【編集部注】
この記事は取材を行った2021年12月当時に執筆したものです。新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、公開を保留していました。記事内のメニューの価格は当時から変更ありません。
“蛇口系”は居酒屋業界の最新トレンド
今、居酒屋業界のトレンドは“蛇口系”だそうだ。酎ハイやレモンサワーをお客が自分で蛇口から注ぐスタイルで、リーズナブルな飲み放題サービスがつく店が多い。
名古屋でも少しずつ増えているこの蛇口系、新たな注目株として登場したのが「大衆酒場テルマエ」だ。2021年11月5日、名古屋駅のほど近くにオープンした。
一番の注目ポイントはとびきり安いこと。飲み放題は、なんと1時間398円! ビールは生中190円!! 鶏皮串は70円!!! いくら安さがウリの蛇口系とはいえ、この価格は衝撃的だ。飲食シーンの最新トレンドを体験しておくためにも一度足を運ばなければなるまい!(ホンネは単に安く飲みたいだけ、ですが)
蛇口系+銭湯のエンタメ酒場
場所はJR名古屋駅から北へ徒歩3分ほど。各フロアに1軒の飲食店が入る知多屋名塩ビルの6階にある。
エレベーターを降りるといきなり店内。ディスプレイには木桶に金のひしゃく、そして蛇口と波をモチーフにしたのれんが。
店名の「テルマエ」は、映画化もされた漫画『テルマエ・ロマエ』でも知られる通り、古代ローマの公衆浴場のこと。なるほど“蛇口=銭湯”の発想から、蛇口系に銭湯の要素をプラスしたエンタメ酒場というわけだ。
蛇口が並ぶスペースは銭湯でよく見られる蜂の巣模様のタイル張り。串物やドリンク用の器として桶が用意され、個室スペースののれんには「ゆ」の文字が。いたるところに銭湯のエッセンスが採り入れられている。ついでにBGMが民謡というのも、銭湯らしいかはさておき何となくリラックスした気分にさせてくれる。
チューハイの原液が出てくる蛇口が9口。オリジナルの蛇口ひねりハイをつくれる
飲み放題を注文し、さっそく蛇口のあるエリアへ。
ズラリと並ぶ蛇口10口は、それぞれ異なるチューハイの原液が出てくる仕組みになっている(うち1口は水)。
【蛇口】
1. 緑酎泉
2. 玄米酎泉
3. 烏龍酎泉
4. ジャスミン酎泉
5. レモン酎泉
6. コーヒー酎泉
7. ポップコーン ウィスキー酒泉
8. 赤唐地獄谷 ウィスキー酒泉
9. 月替り酒泉
10. 水源泉※定番8口+月替り1口(定番と同じ場合もあり)+水1口(※取材時は月替わりがなく9口が開泉)
【割り物】
炭酸水、オレンジジュース、オレンジスカッシュ、コカコーラ、カナダドライジンジャエール、リアルゴールド
これらを自由に混ぜ合わせ、オリジナルのカクテルチューハイをつくることもできる。組み合わせは、ほぼ無限大だ…。う~ん、これは酒飲みをダメにする仕組み、いや酒飲みをとことん幸せにするシステムではなかろうか。
とはいえ種類が多いのでどうブレンドするか迷ってしまうところ。そこでありがたいのが「お勧めドリンク」のレシピだ。定番のレモンサワーから「赤唐エナジーハイボール」(赤唐ウイスキー酒泉+リアルゴールド)「コーヒーコーラハイ」(コーヒー酎泉+コーラ)など、お勧めの飲み方のレシピが貼り出されているのだ。
1杯目は無難にレモンサワーにした。連れは果敢に赤唐エナジーハイボールにチャレンジすると、ひと口目で「か、辛い…!」。原液はアルコール度数40度なので、酒としての濃さも辛さもパンチが利いている。
メニューはバラエティ豊か。銭湯気分を盛り上げる桶メニューも
やはり名物メニューを頼まねば、とテルマエ串(鶏皮)の桶入りを注文。1本70円の激安串が20本の値段で22本入ってさらにおトク…って、数が多すぎてトクだか何だかよく分からなくなるが、桶に串がドカドカ盛られた見た目は迫力満点。気分がアガる分だけやっぱりおトクな気がしてくる。鶏皮をカリッと揚げてやや甘めのタレで味つけてあり、一本また一本と箸が…いや串が進む。
桶は酒の容器としても使うことができる。注ぎに行くのが面倒な場合、またはお気に入りのドリンクが決まった場合は、桶いっぱいにドリンクを注いでテーブルまで持っていくことができるのだ(飲み放題限定。各テーブル、ひと桶に限る)。腰をすえて飲みたい人はこのシステムを使うのもいいだろう。
ただし、蛇口で注ぐこと自体も楽しみのひとつなので、我々はグラスが空くごとに席を立って蛇口ハイを注ぐことにした。やってみると、この方法だと飲みすぎ防止にもなると感じた。
蛇口系によくある「テーブルに蛇口がついてるタイプ」だと、注ぎに行く手間が省けて便利な反面、少々危険でもある。なぜならグラスが空いた瞬間、即座に次の1杯を注ぎたくなり、絶え間なく飲み続けてしまいがちなのだ。
テーブルから離れて蛇口ハイを注ぐレイアウトは、ほんのわずかなアクションながらかえって自分のペースで適度に飲める、酒好きの心理を熟知した仕組みではあるまいか。
飲みすぎに注意したい時には立ち飲み席も有効だ。店内中央に立ち飲み用の丸テーブルが並んでいて、ここでなら足元がふらつくほど泥酔する前に自分でストップをかけられるはず。飲み放題だからと調子に乗りすぎる恐れがある、そんな自覚がある人は最初から立って飲むのもいいんじゃないだろうか。
チューハイのバリエーションに負けじとフードもバラエティ豊か。軽いおばんざいから鮮魚、肉物、もつ鍋、ラーメン、スイーツ・デザート類もかき氷、クリームソーダ、プリンなどカラフルだ。
桶入りの串の他には名古屋らしい味噌仕立てのどて煮、肉汁たっぷりのハンバーグなどを注文。見た目の面白さにつられ、お風呂上がりの牛乳瓶プリンなんてものまで食べてしまった。
蛇口ハイは、最初に生中を飲んでしまったこともあって、私も連れも1時間で2杯ずつにとどまったが、それでも398円なので文句はない。
ちなみに2杯目はそれぞれジャスミンオレンジハイとコーヒー酎をチョイス。前者は甘みがまろやか、後者は苦味がしっかりで、1杯目からの味の変化を楽しむことができた。
またタブレットでは店のバックストーリーもつづられていて、この店は冒険家で商売人であるテルマエ隊長が苦難の末に酒が湧き上がる泉を発見してつくられたらしい。こんな世界観も、馬鹿馬鹿しくも楽しく酔わせてくれるエンタメ酒場らしさである。
エンタメ要素も含めて高コスパ。“食べるより飲む派”が喜ぶシステム
2時間ほど飲み食いして、会計は2人で税込7,000円ちょい。この店の中では比較的単価の高い998円のハンバーグや、普段はあまり食べないデザートも注文したせいか、結果的に驚くほど激安、というほどではなかったが、食べるよりとにかく飲みたいという人なら、とびきり低価格で楽しむことができそうだ。
●飲み放題1時間(398円)+お通し(300円)+料理1オーダー(498円以上)=約1,200円
●飲み放題2時間(398円×2)+お通し(300円)+料理2オーダー(498円以上×2)=約2,000円
よし、今度は食べるのを抑えめにして、もっと蛇口ハイをたくさん飲むのだ…!って、何だかうまくテルマエ隊長の術中にハマっている気もするが、安く、楽しく飲めるならいくらでもハマってやろうじゃないか!
紹介したお店
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合があります、店舗にご確認ください。
著者プロフィール
大竹敏之
名古屋のことしか書かない自称“名古屋ネタライター”。名古屋の食や文化に関する著作は『間違いだらけの名古屋めし』(KKベストセラーズ)『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店完全版』(リベラル社)『なごやじまん』(ぴあ)など多数。Yahoo!ニュースに「大竹敏之のでら名古屋通信」配信中。
Twitter:@bakaruto
連載:Yahoo!ニュース「大竹敏之のでら名古屋通信」
編集:ノオト
Source: ぐるなび みんなのごはん
チューハイ原液が蛇口から注ぎ放題で398円…!? 名古屋に誕生した“酒飲み歓喜”の店に行ってきた