どうも、料理芸人のクック井上。です!
人から人への本当の口コミだけで、連日大にぎわいの酒場ができたのでご紹介させてください。
東急田園都市線、三軒茶屋駅から徒歩4分のところにある「安旨ちゃん おしどり」です。
すでに老舗酒場のような威風堂々な看板ですが、昨年2021年2月オープンの新しいお店。
2021年春夏は東京都からの自粛要請によってなかなか営業が叶わず、本格的なオープンは2021年10月なので、実質的には開店から1年も経っていません。
にもかかわらず既に常連さん多数で、その常連さんが連れてくるお客さんが新たな常連さんになるという「おしどり」フリークが続出!
正直、このお店をみんなのごはんで紹介してよいものかと相当悩みました。でも…
「この真っ当なお店を独り占めするわけにいかない!」
という使命感を持ってお伝えいたします!
「おしどり」は、店名からお察しのとおりご夫婦で営まれているお店。
世の流行店のような、分りやすい際立ったコンセプトがあるわけではないけど、このお二方が作るお料理からは、確かな腕と一本しっかりと通った志や魂が感じられ、どれもホッとする味なんです。
とある日のメニュー表ですが
看板にあった通り、ほぼ390円。(たまに490円や590円もあるが、逆に290円もある。)
メニュー表の左側には“鹿児島直送 地鶏”の文字と共に、鶏肉料理がずらり。ほぼ毎日出会える「おしどり」の推し鶏(料理)メニューとなっています(ウマい!座布団下さい)。
鶏料理はもちろん美味しいの極みなのですが、特筆すべきは右側の日替わりメニュー。その日その日で違う、“ほっとする季節のお料理” “きらりとセンス光る一品”が異次元なのです。
ほとんどが390円なのに手抜きどころか、むしろ手をかけた料理の数々
「ヒイカと里芋の実山椒煮」(390円)
え!? これが390円? 冗談でしょ…?
こっくり炊いた里芋に、ヒイカと椎茸の旨味と香りが染みてて最高…! そして和の香辛料の王様、実山椒が噛むたびにピリッと香る。上質な小料理屋でも出てこない一品!
「肉豆腐」(490円)
上品な味付けの肉豆腐オブザイヤーでは? 濃すぎない味付けに、三つ葉と柚子香る鍋…。
さすが、メニュー表にわざわざ“ウマイ”と書いてあるだけあります。身体全体の細胞に染みわたるので、出会ったら必ず注文してください!
「インゲンの胡麻和え」(290円)
インゲンは熱を通し過ぎたら柔らかくなりすぎて食感が悪いし、通し過ぎなくても青臭さが残る。
でもこの和え物ときたら、ちょうど良い! 噛めばキュッキュッのあとにシャキッと、心地よい歯ざわり。このシンプルでひなびた和え物だけでも「おしどり」の実力を知ることできます。
また、とある日の日替わりメニューですが、「茶碗蒸し かに身あんかけ」(390円)。
お出汁が利いた茶碗蒸しに、カニ身が入ったどこまでも優しい餡がかかっていて、割烹料理屋のコースの一品と見紛います。
口に入れればプルン&トロっ、かにの香りがフワーっ。思わず“日本人に生まれてよかった~っ!”と声に出てしまいました。
「かぶと胡瓜の浅漬け」(290円)
居酒屋では塩辛くしがちな浅漬けですが、あくまで素材の味を生かした優しい塩梅。もちろん、市販品のような余計な旨味は足していません。こういう真っ当なメニューがあるお店が間違いないんですよ……。
「あん肝ポン酢」(390円)
普通、この値段なら業務用ですが、もちろん自家製。さすがの丁寧な下ごしらえ、全く臭味なし…。頭が下がります。
また違う日の日替わりメニュー(“今日は何かな?”と楽しみ過ぎて、何度でも通っちゃうんだ!)
「白子と春菊の天ぷら盛り合わせ」(590円)
出ましたー、白子の天ぷら! カリッとサクッと噛んだら、中からトロ~っとクリーミーな白子が溶け出て舌に絡みつきます!
春菊の天ぷらも、ほろ苦さが大人な味わい。この2つの天ぷらを口内調味したら至福の時が訪れます。
「ミートソースのマカロニミートグラタン」(390円)
和食を食べ続ける中でちょっと洋食をはさんで、懐かしい甘みのあるミートソースを。ローリエの香りがしっかり感じられて手間がかかった自家製だとわかります。どこまでも手を抜かないお店です。
「おつまみイカのトマトカレー」(390円)
ライスじゃなくて野菜にのせてパクっといくカレー。針生姜が添えてあって、ここは気の利いたスパイスカレー屋か?と勘違いするほどの美味さ。みずみずしいシャキシャキの野菜と、旨味十分&酸味爽やかなカレーでお酒がすすみます。
ライスやナンじゃないから、お腹に溜まり過ぎないのが良いんです!
違う日の日替わりメニューを、引き続きご紹介しますね。
「おでん盛り合わせ3品」(390円)
そば巾着は、お揚げさんに葱と蕎麦を忍ばせた一品。
たまらんでしょ?がんもはなんと自家製ですよ!これだけで390円お支払いしなきゃおかしいクオリティ。染み染みの玉子も、もちろん鉄板!
「自家製皿わんたん」(390円)
皿わんたんと言っても、この日は熱々お鍋で出てきました。肉感が感じられる食べ応えのある餡が詰まってます。一緒に茹でられた豆苗と一緒にタレにつけて、口の中でホフホフ…ビールがススム君です。
まだまだ、きらりとセンスの光る日替わりメニューの数々、いきますね。
「柿と春菊の白和え」(390円)
果物の中でも派手な甘さではない柿が、昔ながらの白和えをワンランクアップさせています。ちょいと忍ばせたクルミも、食感と風味で憎い仕事。あくまでも嫌味の無いセンス、脱帽です。
「イカとレンコンの明太子和え」(490円)
ムギュっとした食感のイカにシャキッと食感のレンコン。食感の違う食材のコントラストが素晴らしい。味の主張の少ない両食材に旨味を加えているのは明太子と海苔。困ったなぁ、お酒が止まりません。
「揚げたてあつ揚げ」(390円)
ここでいただける厚揚げは、スーパーで売っている厚揚げとは似て非なるもの。揚げ固められた表面にお箸を入れても、油がにじむことはありません。香ばしい揚げもの香りとお豆腐の大豆の香りが口と鼻腔に広がります。実にシンプルなお料理だけど、揚げたてのあつ揚げは最高です!
「イカと菜の花の肝炒め」(390円)
プリプリなイカと菜の花を合わせた一品。イカのワタが滋味深い旨味を与えていて、新鮮だからこその一皿です。あまりの美味さに、おかわりしてしまった!(僕は悪くない…)
「自家製コロッケ 新じゃがと挽肉 カレー風味」(390円)
俵型に整えられた自家製コロッケは、口に入れた瞬間に涙が出そうに…。
新じゃがのホクホク感と舌にあたった時に存在感のある玉ねぎと挽肉が、手作りでないと出せないあたたかさなんです。
カレー風味がこれまた◎で、ぜひビールと味わっていただきたいお料理です。
日によってはお刺身に出会える日もあります。
「釣りアジ」(490円)
アジの横にいらっしゃるのは……「自家製コハダ酢〆」(490円)
酸っぱ過ぎない上品な〆具合で、もう江戸前寿司屋さんさながらですよ。
怒涛ごとくズラッとご紹介したここまでご紹介したお料理、品によって290円や490円などもありましたが、ほとんどが390円!(看板の店名の横の“ほぼ三九〇円の店”という文字に偽りなし!)
なのに、手抜きの手の字も無く、むしろ手をかけたお料理の数々。どれも日本の四季や旬が感じられ、ホッとする味付けなのにきらりと光るセンスがプラスされていて、一皿ごとに感嘆の笑顔が漏れるんです。
もちろん、季節問わずにいつも出会える鶏料理たちもめちゃウマ!
こんなに素敵なお料理を食べて飲んでも、なかなか一人3,000円はいかないってんだから…
「安旨ちゃん おしどり」は、普段使いの酒場の最高峰と言って過言ではない!
うわー、興奮してきた!素敵なお料理を生み出す素敵な店主さんにお話をうかがってみたいと思います。
“やり過ぎず、やらなさ過ぎず”な料理が『おしどり』の魅力
店名「安旨ちゃん おしどり」に込めた想いを教えてください。
「おしどり」については夫婦でやっていくという思いと、鶏料理をあつかうということで、安易ではありますが比較的早い段階で決まっていました。店の枕詞的部分は個性も出るし、かなり自由度も高いので絶対に他店とかぶらず、なおかつ一度見たら忘れられないものにしたいという思いからかなり夫婦で悩みましたが、最終的には妻が笑いながら言った「安旨ちゃん」が求めていた条件を全て満たしていたので開店ギリギリで決まりました。
お店のすべてを分かりやすく表現で来ていて、素敵なネーミングです! メニュー表や店内のポスターなどに鹿児島愛が溢れています。どのような思いからでしょうか?
鹿児島は妻(近藤綾子さん)の故郷で、何度か一緒に帰省している間にいつの間にやら自分の方が楽しみにしていることに気づきました。しかし、自分には魅力の塊みたいに映った鹿児島ですら商店街のシャッターが閉まっているのが目立ち、日本の全てのローカルが抱える問題を目の当たりにした感じがして、同時に東京の集中の仕方に違和感も覚えました。硬くなりすぎましたが…簡単にまとめると、おこがましいですが「東京から少しでも何か気持ちや思いを返せないか?」と考えた結果です。
奥様への愛、奥様の故郷への愛、食材への愛、食材を生み出す土地への愛があふれてますね。それにしても、その日その季節の日替わりお料理がいつも楽しいです。メニュー開発はどのようにされていますか?
うちは開発するというほどの凝ったメニューはほとんどありません。皆さんのお母さんが作るような日常のものばかりです。週に何度か来て下さるお客様もいらっしゃるので、同じ春巻きでも魚や野菜の組み合わせで具材を変えて、飽きがこないようにしている程度です。
謙遜されていますが、いつもホッとするお料理が素敵すぎます。お料理で気をつけていることがあれば教えて下さい。
「やり過ぎず、やらなさ過ぎず」です。
深い! 本当にその精神こそが僕らをほっとさせてくれていると思います。お客さんに楽しんでほしいポイントを教えて下さい。
質問のところでも紹介して頂きましたが、週に何度か来て頂いても飽きがこないよう、メニューがどんどん変わっていきます。お仕事帰りに今日の“お袋のご飯”的感覚で来て頂けると嬉しいです。
おうちのお料理のように染みるのに、センスも凄いから毎回参っちゃいます。お酒も素敵です。お店一番おすすめのお酒「さつまおはら前割り」の割合を教えてください。そのほか、お店オススメのお酒、こだわりポイントもあわせて教えてください。
前割りは少し濃い目の6:4です。グラスの氷の溶け具合で自分の好きな味を探しながら飲んでもらえればと思います。そのためにグラスと徳利でご提供しています。その他、季節のものを使った自家製シロップのサワー(梅酢サワーや新生姜サワー)や特殊なジューサーを使った柑橘などのフレッシュサワーもおすすめです。
お酒も抜かりなしなのが嬉しいです。お店が目指す理想像はなんでしょうか?
いつか呑兵衛の間で“酒場”と呼ばれる店になれたら嬉しいです。三軒茶屋に飲みに来る人ではなく三軒茶屋に居る人が飲みに来るお店を目指しています。肩肘張らずパジャマで来れる店が理想です。まだまだ1年目の未熟な店ですので日々地道にやっていくことしか考えられませんが、最終的には鹿児島でも何か商売をすることが出来たらというのが漠然的な夢です。気の利かない夫婦2人で細々と営業しておりますので、ご来店の際には行き届かない点も多々あるかとは思いますがご容赦ください。沢山の方のご来店をお待ちしております。
いかがでしょうか? 派手さはありませんが、「安旨ちゃん おしどり」が真っ当なお店だということ、伝わりましたでしょうか?
心の底から酒場を愛する方にはめっちゃ刺さったと思います。逆に、“話題のお洒落なお店”に行きたいという方には刺さらなかったかもしれません。でも、それでいいと思います。“やり過ぎ=わかりやすい”お店がSNSで伝播しやすい世の中にあって、「安旨ちゃん おしどり」のような、“やり過ぎず、やらなさ過ぎず”を体現したお料理とお店のスタイルは、逆に新鮮な気がします。
編集部から怒られちゃうかもですが、正直なところを言うと、この記事、そこまで読まれなくてもいいかな…と思ってます。
たまたまこの記事を見て気になった方が訪れる⇒大事な友人や家族や恋人を連れてきたくなる⇒「安旨ちゃん おしどり」が、大事な方と大事な時間を共有する“ホッとする”酒場になる!
そう願いながら書いております。
本当に、真摯で素敵なおしどりご夫婦が営んでいるお店です。安いってだけで訪れたり、騒いだり、出てくるのが遅いってクレームを付けたり、予約だけして行かなかったり、そういうのだけはご勘弁ください。あったかくてホッとする肴を食べながらしっとり飲みたい! そんな方におススメのお店が「安旨ちゃん おしどり」。
教えたくないけど教えたい!教えたいのは大事な人だけ!“やり過ぎず、やらなさ過ぎず”という魅力をわかってくれる人だけ…! それが「安旨ちゃん おしどり」です。
紹介したお店
営業時間:18:00~24:00
定休日:毎週月曜日・隔週で火曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗のSNS等でご確認ください
著者 クック井上。
フードコーディネーター・野菜ソムリエ・食育インストラクター・BBQインストラクター等、7つの食の資格を持つ料理芸人。 料理教室講師・食のイベントMC・レシピ開発・食品プロデュース等を務め、“最強料理芸人”の異名をとる。EX「『ぷっ』すま」やTBS「爆問パニックフェイス」の料理バトルでは優勝を果たしている。その他の出演歴は、NHK「グッと!スポーツ」・NTV「得する人損する人」・TBS「はなまるマーケット」・TX「TVチャンピオン極」等。
Twitter:@cook_inoue
Instagram:cook_inoue
ブログ:料理芸人・クック井上。の「ようこそブログへ クック クック♪」powerd by Ameba
Source: ぐるなび みんなのごはん
「ほぼ390円の店」という看板に偽りなし…! 三軒茶屋「安旨ちゃん おしどり」は日常酒場の最高峰だ