と志を持った素敵な料理人さんとの縁ももたらされたのでしょう。

心底感動しました!

 

なお、「山正」がある池尻大橋駅は東急田園都市線の渋谷駅と三軒茶屋駅のあいだにあるのですが、急行電車は停まりません。でも、この技・この味・この価格、そしてこの想いを知った以上「山正」に急行するしかございませんね。

 

 

追記:美味しい焼き鳥をキメた後は、同じ横丁にある「池尻蕎麦」でシメるのも乙ですよ。

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ツルシコで美味いなぁ…と思っていたら、衝撃の事実! ここのお蕎麦は、以前ご紹介した「ホーチャン」から仕入れているのだとか(なんたるご縁!)。

 

もともと「池尻蕎麦」の場所は「ホーチャン2号店」だったそう。そこで以前バイトしていたのが、現オーナーの橋野幸一さん。本店である「ホーチャン」に人材を集約するため「ホーチャン2号店」を閉店することになった際、橋野さんが「この場所でお蕎麦を出し続けたい」と提案したのだとか。

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最高かよ。この一連の話を、連続ドラマにしてほしい。

 

紹介したお店

店名 山正
住所 東京都世田谷区池尻3-2-4
営業時間 17:00~23:30
定休日 日曜日・祝日

 

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください

 

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著者 クック井上。

フードコーディネーター・野菜ソムリエ・食育インストラクター・BBQインストラクター等、7つの食の資格を持つ料理芸人。 料理教室講師・食のイベントMC・レシピ開発・食品プロデュース等を務め、“最強料理芸人”の異名をとる。EX「『ぷっ』すま」やTBS「爆問パニックフェイス」の料理バトルでは優勝を果たしている。その他の出演歴は、NHK「グッと!スポーツ」・NTV「得する人損する人」・TBS「はなまるマーケット」・TX「TVチャンピオン極」等。

Twitter:@cook_inoue
Instagram:cook_inoue
ブログ:料理芸人・クック井上。の「ようこそブログへ クック クック♪」powerd by Ameba

Source: ぐるなび みんなのごはん
ミシュランクオリティの焼き鳥が1本130円からとは…! 池尻大橋「山正」の味と人情と縁に心が震えた

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